「GitHub Copilotがコードを違法にコピーしている」と主張する開発者による訴訟の大部分を裁判所が棄却

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GitHubが提供しているプログラミング支援AIの「GitHub Copilot」が、GitHub上のコードを違法にコピーしているとして、開発者から訴訟を提起されました。しかし、担当判事は22件の申し立てのうち、20件を棄却しています。
Judge dismisses DMCA copyright claim in GitHub Copilot suit • The Register
https://www.theregister.com/2024/07/08/github_copilot_dmca/


GitHub Copilotは2021年にGitHubが発表したソースコードの続きをAIが自動補完してくれるという機能です。GitHub CopilotはGitHub上のコードでトレーニングされているため、リリース後まもなく一部の開発者から「自分が書いたコードを出力している」という声が挙がり、著作権を侵害している可能性が指摘されるようになりました。
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2022年11月には、GitHub Copilotの開発に携わったGitHub・Microsoft・OpenAIの3社が、「オープンソースプログラマーの仕事から利益を得ている」として集団訴訟を提起されています。原告側はGitHub CopilotがGitHub上にホスティングされているオープンソースソフトウェアのコードでトレーニングされており、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)を侵害していると主張しました。
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この訴訟は当初、合計22件の申し立てから始まりましたが、Microsoft、GitHub、OpenAIの3社が訴訟の棄却を求め、担当判事のジョン・タイガー判事は少しずつ申し立てを棄却してきました。
2024年7月5日には新たに3件の申し立てが棄却されたため、最終的に22件の申し立てのうち2件のみが残る結果となっています。
今回棄却された申し立てはかなり重要なもので、ひとつはDMCAの第1202条(b)に基づく侵害に関するものです。第1202条(b)は、基本的にライセンスで規定されているように、コードを書いた人や使用条件など、重要な著作権管理情報を許可なく削除してはいけないというものです。今回の訴訟では、原告側が「GitHub Copilotはユーザーの作成したコードスニペットを提供する際に、ライセンス情報を削除しており、これがDMCAの第1202条(b)に違反している」と主張していました。
しかし、タイガー判事はGitHub Copilotが生成するコードはオリジナルのコードと十分に同一ではないため、DMCAの第1202条(b)は適用されないとして、申し立てを棄却しています。実際、GitHubはGitHub Copilotが生成するコードがオリジナルの完全なコピーであると非難されることを防ぐために、GitHub Copilotを調整したと報じられました。

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原告側は繰り返し「GitHub Copilotがオープンソースコードをコピーして出力している」と主張しており、この主張はDMCA違反を主張する上での重要な論拠となっていました。しかし、今回タイガー判事がコードをコピーして出力しているという事例は実証されていないと裁定したため、原告側はDMCAの第1202条(b)に基づく申し立てを行うことができなくなります。
具体的には、タイガー判事は「GitHub Copilotは無害な状況では記憶したコードのコピーを出力することはほとんどなく、トレーニングデータと非常によく似た長いコード抜粋がモデルに提示された場合にのみ、コードのコピーが出力される」という研究論文を引用し、「つまり、『GitHub Copilotが理論的にはユーザーから指示されて他人のコードと一致するものを生成する可能性がある』という研究結果に原告が依拠していることは、説得力に欠ける」と主張しました。
なお、今回タイガー判事が棄却した残り2つの申し立ては「不当利益」と「懲罰的損害賠償」に関するもので、これらは修正して再提出される可能性があるそうです。ただし、再提出までは有効な申し立てが2件のみとなります。なお、この「残り2件の申し立て」は、「オープンソースライセンス違反」に関する申し立てと、「契約違反」に関する申し立てです。
GitHubは今回の棄却について、「AIは世界がソフトウェアを構築する方法を変え、生産性の向上、そして最も重要なことに、開発者の満足度向上につながると私たちは強く信じています」「GitHub Copilotが適用法に準拠していることを確信しており、当初からGitHub Copilotで責任を持って革新することに尽力してきました。私たちは、将来のAIを活用した開発者エクスペリエンスに投資し、推進し続けます」とテクノロジーメディアのThe Registerに語っています。

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