ニュースもインフルエンサーから。「メディア離れ」のリアル
結局のところ、人は自分の知ることしか知らないんですよね…。
Pew Research Center(ピュー・リサーチ・センター)が実施した世論調査結果によると、アメリカ人の多くがソーシャルメディアのインフルエンサーから定期的にニュース情報を得るようになっているといいます。
その割合は全成人の21%、18歳から29歳の若者においては37%に上ります。また、月曜日(11月18日)にはAssociated Press/AP通信が従業員の8%を解雇すると発表しました。この世論調査は、今後もアメリカでのニュース消費が伝統的なメディアから離れ続ける可能性があることを示しています。
10万以上のフォロワーを持つインフルエンサー
今回の調査では、特定のプラットフォームで10万人以上のフォロワーを持つインフルエンサーを抽出し、最終的にFacebook、YouTube、Instagram、TikTok、そしてX上で2,058人のニュース系インフルエンサーを選びました。
Pew Research Centerは、インフルエンサーを「ソーシャルメディアで多くのフォロワーを持ち、ニュースや政治、社会問題について頻繁に投稿する個人」と定義しています。ただし、この調査では公式なニュース組織に属するアカウントや政治家のアカウントは除外されています。
そして2024年7月15日から8月4日までの期間に、1万658人のアメリカ人のソーシャルメディアの利用状況と、先述した2,058人のインフルエンサーからのコンテンツ消費を分析しました。
有名なインフルエンサーには、右派ではBenny Johnson、Dinesh D'Souza、Matt Walsh、Jack Posobiec、Charlie Kirkが、リベラル派にはBrian Tyler Cohen、Ashley Judd、Heather Cox Richardsonなどが含まれています。
X、Instagram、YouTubeが人気
調査対象になったインフルエンサーの85%がX(旧Twitter)のアカウントを持っていますが、11月5日の大統領選挙後、Xのオーナーであるイーロン・マスクがXを極右的で過激な意見の温床に変えてしまったことから、多くのリベラル派や中道派のユーザーはXを離れています。1年後に状況がどう変化しているのか興味深いところです。
調査によると、ニュース系インフルエンサーにとって2番目に人気の高いプラットフォームであるInstagramで、最も人気の高いインフルエンサーの50%が活動していることがわかりました。
他にはYouTube(44%)、Facebook(32%)、Threads(30%)、TikTok(27%)、LinkedIn(12%)、Rumble(11%)、Telegram(7%)、Truth Social(5%)、Gettr(4%)、Gab(4%)、BitChute(1%未満)などがランクインしています。
Blueskyで活動しているインフルエンサーはいませんでしたが、ユーザーが大きく増えているであろう来年に同じ調査が行なわれた際にどうなるか注目されます。
大きいインフルエンサーのジェンダーギャップ
ジェンダーギャップもかなり興味深い点として挙げられます。インフルエンサーの約63%が男性で、30%が女性、残りはノンバイナリーもしくは研究者が性別を特定できなかったそうです。
TikTokは女性インフルエンサーの割合が45%で最も高いものの、男性も50%と大きな割合を占めています。ジェンダーギャップが最も大きかったのはYouTubeで、インフルエンサーの68%が男性で、女性はわずか28%しかいないとのこと。
若者の方がSNSから情報ゲットする傾向
情報を得るフォロワーの世代間ギャップも大きかったようです。
成人全体では21%がソーシャルメディアのインフルエンサーから定期的にニュースを得ていると回答していますが、その中でも18〜29歳の若者が37%と最も多く、30〜49歳では26%になっています。一方で50〜64歳では15%、65歳以上になるとたった7%まで数字は下がります。
右派インフルエンサーが優勢
調査対象になったインフルエンサーの27%が右派。左派は21%で、残りのインフルエンサーは政治的立場を明確にしていませんでした。ちなみにTikTokは左派寄りのインフルエンサーが28%、右派寄りが25%と、左派が右派を上回った唯一のプラットフォームでした。
また、インフルエンサーの約77%は過去にニュース組織と関わりがなく、23%は何らかの形で伝統的なニュースメディアに雇用された経験があるそうです。
そして興味深いことに、政治的な立場をはっきりさせない傾向が最も高かったのはこの23%だったのだとか。いろいろ忖度しているのかもしれないですね。
日本でも伝統的メディア離れ?
日本でも、東京都知事選や衆議院解散総選挙、兵庫県知事選で、SNSによる発信に力を入れる候補者が選挙戦を優位に進める傾向が見られるなど、伝統的なメディア離れが起こっている印象がありますね。
実際、モバイル社会研究所が今年5月に公表した世論調査では、10~30代の60%以上がソーシャルメディアでニュース情報を得ており、テレビを上回っています。特に、Xを利用している10~30代の6割近くがXでニュース情報に触れているとのこと。若い世代のテレビや新聞などの伝統的なニュースメディア離れが目立ちます。
また、新聞通信調査会が今年行なった世論調査では、インターネットニュースを見る際に「出所を気にしない」が全世代平均で54%と「気にする(46%)」よりも多く、18~19歳を除くすべての年代で過半数を超えています。出所がどこであれ、情報の真偽を信頼できるソースで確認すれば問題ありませんが、鵜呑みにしがちな人は、意図的に誤情報を発信されるとヤバそうですね。
アメリカも日本も、発信する側と受信する側、双方の情報の扱い方に危うさを感じます。デジタル時代の情報収集はこれからどう変わっていくのでしょうか。
Reference: モバイル社会研究所, 公益財団法人 新聞通信調査会
11/20 12:30
GIZMODO