MetaがLlamaベースのマルチモーダルAIをEUには提供しない方針を明らかに


EUはデジタル市場法やデジタルサービス法で大手デジタルプラットフォームやその運営企業を厳しく規制しており、AppleやGoogle、Meta、Microsoftなどのビッグテックはその対応に追われています。大規模言語モデルのLlamaを開発するMetaが、2024年中にリリースする予定のマルチモーダルAIをEUでは提供しないことを発表しました。
Meta won't bring future multimodal AI models to EU
https://www.axios.com/2024/07/17/meta-future-multimodal-ai-models-eu


海外ニュースメディアのAxiosによると、Metaは自社で開発する大規模言語モデル・Llamaをベースとして、映像・音声・画像・テキストを推論できるマルチモーダルAIのリリースを2024年中に予定しているとのこと。このマルチモーダルAIはスマートフォン向けアプリやスマートサングラスのRay-Ban Metaなど、幅広い製品に組み込まれる予定です。
MetaはAxiosに対し、「今後数カ月以内にLlamaベースのマルチモーダルAIをリリースする予定だが、EUの規制状況が予測不可能なので、EUではリリースしない。このマルチモーダルAIはオープンライセンスで公開されるが、EUではそのモデルを使用することができない」という声明を発表しました。
MetaがオープンソースのマルチモーダルAIをEUに提供しないということは、このマルチモーダルAIを活用した製品やサービスもEUで提供できなくなる可能性もあります。Metaは、Llama 3の大型版でテキストにのみ対応するバージョンを、EUの顧客や企業向けに提供する予定だと述べています。

EUでは、AIを規制する「AI法」が2024年8月1日に施行されることが決定されています。AI法では、違反した企業には最大で3500万ユーロ(約60億円)もしくは年間世界売上高の7%の罰金が科されることが定められており、AIを開発するビッグテックはこれまで以上に厳しい規制を課せられることとなります。MetaのマルチモーダルAIもEUでリリースされれば、このAI法の規制対象となります。
EUの「AI法」が2024年8月1日に施行決定、違反時の罰金は最大で年間売上高の7%か3500万ユーロ - GIGAZINE


しかし、Axiosは「MetaはAI法による規制を避けているのではなく、EU一般データ保護規則(GDPR)にのっとった上で顧客のデータを使用してAIをトレーニングしているにもかかわらず、規制当局から介入されたためではないか」という見方を示しています。
Metaは2024年5月に、FacebookやInstagramで公開されている投稿をAIのトレーニングに利用することを発表しました。この時、MetaはEUのユーザーに対して「AIトレーニングはオプトアウト式でユーザーが拒否することは可能で、2024年6月からトレーニングを開始します」と告知しました。さらに、Metaはトレーニングと告知を行う旨をEUの規制当局に先だって報告しており、特に物言いはなかったと述べています。
しかし、ユーザーに告知を行った後の2024年6月に、EUの規制当局はMetaに対し、AIのトレーニングを一時停止するように指示しました。
MetaがFacebookとInstagramの投稿でAIを強化する計画をEUで一時停止へ - GIGAZINE


Metaの広報担当者は「EUの規制当局は他の地域の規制当局と比べて既存の法律の解釈にかなり時間がかかっている」と述べ、EUが法規制を十分に運用できていない可能性を指摘し、不信感をにじませました。
なお、AppleもApple IntelligenceをはじめとしたAI関連の新機能をEU圏内では提供しないことを発表しています。AppleはEUでの提供を取りやめた理由について、「デジタル市場法の相互運用性要件が、ユーザーのプライバシーとデータセキュリティを危険にさらすような形で、当社製品の完全性を損なうことを強いる可能性があることを懸念しています」と語っています。
AppleがWWDC24で発表した「Apple Intelligence」や「iPhoneミラーリング」などは2024年内はEUでリリースされない - GIGAZINE


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