IBMがマルチクラウドインフラ自動化大手のHashiCorpを約1兆円で買収

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現地時間の2024年4月24日、大手テクノロジー企業のIBMが、64億ドル(約9950億円)でマルチクラウドインフラストラクチャー自動化大手のHashiCorpを買収すると発表しました。
IBM to Acquire HashiCorp, Inc. Creating a Comprehensive End-to-End Hybrid Cloud Platform
https://newsroom.ibm.com/2024-04-24-IBM-to-Acquire-HashiCorp-Inc-Creating-a-Comprehensive-End-to-End-Hybrid-Cloud-Platform

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HashiCorp joins IBM to accelerate multi-cloud automation
https://www.hashicorp.com/blog/hashicorp-joins-ibm

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IBM to buy HashiCorp in $6.4 billion deal to expand in cloud | Reuters
https://www.reuters.com/markets/deals/ibm-buy-hashicorp-64-billion-deal-expand-cloud-software-2024-04-24/
IBM to acquire HashiCorp in $6.4 billion deal, reports another revenue miss
https://www.cnbc.com/2024/04/24/ibm-q1-earnings-report-2024-ibm-to-acquire-hashicorp.html
2024年4月24日、IBMがHashiCorpとの買収契約を締結したと発表しました。買収は1株当たり35ドル(約5400円)で行われ、買収総額は64億ドルとなります。HashiCorpの製品群は、企業に広範なインフラストラクチャーライフサイクル管理およびセキュリティライフサイクル管理機能を提供し、組織がハイブリッドおよびマルチクラウド環境を自動化できるようにするというものです。そのため、IBMはHashiCorp買収を「ハイブリッドクラウドおよびAI分野への傾倒および投資」と表現しています。
クラウドネイティブワークロードと関連アプリケーションの台頭により、企業が管理するクラウドワークロードの数は急激に増加しています。生成AIの登場により、クラウドワークロードの数はさらに増加しており、その結果、開発者はますます異種混合、動的かつ複雑なインフラストラクチャー戦略に取り組まなければいけなくなっているそうです。
HashiCorpの製品を用いることで、企業は自動化を用いてインフラストラクチャーとセキュリティのライフサイクル管理が可能となり、ハイブリッドおよびマルチクラウド環境に必要な「重要なワークフローの記録システム」を提供することが可能となります。中でもHashiCorpのオープンソースIaCツールであるTerraformは、インフラストラクチャープロビジョニングにおける業界標準となっています。HashiCorp製品はクライアントがマルチクラウド管理に対してクラウドに依存せず、相互運用性の高いアプローチを採用できるように支援し、業界コラボレーション(ハイパースケールクラウドサービスプロバイダーとの緊密かつ拡大するパートナーシップを含む)、開発者コミュニティ、オープンソースのハイブリッドクラウドとIBMの取り組みを補完することに役立つことが期待できるそうです。

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今回の買収について、HashiCorpの共同創設者であり最高技術責任者(CTO)でもあるArmon Dadgar氏は、「当社の戦略の核心は、大規模なクラウド管理に対する一貫したアプローチを提供しながら、企業がクラウドでイノベーションを行えるようにすることです。マルチクラウドとハイブリッドクラウドの台頭により、効果的な管理と自動化の必要性が重要になっており、これが今日のAI革命によって加速されています。IBMに加わり、HashiCorpの使命を加速し、より幅広い開発者や企業に当社製品へのアクセスを提供できるようになることに非常に興奮しています」と語りました。
IBMはHashiCorpの買収により「AI主導の複雑さのために構築された包括的なエンドツーエンドのハイブリッドクラウドプラットフォームが作成されます。両社のポートフォリオと人材を組み合わせることで、クライアントに広範なアプリケーション、インフラストラクチャー、セキュリティのライフサイクル管理機能を提供します」と説明しています。
さらに、IBMはHashiCorpの買収が完了したあと、Red Hat、watsonx、データセキュリティ、ITオートメーション、コンサルティングなどの複数の戦略的成長分野を含め、IBMに大きな相乗効果をもたらすことが期待できると言及しています。例えば、Red HatのAnsible Automation Platformの構成管理とTerraformの自動化の強力な組み合わせにより、ハイブリッドクラウド環境全体でのアプリケーションのプロビジョニングと構成が簡素化されるとのこと。また、世界175カ国以上で事業を展開するIBMのワールドクラスの市場開拓戦略、規模、リーチを活用することで、HashiCorpの成長イニシアチブが加速することも期待されます。
また、今回の買収により獲得可能な最大市場規模(TAM)の拡大も期待されています。 HashiCorp製品は、IBMおよびRed Hatと組み合わせることで、ハイパースケールクラウドサービスプロバイダー、プライベートクラウド、オンプレミス環境を含む進化するインフラストラクチャー全体でワークロードの展開とオーケストレーションを自動化するプラットフォームをクライアントに提供できるようになります。これにより、クラウドの機会全体に対応するIBMの能力が強化され、2027年までのTAMの年間平均成長率が10%台後半となることが期待できると調査会社のIDCは指摘しました。

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IBMはHashiCorpの買収取引を2024年末までに完了させる予定で、同社の広報担当者によるとHashiCorpのCEOを務めるDave McJannet氏は、IBMのソフトウェア担当ヴァイスプレジデントであるRob Thomas氏の直属となるそうです。なお、IBMがHashiCorp買収を発表したのち、時間外取引でIBMの株価は最大9%下落しました。
加えて、IBMは2024年4月24日に2024年第1四半期(1~3月)の決算も発表しました。同期におけるIBMの売上は前年同期比で3%増の144億6000万ドル(約2兆2500億円)で、このうちソフトウェア部門の売上が前年同期比で5.9%増の59億ドル(約9200億円)、コンサルティング部門の売上が前年同期比で1.7%増の52億ドル(約8100億円)、インフラストラクチャー部門の売上が前年同期比で0.2%で31億ドル(約4800億円)、融資部門の売上が前年同期比で1.5%減で2億ドル(約310億円)です。

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