完全ワイヤレスイヤホン、売れ筋に新たなトレンド - 古田雄介の家電トレンド通信

今回は、完全ワイヤレスイヤホンの売れ筋を探るべく、イヤホン専門店のe☆イヤホン秋葉原店 本館を訪ねました。

開店直後から多くの人で賑わう1階フロア。そこに広く並べられているのが完全ワイヤレスイヤホンです。同店スタッフのゆーでぃ氏は「やはり幅広い方に売れていますね。そのなかで、長時間聴き続ける需要がどんどん増えている印象があります。売れ筋にもそうした傾向が反映されていますね」と解説します。

売れ筋モデルからたどれるトレンドは、確かにはっきり変わっていました。下記の「完全ワイヤレスイヤホン 専門店の最新トレンド×3」にまとめたように、ノイズキャンセリング機能が強力なカナル型イヤホンが主流を占めていた少し前とは別の風が吹いている様子です。

それを踏まえて、モデルごとに人気の理由を追っていきましょう。
○<完全ワイヤレスイヤホン 専門店の最新トレンド×3>

長く装着しても疲れにくい、ながら聴きしやすいラインアップが増えている。そして人気に。
装飾品としての観点もより大きくなった。コンパクトなものやイヤーカフ型も確かな支持を集めている。
充電ケース側に操作画面などを加えた多機能モデルも注目されている。

※本文と写真で掲載している価格は、取材した2024年10月23日11:00時点のe☆イヤホン秋葉原店 本館のものです。本店とは異なる場合があり、日々変動もしているので、参考程度に見てください。
第1位:あらゆるシーンでながら聴きできる「LinkBuds Open WF-L910」

一番人気に挙げられたのは、ソニーの「LinkBuds Open WF-L910」です。オープンイヤー型のイヤホンで、取材時の価格は29,700円でした。

「耳の穴をふさがない構造になっているので、自然に外音が取り込めます。コンパクトながらフィンで耳にかかるようになっているうえ、IP4xの防滴性能もあるので、仕事や家事だけでなくスポーツでも使えます。本当にシーンを選ばず、ながら聴きしたい人に選ばれていますね」

第2位:充電ケースで音質がカスタムできる「Tour Pro 3」

続く2位に入ったのは、JBLのカナル型イヤホン「Tour Pro 3」です。アクティブノイズキャンセリング機能と外音取り込み機能を備えており、取材時の価格は38,610円でした。

実機を眺めると、充電ケースにタッチパネル液晶が組み込まれているところが目を引きます。「前モデルからの装備で、ケースのディスプレイでいろいろな設定をするといったトレンドを生んだシリーズといえますね」

ただ、モデルの人気を支えているのは音質ともいいます。「老舗オーディオブランドの名に恥じない音質で、そこに惚れて選ぶ人が多い印象です。やはり3万円を超える高級クラスになってくると、そこを重視する人が増える感触はありますね」

第3位:じわじわ人気のイヤーカフ型「Ultra Open Earbuds」

3位は、Boseの「Ultra Open Earbuds」。外耳に挟んで固定するイヤーカフ型のイヤホンで、片耳使用も可能です。取材時の価格は35,640円でした。

「イヤーカフ型は耳をふさがないので、音楽も周囲から流れてくるような自然な感じに近く、好む人がじわじわ増えています。見た目も大型のカナル型より重くならず、ファッションになじませやすいという利点もありますからね。そのなかでも、音質でUltra Open Earbudsがよく選ばれています」

第4位:軽くて外れにくい「OpenFit Air」

4位は、耳を囲うイヤーフックが特徴的なShokzの「OpenFit Air」が入りました。オープンイヤー型の定番人気モデル「OpneFit」をさらに軽量化したモデルで、片耳使用も可能。取材時の価格は17,890円でした。

「OpenFitと音質自体はほぼ変わりませんが、フックの部分がシリコンになっているのがポイントですね。フィットしながらも耳の負担感が抑えられていて疲れにくく、スポーツ向けに買っていく人が多いと感じます」

第5位:音質重視派に選ばれる「Pi8」

5位は、価格帯が一段変わります。Bowers & Wilkinsの「Pi8」で、取材時の価格は65,340円。アクティブノイズキャンセリング機能を備えたカナル型イヤホンになります。

「高級スピーカーで名を馳せるブランドの完全ワイヤレスということで、とにかく音質を重視したいという人が注目している製品です。カラーリングも含めてデザイン性も高いですし、総合的に判断して指名買いされる方が多いのかなと思います」

はみ出し情報・・・勢いでいえばトップもしのぐ「NEKO HP-C28BT」

トップ5のほかに、「勢いでいえばトップもしのぐ」とユーディ氏がピックアップしたのは、radiusのカナル型イヤホン「NEKO HP-C28BT」です。取材時の価格は7,930円でした。

製品名のとおり、猫をモチーフにしているのが最大の特徴といえます。充電ケースはまさしく猫を模していて、接続完了時には「にゃー!」と鳴きます。1台あたり20円を保護猫団体に寄付するエシカルな取り組みも約束されています。

「オーディオ用というよりは、猫好きな方が買っていくという意味でニッチなヒットではありますが、勢いは本当にすごいものがあります。3色ともマーブル柄ですが、ランダム成形されているので個体ごとに模様が異なるのも魅力につながっていますね」

著者 : 古田雄介 ふるたゆうすけ フリーランスライター。『アキバPick UP!』(ITmedia PC USER/2004年~)や『売り場直送! トレンド便』(日経トレンディネット/2007~2019年)などのレポート記事を手がける。デジタルと生老病死のつながりにも詳しい。著書に『スマホの中身も「遺品」です』(中公新書ラクレ)、『ここが知りたい!デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。 この著者の記事一覧はこちら

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