motorola razr 50s レビュー - 折りたたみスマートフォンの裾野を広げる新製品!

モトローラから、折りたたみスマートフォンの新製品として、SIMフリー版の「motorola razr 50」とソフトバンク版の「motorola razr 50s」が登場しました。両者とも、コスパと使い勝手に優れた折りたたみスマートフォンに仕上がっています。

今回は、ソフトバンク版の「motorola razr 50s」を試用することができましたので、そのレビューをお届けします。SIMフリー版の「motorola razr 50」も基本的にはほぼ同じ機種なので、そちらの購入を考えている方にも参考になるでしょう。

サブディスプレイが扱いやすい「razr 50s」

「motorola razr 50s」は、開くと大画面スマートフォン、閉じるとコンパクトに持ち運べる縦折りの折りたたみスマートフォンです。

メインディスプレイは6.9型2,640×1,080ドットのFHD+ pOLEDディスプレイで、アスペクト比は22:9。HDR10+に対応して、色域がDCI-P3比120%、リフレッシュレートが最大120Hz、ピーク輝度が2,000nitなど、通常のスマートフォンとして十分なスペックを備えています。

折りたたむと、約3.6型pOLEDディスプレイが利用できます。解像度は1,056×1,066ドットと正方形に近いアスペクト比で、HDR10に対応。色域はDCI-P3比120%、リフレッシュレートは最大90Hz、ピーク輝度は1,700nitとなっています。

本体サイズは開いた状態で約H171.3×W73.99×D7.25mm、閉じると約H88.08×W73.99×D15.85mm。重さは約188gとなっています。

最大のライバルになるであろう「Galaxy Z Flip6」の場合、開いた状態でH165.1×W71.9×D6.9mm、閉じた状態でH85.1×W71.9×D14.9mm、重さは187g。画面サイズはメインが6.7型、サブが3.4型なので、「razr 50s」のほうが画面サイズを含めて全体的にわずかに大きくなっています。

折りたたんだ状態での利用時、サブディスプレイがメインカメラを避けている「Z Flip6」と、画面内にカメラが配置されている「razr 50s」という違いもあります。このため、「razr 50s」ではアプリごとに全画面表示するかどうかを選択できます。通常であれば、アプリはカメラに重ならないサイズで表示され、カメラの横に通知を表示するという画面の使い方をします。

サブディスプレイの下部のバーを長押しするだけで、簡単にアプリの全画面切り替えができます。アプリや状況に応じて使い分けられるのはメリットと感じました。

それ以上に便利なのが、サブディスプレイの自由度です。本機のサブ画面はメイン画面とほぼ変わらず使えるため、閉じた状態でもほとんどの機能が使えます。特にアプリがそのまま使える点が大きなメリットです。

カメラはもちろん、ブラウザ/メール/マップ/フォト/ウォレットといったアプリはもとより、PayPay/YouTube/InstagramなどのSNSはもちろん、ゲームだって遊ぶことができます。インストールされているアプリを改めてサブディスプレイに登録する形なので、よく使うアプリを厳選して登録した方が便利でしょう。

折りたたみスマートフォンの最大の欠点は、逆説的になりますが「開くのが面倒」というところです。フィーチャーフォンの折りたたみケータイ時代から存在する当たり前の問題ですが、当時よりも頻繁にスマートフォンを使うようになって、取り出しては開いたり閉じたりするのを繰り返すのが手間に感じるということはあるかもしれません。

その点、「razr 50s」はディスプレイを開かなくても、ある程度の作業が行えます。サッと取り出してメッセージなどを確認したいという程度の使い方であれば、十分な画面サイズです。時間確認からメールやSNSの通知チェック、カレンダーの予定チェック、コード決済時のQRコード表示といった具合に日々の簡単な操作であれば閉じたままで使えます。

いざメールの返信をしたいとき、大画面で動画を視聴したいとき、本気でゲームをしたいときは端末を開けばいいわけです。この辺は非折りたたみのコンパクトスマートフォンにはできないことです。

「Galaxy Z Fold」シリーズのような開くとタブレットになる横折りスマートフォンの場合、閉じた状態でも普通のスマートフォンとしてある程度利用できます。「razr 50s」も、閉じた状態でほぼ普通のスマートフォンのように使えるので、通常のスマートフォンよりも便利でしょう。

ただ、開け閉めするときの落としやすさ、サッと画面を見られる手軽さを考えると、縦折りタイプの折りたたみスマートフォンは、ショルダーストラップで持ち歩くというのが一番使いやすいようにも感じました。その点は、ケースなどのアクセサリーを積極的に展開している「Galaxy Z Flip」シリーズに強みがあるかもしれません。

とはいえ「razr 50s」もケースは探せばそれなりに出回っています。特に今回のカラーのうち、スプリッツオレンジは魅力的なので、クリアケースに入れて持ち歩くのも良さそうに感じました。
ラップトップモード/スタンドモード/テントモードの3つのスタイル

完全に折りたたんだ状態と完全に開いた状態だけではなく、その中間の状態で自由な形で使えるのが折りたたみスマートフォンの魅力の1つでもあります。「razr 50s」では、折りたたむ途中で止めてノートPCのように画面を立ち上げて使う“ラップトップモード”、開きかけの状態でサブディスプレイを利用する“スタンドモード”。ひっくり返してヒンジ部を上にした三角形の形で置く“テントモード”を利用モードとして定義しています。

動画視聴やカメラ撮影など、様々なシーンで役立つ置き方です。ほかの折りたたみスマートフォンでも同様の機能はありますが、その中でも「razr 50s」は使いやすい機能を備えています。

カメラ撮影時に端末を半ばまで折って横向きに持つと一昔前のビデオカメラのように保持できます。このスタイルだと、自動的にカメラが動画撮影を開始するという点は面白いところ。

モトローラ製端末で以前から搭載されているジェスチャー機能では、手に持って2回振るとライトが点灯する機能があり、これも折りたたんだ状態で使えるのは便利です。手首を2回ひねってカメラ起動、3本指で画面タッチすると画面キャプチャー、背面をダブルタップすると指定アプリ起動……といった機能を、折りたたんだ状態で使えるのも嬉しいところ。

個人的には、折りたたんだ端末を取り出して顔認証でロック解除し、2回タッチでQRコード決済を起動して折りたたんだまま支払う……という流れは良い感じでした。FeliCaにも対応しており、交通系ICで公共交通機関に乗車するならさらに簡単で、折りたたんだままタッチするだけです。

折りたたみだけど開かなくても使えるというのは、こうした折りたたみスマートフォンの使い勝手のよさに繋がります。その点「razr 50s」は閉じた状態でも使いやすいのがメリットでしょう。
カメラの写りは上級、シャッター音には課題

カメラは、「moto ai」というAIを活用したという画質調整や手ブレ補正などを搭載しているとしています。

スペックとしては背面に2つのカメラを搭載。メインカメラは有効画素数5,000万画素センサーを搭載。ピクセルピッチは0.8μm、像面位相差AFにも対応します。レンズの明るさはF1.7で、光学式手ブレ補正(OIS)も搭載。ピクセルビニングによって通常時は1,250万画素で記録されます。

もう1つのカメラは有効画素数1,300万画素の超広角カメラで、画角は120度。AFにも対応してマクロ機能も備えています。レンズの明るさはF2.2、ピクセルピッチは1.12μm。インカメラは有効画素数3,200万画素センサーにF2.4の明るさのレンズを搭載。ピクセルビニングにより800万画素で記録されます。

動画向けには、AIが動きを検出して手ブレ補正を調整する適応型手ブレ補正や、カメラを360度回転させても水平を保つ水平ロックといったmoto ai機能を搭載。

カメラとしてはこってりとした色のりとスマートフォンらしいはっきりとした写り。全体的に写りの問題は感じられません。HDRもほどよく効いており、シーンを選ばずに安定した写りが期待できそうです。

ただ一点、改善を望みたいのがシャッター音。かなり大きな「カシャーン」という音で、特に「razr 50」よりも「razr 50s」の方がシャッター音が大きいという点も謎です。動画撮影開始時の音も大きく、これはぜひ改善をお願いしたいところです。

カメラとしては画質面で大きな問題もなく、折りたたみスマートフォンらしい置いての撮影などの利便性の高さが大きなメリットと言えるでしょう。
ミッドレンジのパフォーマンスでコスパに優れる

パフォーマンスもチェックしてみましょう。SoCには、最近躍進の著しいMediaTekのDimensity 7300Xを搭載。メモリとストレージはrazr 50が12GB/512GB、razr 50sが8GB/256GBという構成です。

実利用に比べて、ベンチマークの数字はそれほど高くはならないようです。例えばグラフィックス性能を計測する3Dmarkでは、Wild Lifeテストが3,116、Wild Life Extremeが854でした。数字としてはSnapdragon 7 Gen 1ぐらいでしょうか。

ただ、アプリケーションの性能を測定するPCMarkでは15,153とSnapdragon 7+ Gen 3並み。CPU性能を測定するGeekBenchはSingle-Coreが1,040、Multi-Coreが3,003で、GPUテストではOpenCLが2,601、Vulkanが2,521となって、これもSnapdragon 7 Gen 1クラス。

基本的にはミッドレンジのパフォーマンスといった印象でしょうか。パフォーマンス的に問題はあまり感じませんが、重量級のゲームは厳しそうです。

総じて「motorola razr 50/50s」はハイエンドではなくミッドレンジで、折りたたみスマートフォンの裾野を広げる製品と言えるでしょう。とくにソフトバンク版の「razr 50s」の場合、一括払い時の価格は115,200円、新トクするサポート(プレミアム)の早トクオプションを利用することで端末代金に相当する支払額は月額3円/1年間で36円になります。

もっとも、早トクオプションの利用料19,800円にあんしん保証パック月額990円も必要になるため、総支払額は31,716円になります。それでも3万円台で折りたたみスマートフォンが手に入るわけで、身近に使える折りたたみスマートフォンと言えそうです。

モトローラ版の「razr 50」も、IIJmioで他社からの乗り換えで購入するならば89,800円と、十分に手頃な価格。折りたたみスマートフォンに興味ある人にはお勧めできる製品だと感じました。

小山安博 こやまやすひろ マイナビニュースの編集者からライターに転身。無節操な興味に従ってデジカメ、ケータイ、コンピュータセキュリティなどといったジャンルをつまみ食い。最近は決済に関する取材に力を入れる。軽くて小さいものにむやみに愛情を感じるタイプ。デジカメ、PC、スマートフォン……たいてい何か新しいものを欲しがっている。 この著者の記事一覧はこちら

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