生分解性プラスチックが海の中で分解されないことが判明

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2023年6月3日の記事を編集して再掲載しています。

悲報です…。

環境に良い選択として、ペットボトルやプラスチック製の製品を使うとき、何を基準に商品を選んでいますか?

生分解性プラスチックの文字を見ると、そんなに値段が変わらないのであれば地球のために…とそちらに手を伸ばすこともあるかもしれません。

しかし、そこには複雑な要素が多く絡んでいます。PLOS ONEで発表された研究によって、巷で宣伝されている生分解性プラスチックは海の中で分解されないことが明らかになりました。

1人あたり2万個以上のゴミを海に捨てている

今、世界はプラスチックゴミの大きな問題を抱えており、それは現在進行形で海を苦しめています。

地球の人口で計算すると1人あたり2万1000個のプラごみを海に捨てている計算です。プラスチックゴミは長くそのままの状態で残ってしまうため、この状況は一生で観測できる時間を超えて環境負荷を与えてしまいます。

これを解決するアイデアの1つとして、トウモロコシのでんぷん、あるいはサトウキビなどの自然由来の素材を使用したプラスチック製品がバイオプラスチックです。

バイオプラスチックは再生可能な素材を使用しており、生分解性の特徴を持っています(コカコーラは世界で最も巨大なプラスチックを排出する企業ですが、最近100%植物由来のバイオプラスチックペットボトルの提供開始を発表しました) 。

生分解性は、実は研究室だけでの話

しかし、堆肥化可能や生分解性といった言葉は、プラスチックが海で分解されることを意味するわけではありませんでした。

これらは自然に存在しない状態や条件設定が求められます。例えば産業用堆肥化の場合、家庭用の堆肥化設備では実現できない圧力や温度を厳密に管理することで、プラスチックの分解を可能にしています。

さらに生分解性は、ゴミが異なる環境に置かれることを考慮していません。森の中で分解できる素材でも、海では分解できない可能性もあります。

海洋学者のSarah-Jeanne Royer氏はEartherに次のように語っています。

「消費者はこれらの製品を堆肥化するためには、堆肥化設備のある工場に入れる必要があるということです。

しかし、消費者はペットボトルを普通のゴミ箱に捨てるかもしれません。たとえ誰かが堆肥化に貢献しようと生分解性のペットボトルを使ったとしても、風に飛ばされたりしてそれが海にたどり着いてしまう可能性は常にあります」

これまで、さまざまな環境下でプラスチックはどのように分解されるかを調査する先行研究が行なわれてきました。

プラスチックが海でどのように分解されるかを調査する研究もありますが、そのほとんどの研究はあくまでも研究室内のコントロール下で行われた実験でしかありませんでした。今回発表された研究は、特にポリ乳酸(PLA)プラスチックが実際の海でどのように分解されるのかを調査した最初の研究といえます。

この研究で使用されたポリ乳酸(PLA)プラスチックはサンプルは、バイオプラスチックの素材として頻繁に利用されているもので、そこから布地に加工されました。

特にRoyer氏らはこの分野に関心を持っていました。ファストファッションが世界で最も環境汚染を引き起こす要因となっており、スパンデックス(ポリウレタンの合成繊維)やポリエステルなどの繊維は通常の洗濯だけで有害な繊維を放流する可能性があります。

しかしながら、この研究でテストに使用されたポリ乳酸(PLA)プラスチックは、消費者が堆肥化可能や生分解性、環境に優しいと宣伝されている製品と同じであると強調しています。

また彼女は次のようにも語っています。

「使い捨て製品であろうと、布製品であろうと、化学組成は同じです。」

実際に海で野晒しにして実験してみる

経過日数ごとの素材と劣化の様子
Graphic: Scripps Institution of Oceanography/PLOS One

研究チームは、海でのポリ乳酸(PLA)プラスチックのテストをするために、サンプルを海に野晒しにしました。

対照実験として、彼女たちはいくつかのサンプルを用意しました。セルロース由来(コットンのような)繊維素材、石油由来(ポリエステル、ポリプロピレンのような)繊維素材、そしてそれらをブレンドした繊維素材サンプルを小さなゲージに入れました。一部のケージを海の上に浮かべ、他のゲージは10メートル沈めて、14カ月観察しました。

生分解性素材でも自然に分解されなかった

結果の一部は予想通りでした。研究室でテストでは、自然由来の素材は分解され始めていることが確認されていました。

一方、石油由来の素材は分解されませんでした。しかし、自然由来のプラスチックサンプル(生分解可能と謳われているもの)も分解の兆候が見られませんでした。

現時点で最良な解決策は、人々を堆肥化施設にアクセスしやすくすることです。しかし、言うは易し行うは難し。堆肥化施設にアクセスできているアメリカ人は27%に留まっています。また一部の堆肥化施設では、生分解性プラスチックの受け取りを完全に停止しています。 Royer氏はハワイに拠点を置いており、ハワイにわずか1つの堆肥化施設しかないことを指摘しています。そのため生分解性プラスチックを適切に処理することは難しい状況にあり、最終的にプラスチックゴミは埋立地や海に流れてしまいます。

最後に、彼女は解決策について次のように語って締めくくっています。

「使い捨てへの依存をやめることが合理的な解決策です」

プラごみに乗って移動する海の生き物。漂着先の生態系に悪影響か

Reference: 神戸精化

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