6,600万年前、恐竜を絶滅させた隕石は木星で生まれたらしい

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Mark Garlick/Science Photo Library via Gizmodo US

地球史上、最大のミステリーのひとつ。

およそ6,600万年前、直径3,500メートルを超える巨大隕石が地球に衝突。この隕石はメキシコ沖に巨大なクレーター(チクシュルーブクレーター)を形成し、鳥類型を除く恐竜は絶滅しました。このクレーターには今も、この大災害の謎を紐解く手がかりが残されています。それでも、この隕石が宇宙のどこからやってきて、いったい何でできているのか、その謎の多くは解明されていません。

隕石は火星と木星の間にある小惑星帯から飛んできた?

この隕石についてさらに詳しく知るため、ある研究者グループがクレーターのサンプルを分析し、3600万年から4億7000万年前に別の隕石が衝突してできたクレーターのサンプルと比較しました。その結果、チクシュルーブクレーターには、ルテニウムと呼ばれる希少元素の痕跡があることがわかったのです。これは、火星と木星の間に位置する小惑星帯にある炭素系小惑星の組成と一致するんだとか。

ただ、科学誌Scienceに掲載された今回の研究論文には、この隕石自体は太陽系のもっと外側、つまり木星から来たのではないか、と書かれています。「この隕石は約45億年前、木星が激しい活動期にあった頃、小惑星帯に突入したもので、最終的に地球でその生涯を終えたのではないか」というのです。

同研究の主執筆者で、ドイツ・ケルン大学地質鉱物学研究所のマリオ・フィッシャー=ゲッデ氏は「これは6,600万年前に起きた、宇宙の“偶然”なのです」と米ギズモードに語っています。「何が引き金になったのか正確にはわかりませんが、小惑星帯から来た可能性が非常に高いです」。

木星出身の隕石が、小惑星帯に移動した?

彼らの研究によると、この小惑星は太陽系の外縁部で形成されたものの、外惑星軌道の乱れによって太陽系の内側へと移動したのではないか、と考えられます。

太陽から5番目の惑星の位置にある木星は、今の場所に落ち着くまで、かなり活発に動いていました。太陽系の中心に向かって移動したり、再び太陽系の外側に戻ったり、あるときは火星にかなり接近したこともあったのだそう。

土星の重力場によって、太陽に向かって移動するのを止めたのかも、と考えられていますが、ガス巨星である木星が活発に動くことで、太陽系は大きな影響を受けました。そして、遠く離れた小惑星の中にも、太陽系の内側にある惑星に向かって移動するものがいくつかあったのです。

ヒントになるのは、希少元素の「ルテニウム」

恐竜を絶滅させた隕石が太陽系から来たことはすでに知られていますが、その正確な起源については議論が続いています。フィッシャー=ゲッデ氏は、科学者にとって「ルテニウムがヒントになる」と考え、岩石サンプルの化学結合を分解して希少元素を発見する新たな技術を開発しました。

ルテニウムは地球上で最も希少な金属のひとつ。太古の星の中で形成された元素で、恐竜絶滅のはるか以前から地球の奥深くに埋もれていました。チクシュルーブクレーターのサンプルからルテニウムが発見されたことで、この隕石が太陽系の外縁部から来たという仮説が裏付けられたことになったのです。

太陽系の内側にある小惑星は、星が形成されたころの気温が高かったことから、ルテニウム同位体の含有量が多くありません。その結果、内太陽系の小惑星は金属とケイ酸塩でできており、水があまり含まれていません。一方、太陽系外縁部の小惑星には、炭素、水素、窒素のような揮発性の高い元素が多く含まれています。

巨大隕石の再来、今はなさそう

今回の研究に携わった研究者チームは、現在の太陽系は安定しており、こうした巨大な小惑星の衝突の可能性は低いと話しています。

太陽系には、さまよっている天体はそれほど多くなく、すべてが安定した配置になっています。

衝突のような何らかの混乱がなければ、地球を横切るような小惑星は生まれないでしょう。

今後、ゲッデ氏は月のサンプルを分析し、月面に散在するクレーターがどのように作られたのかを特定したいと考えています。「月の地殻には、月と地球の両方に衝突した天体の記録が残されています。ですから、40億年前など、地球の歴史のごく初期に衝突した小惑星の物質の種類を知りたければ、月に行かなければなりません」。

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