Microsoftが10日間の世界の天気と大気汚染をたった1分で予測する超高速AI「Aurora」を発表

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AIの発達により、かつてはスーパーコンピューターを長時間稼働させて行ってきた天気予報が、短時間かつ高精度で行えるようになりつつあります。そんな中、Microsoftが天気予報と同時に大気汚染を瞬時に予測できるAIモデル「Aurora」を発表しました。
Introducing Aurora: The first large-scale foundation model of the atmosphere - Microsoft Research
https://www.microsoft.com/en-us/research/blog/introducing-aurora-the-first-large-scale-foundation-model-of-the-atmosphere/
Superfast Microsoft AI is first to predict air pollution for the whole world
https://www.nature.com/articles/d41586-024-01677-2
2023年11月にヨーロッパを襲った爆弾低気圧「キアラン」の想定外の破壊力は、イギリスやフランスを中心とした地域に深い爪痕を残すとともに、既存の気象予測モデルの限界を突きつけました。

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by Xfigpower
このような課題に対処するために、Microsoftは膨大な大気データを迅速に分析できるAI「Aurora」を開発しました。Auroraは100万時間を超える多様な気象データおよび気候シミュレーションでトレーニングされたパラーメーター数13億の基盤モデルで、10日間の世界天気予報を1分でこなすことができるとのこと。
Auroraはまた、現行では最先端の数値予報モデルである統合予報システム(IFS)に比べて約5000倍の計算速度を誇るほか、精度や効率性、応用性にも優れており、気温や風速から大気汚染、温室効果ガスの濃度まで、大気の状態を示すさまざまな変数を予測できます。
以下は、大気汚染の指標となる「大気中の全二酸化窒素量」をAuroraによる予測(上)と欧州中期予報センター(ECMWF)が運用しているコペルニクス大気監視サービス(CAMS)のデータ(下)とを比較したもの。二酸化窒素は東アジアの人口密集地に偏在する傾向がありますが、Auroraはこのような汚染物質の局地的な分布と世界的な分布の両方を正確に捉えることができました。

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また、以下はCAMSに対するAuroraの二乗平均平方根誤差(RMSE)を表したもので、負の値(青色)ほどAuroraが優れていることを意味しています。一酸化炭素(CO)や一酸化窒素(NO)などさまざまな指標において、Auroraはターゲットの74%でCAMSと同等以上のパフォーマンスを示しました。

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Microsoft Research AI for ScienceのAI研究者であるパリス・ペルディカリス氏らの検証によると、Auroraは主要な大気汚染の指標(一酸化炭素、酸化窒素、二酸化窒素、二酸化硫黄、オゾン、粒子状物質)の5日間の世界的な動きを1分以内に予測できたとのこと。しかも、この予測はCAMSに比べて桁違いに少ない計算コストで実現しました。
ECMWFの機械学習研究者であるマシュー・チャントリー氏は、Microsoftの研究結果について「この分野の研究者はこれまで、従来の数学モデルと機械学習に頼ってきました。一方、Auroraは天気予報よりはるかに複雑なタスクである世界的な大気汚染の予測も生成できる最初のAIモデルです。AIモデルの利点は、従来のモデルより予測に必要な計算量が少ないことです」と話しました。
Microsoftは、Auroraが今後発展していくAIベースの環境予測テクノロジーの手本になることを期待しており、これにより発展途上国や局地などデータが乏しい地域の正確な気象情報の民主化が実現する可能性があると述べました。

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