MetaがARグラスのプロトタイプ「Orion」を公開、視野角70度・アイトラッキング対応のワイヤレス空間コンピューティングデバイス
2024年9月26日(木)に開催されたMetaの発表会「Meta Connect 2024」で、ARグラスのプロトタイプである「Orion」が発表されました。カスタムチップとカメラ、スピーカー、バッテリーを内蔵し、マイクロLEDと炭化ケイ素で構成される視野角70度のARレンズにアイトラッキングを実装した多機能ARグラスとなっています。
Orion: True AR Glasses Have Arrived | Meta Questブログ | Meta Store
https://www.meta.com/ja-jp/blog/quest/orion-ar-glasses-augmented-reality/
Orionは、サングラスメーカーのレイバンと共同開発したスマートグラス「Ray-Ban Meta」と並行して、開発が進められてきたARグラスのプロトタイプ。Metaは「ARグラスは人間中心のコンピューティングにおける次の大きな飛躍を実現する鍵となる」と主張しており、2019年のイベントで「We are building AR glasses(ARグラスを開発中です)」と宣言しました。
Orionの開発プロジェクトは「Project Nazare」と呼ばれており、大型ホログラフィックディスプレイとパーソナライズされたAIアシスタントを搭載したARデバイスを2024年中に発売することが目標とされていました。
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Metaは「発表から5年が経ち、世の中をひっくり返す可能性がある5単語を発表します。We have built AR glasses.(私たちはARグラスを開発しました)」と述べています。
OrionがどんなARグラスなのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。
Orion, Explained - YouTube
Orionを装着しているのは、MetaのCTO(最高技術責任者)であるアンドリュー・ボスワース氏。
Orionは、見た目は太めの黒いフレームのメガネですが、7基のカメラとセンサー、バッテリーを内蔵しています。人間の髪の毛の10分の1程度という極めて高い光学精度を維持するため、室温におけるフレームの膨張や収縮などのわずかな動きをも検出し、必要な光学調整をすべて数ミリ秒以内にデジタルで修正するとのこと。
フレームは放熱と軽量化を考慮し、宇宙船やF1に使われるマグネシウム合金が使われています。また、メガネのフレームにファンを内蔵することはできないため、熱設計と電力効率を考慮してMetaが開発したカスタムチップが使われているそうです。
Orionはアイトラッキング(視線追跡)が可能で、カーソルは視線で操作できる模様。
ARディスプレイの視野角は70度。レンズはシリコンカーバイドという新しい素材が使われており、ナノスケール3D構造による導波管が組み込まれているとのこと。そして、ブリッジの部分に内蔵されたマイクロLED小型プロジェクターを使い、レンズ内で光を屈折させてさまざまな深度とサイズのホログラフィック映像を投影する仕組みになっているそうです。
実際にOrionのプロトタイプを体験したCNETによると、ARディスプレイの解像度は視野角1度当たり13ピクセルで、1度当たり25ピクセルのMeta Quest 3と比べるとやや粗く見えるとのこと。しかし、視野角70度はARグラスの中ではかなり広く、レンズ自体もクリアで透明度が高かったとCNETは報告しています。
また、以下のムービーのように、グラスを通して見ているものをAIで調べたりタグ付けしたりすることが可能。
Meta AI on Orion - YouTube
さらに、表面筋電位(EMG)を利用してハンドトラッキングを行えるリストバンドがOrion向けの入力デバイスとして発表されました。
このEMGリストバンドは、2019年にMetaが買収したスタートアップ・CTRL-Labsの技術を応用したものとみられます。
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CNETの記者によれば、記事作成時点ではEMGリストバンドによるジェスチャートラッキングの精度はそれほど高いとはいえなかったそうですが、「アイトラッキングやフレーム内蔵のセンサーと組み合わせることで次世代の入力インターフェースになるかもしれない」と期待しています。
既存のARグラスはスマートフォンに接続して使うものがほとんどですが、Metaは「真のARグラスはワイヤレスである必要があり、また小型でなければなりません」と述べており、Oiron用のワイヤレスコンピューティングパックを開発しています。ハンドトラッキングやアイトラッキング、ARグラフィック処理などはOrion本体で行い、アプリの動作はワイヤレスコンピューティングパック上で行うという処理分担を行うとのこと。これにより、Orionのバッテリー持続時間も長くなるとMetaは述べています。
記事作成時点でOrionはプロトタイプの段階ですが、Metaは「研究用プロトタイプではない」と明言しており、実際にこのプロトタイプと同等のデバイスを市場に投入する意志を見せています。Orionのプロトタイプは、Meta Connect 2024から1年間、Metaの従業員とごく一部のユーザーにアクセスが認められるとのこと。MetaはOrionの製品化について、ARの品質向上、さらなる小型化、大量生産による低価格化を今後の課題としました。
09/26 10:35
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