フリーソフトウェアライセンスの「GPL」に違反したとして1億円超の損害賠償を大手通信事業者のOrangeが命じられる

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オープンソースライセンスの一種であるGNU一般公衆ライセンス(GPL)は、コードの改変や再頒布を許可するライセンスであり、コードを使用した二次的著作物についても同様の権利が適用されます。そんなGPLに違反したとして、フランスの大手通信事業者であるOrangeに総額65万ユーロ(約1億600万円)の損害賠償が命じられました。
French Court Issues Damages Award for Violation of GPL – Copyleft Currents
https://heathermeeker.com/2024/02/17/french-court-issues-damages-award-for-violation-of-gpl/

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French court backs the GPL
https://www.fudzilla.com/news/58561-french-court-backs-the-gpl
Orangeは2005年、フランス政府と契約してユーザーが行政手続きをオンラインで実行するポータルサイト「service-public.fr」の一部を開発しました。この開発において、Orangeはソフトウェア開発企業のEntr'ouvertがリリースしたLassoというフリーライブラリを使用していました。
LassoはIDプロバイダーがユーザーを認証し、認証トークンをオンラインサービスに渡すプロトコルをサポートしてシングルサインオン(SSO)を可能にします。LassoはEntr'ouvertによってGPLまたは商用ライセンスの下で提供されていますが、Orangeは商用ライセンスを利用せず、GPLに従ってソースコードを公開したり、改変の権利を無償譲渡したりしなかったとのこと。
そこでEntr'ouvertは、2010年に「OrangeがGPLに違反してLassoを使用した」として訴訟を起こしました。GPLはあくまでライセンスの下でソースコードの改変やコピーを許可するものであり、開発者が著作権を放棄したわけではないため、Orangeの行為が著作権侵害に当たるかどうかが争点となりました。
2021年3月には、控訴裁判所がEntr'ouvertの著作権侵害の申し立てを却下しましたが、フランスの最高裁判所は2022年10月に控訴審を覆す命令を出しました。その結果審理は控訴裁判所に差し戻され、2024年2月14日にようやくOrangeへ損害賠償を命じる判決が下りました。OrangeはGPLに違反したとして、Entr'ouvertに対して50万ユーロ(約8200万円)の損害賠償と15万ユーロ(約2400万円)の道徳的損害賠償、合わせて65万ユーロを支払う必要があります。

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この判決はソーシャルニュースサイトのHacker Newsでも取り上げられ、裁判を起こしてから10年越しにGPL違反が認められたことが多くのユーザーの注目を集めています。
French court issues damages award for violation of GPL | Hacker News
https://news.ycombinator.com/item?id=39587344
あるユーザーは、「こんな単純なことを解決するのにどうして14年もかかるのでしょうか?」とコメントし、フランスの非効率的な法廷は信頼できないと非難しています。

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このコメントに対し、実際にEntr'ouvertでLassoの開発を行ったというbdauvergne氏が回答しています。bdauvergne氏によると、「裁判官はまず損害賠償の引き下げを促したものの、Orangeとの交渉が決裂したこと」「Orangeの行為が本当にGPL違反なのかどうか判断するために、裁判官が専門家の意見を必要としたこと」「最初に控訴審で勝訴した際はEntr'ouvertの主張が全面的に受け入れられたわけではなかったため、上訴して控訴裁判所の判決を覆すよう求めたこと」などが、時間がかかった理由だとのこと。さらに、フランスの司法は資金とリソースが不足している上に、そもそもフリーソフトウェアのライセンスに関する訴訟自体がまれで、裁判官らが今回のような訴訟に慣れていなかったことも裁判が長引いた理由だとbdauvergne氏は指摘しました。

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