機械学習で従来の3500倍以上高速かつコストが10万分の1に抑えられる気象予測モデル「NeuralGCM」をGoogle Researchが公開


Googleの研究部門であるGoogle Researchが、地球の大気をシミュレートする機械学習モデル「NeuralGCM」を開発したことを発表しました。このモデルは、従来の物理ベースのモデリングと機械学習を組み合わせることで、シミュレーションの精度と効率を向上させており、2〜15日間の天気予報において従来のモデルよりも正確な結果を出し、過去40年間の気温をより正確に再現することができます。
Fast, accurate climate modeling with NeuralGCM
https://research.google/blog/fast-accurate-climate-modeling-with-neuralgcm/


Google AI predicts long-term climate trends and weather — in minutes
https://www.nature.com/articles/d41586-024-02391-9
NeuralGCMは、Google Researchが欧州中期予報センター(ECMWF)と共同で開発した革新的な気候モデルです。このモデルの最大の特徴は、従来の物理ベースのモデリング手法と最新の機械学習技術を融合させた点です。
従来の気候モデルは、地球を大きな立方体に分割し、各立方体内の気象現象を物理法則に基づいて計算していました。しかし、雲の形成や降水などの小規模な現象は、この立方体よりもはるかに小さなスケールで発生するため、正確なシミュレーションが困難でした。そのため、これらの現象は「パラメタリゼーション」と呼ばれる簡略化されたモデルで近似されていましたが、この手法には精度の限界があったとのこと。
NeuralGCMは、大規模な現象については従来通り物理法則に基づいて計算しますが、小規模な現象については機械学習を用いて既存の気象データから学習します。この手法により、従来のモデルでは捉えきれなかった複雑な相互作用を考慮に入れることが可能になったとGoogle Researchは報告しています。
Google Researchはさらに大規模な現象でのアルゴリズムを一から見直し、JAXという機械学習フレームワークで実装しました。これにより、システム全体の挙動をオンラインで最適化することが可能になり、小規模な現象と大規模な現象でのフィードバックを考慮できるようになったとのこと。


NeuralGCMの性能は、短期の天気予報から長期の気候予測まで、幅広い時間スケールで従来のモデルを上回っているとGoogle Researchは主張しています。例えば2〜15日間の天気予報だと、NeuralGCMはECMWFの最先端モデルよりも95%の確率で高い精度を示したとのこと。また、1980年から2020年までの40年間の気温予測では、従来の大気モデルの平均誤差が0.75℃だったのに対し、NeuralGCMでは平均誤差を0.25℃に抑えられたそうです。


また、計算効率の面でも、NeuralGCMは大きな進歩を遂げているとのこと。例えば、高解像度の物理ベースモデルであるX-SHiELDと比較すると、NeuralGCMは3500倍以上高速で、計算コストも10万分の1に抑えられているそうです。これは、高性能コンピューティングの分野で25年分の進歩に相当する改善だとGoogle Researchはアピールしています。


Google Researchはこのモデルのソースコードとモデルの重みを非商用利用向けにGitHubで公開しており、他の研究者が新しい要素を追加して仮説をテストしたり、モデルの機能を改善したりすることができるようにしています。
GitHub - google-research/neuralgcm: Hybrid ML + physics model of the Earth's atmosphere
https://github.com/google-research/neuralgcm

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