エルニーニョ現象を最速で18カ月前に予測できるAIモデルが登場


インドネシア周辺の赤道太平洋の海面水温や気圧に大きな差が生まれる「エルニーニョ・南方振動(ENSO)」は、干ばつや洪水などの異常気象を引き起こす可能性があるほか、猛暑などの異常な気温の原因にもなります。ハワイ大学マノア校海洋地球科学技術学部(SOEST)の研究チームが、このENSOを最大18カ月先まで予測するモデルを発表しました。
Explainable El Niño predictability from climate mode interactions | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-024-07534-6


El Niño forecasts extended to 18 months with physics-based model
https://phys.org/news/2024-06-el-nio-months-physics-based.html
ENSOは、赤道太平洋の海洋温度が上昇する「エルニーニョ現象」と、インドネシア付近と南太平洋東部で海面の気圧が連動して変化する「南方振動」を合わせた呼び名です。ENSOは大気の動きと海洋温度が密接に連動した現象であり、世界規模で気候変化に影響を与えます。
研究チームが開発したXRO(EXtended nonlinear Recharge Oscillator)モデルは、ENSOが発生する赤道太平洋だけではなく、インド洋や大西洋など他の海洋における気候パターンがENSOの予測可能性に与える影響を季節毎に定量化することができることが特徴。これにより、XROモデルは従来のモデルよりも長期的かつ正確な予測が可能になったと研究チームは報告しています。


また、研究チームはXROモデルが従来のモデルと異なる点の1つに「透明性」を挙げています。XROモデルは「どうしてそう予測したのか」について、特定の物理計算に関連付けて示すことができるそうです。
SOESTのジン・フェイフェイ教授は「従来のAIモデルに見られるブラックボックスと異なり、私たちのXROモデルは、赤道太平洋における物理的メカニズムと熱帯太平洋以外の気候パターンとの相互作用について、透明性の高い視点を提供します。XROモデルは、ENSOの予測可能性に対する気候パターンの影響を確実に定量化することが可能です」と述べています。
研究チームによれば、XROモデルを用いればENSOだけではなくインド洋や大西洋における気候変動の予測も可能になるそうで、赤道太平洋のみならず地球全体規模の気候を予測するモデルを大幅に改良できると期待できるとのこと。


SOESTのルテ・シュテッカー助教は「私たちの研究は、次世代の地球気候予測モデルに新しい知見を取り入れることにつながり、気候の変動と変化の影響を予測し、緩和するためのアプローチを改善するものです。こうした進歩は、気候由来の災害に対する社会の準備と適応にとって非常に重要なものです」とコメントしました。

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