IntelがAI性能と電力効率を重視したノートPC向け次世代プロセッサ「Lunar Lake」の詳細を発表
Intelが、2024年5月20日(月)に発表した次世代のノートPC向けプロセッサ「Lunar Lake」の詳細を、台湾で開催されているコンピューター見本市「COMPUTEX TAIPEI 2024」で発表しました。また、最大48TOPsを実現し、MicrosoftのCopilot+ PC要件を満たす「Intel NPU 4」の仕様も公開されました。
Computex: インテルはあらゆる場所で AI を加速し、パワー、パフォーマンス、アフォーダブルなコストを再定義します。
https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/newsroom/news/computex-2024-ai-everywhere-power-performance-affordability.html
Architecture All Access: Live at Lunar Lake ITT: Lunar Lake Architecture Overview - YouTube
Intel Unveils Lunar Lake Architecture: New P and E cores, Xe2-LPG Graphics, New NPU 4 Brings More AI Performance
https://www.anandtech.com/show/21425/intel-lunar-lake-architecture-deep-dive-lion-cove-xe2-and-npu4
IntelのLunar Lakeは、2023年に登場したMeteor Lakeから電力効率の向上と全体的なパフォーマンスの最適化に重点を置いたノートPC向けプロセッサとなっています。記事作成時点で第12世代Coreプロセッサである「Alder Lake」以降のラインナップは以下の通り。今回発表されたLunar LakeはIntelのファウンドリで製造されておらず、製造プロセスにはTSMCのN3BとN6を採用しているのが特徴です。
Alder/Raptor LakeMeteor LakeLunar LakeArrow LakePanther LakePコア(高性能コア)アーキテクチャGolden Cove/
Raptor CoveRedwood CoveLion CoveLion CoveCougar Cove?Eコア(高効率コア)アーキテクチャGracemontCrestmontSkymontCrestmont?Darkmont?GPUアーキテクチャXe-LPXe-LPGXe 2Xe 2??NPUアーキテクチャなしNPU 3720NPU 4??製造プロセスIntel 7Intel 4
TSMC N6
TSMC N5TSMC N3B
TSMC N6Intel 20AなどIntel 18A搭載デバイスノートPC
デスクトップノートPC省電力ノートPC高性能ノートPC
デスクトップノートPC?リリース時期2021年10月~12月2023年10月~12月2024年10月~12月2024年10月~12月2025年
◆Lion Cove Pコア
高性能コアであるPコアは、「Lion Cove」という新しいアーキテクチャが採用されています。
Architecture All Access: Lion Cove P-core Microarchitecture Explained - YouTube
このLion Coveはメモリとキャッシュのサブシステムの改善、電力管理の改善、および周波数の高速化が図られており、シングルスレッドのパフォーマンスを向上させることを念頭に設計されています。
Lion Coveは、8倍の予測ブロック、より広いフェッチ、より大きなデコード帯域幅、キャッシュ容量と読み取り帯域幅の増加など、フロントエンドの大幅な改善が行われています。特に、Lion Coveでは前世代の「Redwood Cove」からキャッシュ階層が見直され、1コア当たりに48KBのL0Dキャッシュ、192KBのL1Dキャッシュ、最大3MBとなる拡張L2キャッシュが搭載されています。また、TLBもヒット率を向上させるために深さが96ページから128ページに増加しています。
Intelによると、Lion Coveは前世代のRedwood Coveと比較してサイクルあたりの命令実行数(IPC)が大きく向上するとのこと。特にハイパースレッディングではIPCが30%向上し、動的電力効率も20%向上しています。さらに電源管理もAIセルフチューニングコントローラーを搭載することで、動作環境に動的に反応し、より高いパフォーマンスを持続的に実現できます。
◆Skymont Eコア
高効率コアであるEコアはSkymontアーキテクチャを採用。
Architecture All Access: Skymont E-core Microarchitecture Explained - YouTube
Skymontは、フロントエンドが改良され、アウトオブオーダー実行の効率改善が行われています。さらに、4つのコアで4MBのL2キャッシュを共有することで、L2帯域幅が「1サイクルごとに128B」に倍増し、メモリアクセスレイテンシも短縮され、データスループットが向上しています。
Meteor LakeのLP Eコアと比較して、Lunar LakeのSkymont Eコアは消費電力が3分の1、マルチコアパフォーマンスは2.9倍に向上しています。
シングルスレッド性能では、Skymont Eコアは2世代前のPコアであるRaptor Cove Pコアと比較して、整数および浮動小数点パフォーマンスで2%の向上があったとIntelはアピールしています。
◆Xe 2アーキテクチャ
Xe 2は第2世代XeコアでサポートされるノートPC向けのGPUアーキテクチャです。第2世代Xeコアは、AI向けの行列演算エンジンであるXe Matrix eXtensions(XMX)エンジンによって、Meteor Lakeに搭載されているXe-LPGと比較してグラフィックパフォーマンスが1.5倍に向上しているとのこと。同時に、第2世代Xeコアに搭載されるベクトル演算用のXe Vectorエンジン(XVE)がSIMD8からSIMD16に変更され、1クロックサイクル当たりの演算密度が増加しました。これにより、「複雑な演算を素早く処理する」ことに重点が置かれているといえます。
そして、Xe 2はVVCコーデックをサポート。Intelは、VVCはAV1と比較してファイルサイズを最大10%削減し、品質を損なうことなくストリーミングのビットレートを低く抑えることができるため、マルチメディアアプリケーションのパフォーマンスが向上すると述べています。
また、Intelは、Lunar LakeとMeteor Lakeを搭載したノートPCでYouTubeの4K画質・AV1ムービーを再生し、その消費電力を比較したムービーを公開しています。これを見ると、Lunar LakeがMeteor Lakeよりも電力効率が優れていることがよくわかります。
Lunar Lake Lowers Power With AV1 YouTube Video Playback On E-Cores | Talking Tech | Intel Technology - YouTube
加えて、Xe 2にはWindows GPUソフトウェアスタックが実装されており、D3DやBulkan、Intel VPL APIやフレームワークなど、多くのランタイムやフォライバーを包括的にサポートすることで、さまざまなソフトウェア環境での全体的な効率と互換性の向上が図られています。
◆NPU 4
そして、Lunar Lakeプロセッサ最大の焦点がNPU 4の搭載です。前世代のNPU 3の演算性能が最大11.5TOPsだったのに対し、NPU 4は48TOPsに向上したとのこと。
NPU 4は前世代と比較して、演算タイルの数が3倍に増加しています。
また、積和演算ユニット(MAC)アレイの効率が改善され、前世代と同じ電力レベルでパフォーマンスが最大2倍に向上したとのこと。新しいMACアレイは高度なデータ変換機能を備えており、レイテンシを最小限に抑えてデータフローを最適化し、NT8の場合は1クロックサイクルで最大2048回のMAC演算を、FP16の場合は1024回のMAC演算を処理できます。また、NPU 4のベクトルレジスタ長は512ビットになり、1クロックサイクルでより多くのベクトル演算を実行できるとのこと。
その結果、NPU 4は前世代のNPU 3に比べてベクトルパフォーマンスが12倍、TOPSは4倍、IP帯域幅は2倍に向上しました。これらの改善により、NPU4はパフォーマンスと低レイテンシが必要とされる機械学習アプリケーションに高性能かつ効率的に最適化します。
I/Oについては、Lunar LakeプロセッサはネイティブでThunderbolt 4・Thunderbolt Share・Wi-Fi 7接続が実装されています。Thunderbolt 4については、Thunderboltポート3つをノートPCに搭載できるようになったことで、利便性が向上。また、Lunar Lakeには複数のPCで画面やモニター、キーボード、マウス、ストレージなどをThunderbolt接続を通じて共有できるシステム「Thunderbolt Share」も実装されています。
Lunar LakeがWi-Fi 7にネイティブ対応したことによって、搭載デバイスはより高速な無線通信が可能になります。さらに、Lunar LakeではWi-Fiの無線信号との干渉を最小限に抑えるために、DDRクロック周波数が自動的に調整される「RF干渉緩和テクノロジー」が搭載されているとのこと。これにより、メモリノイズによるスループットの低下が50%低下されるとIntelはアピールしています。
もちろんWi-Fi 7による高速無線通信が可能になることで、VR体験が強化されます。
Lunar Lakeは2024年第3四半期(10月~12月)に市場へ投入される予定。また、デスクトップPCや高性能ノートPC向けのArrow LakeもLunar Lakeと同時期に投入とIntelは予告していますが、Arrow Lakeの詳細については記事作成時点だと明らかになっていません。
06/05 12:48
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