聴き放題によってリスナー急増!「Audible」の次なるコンテンツ戦略とは

Amazonの音声コンテンツ配信サービス「Audible(オーディブル)」が、11月25日に今年最も聴かれたコンテンツ「Audible ベスト・オブ 2024」を発表しました。

 

■今年最も聴かれた「Audible ベスト・オブ 2024」を発表

オーディオブックの1位は、2024年の本屋大賞を受賞し、紙の書籍でもベストセラーとなった宮島未奈の『成瀬は天下を取りにいく』。2位には、東野圭吾がAudibleのために書き下ろした新作『誰かが私を殺した』。人気作家・池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝』、世界的に話題になった『イーロン・マスク』もランクインしています。

▲2024年1月〜10月に、Audibleで聴かれたオーディオブックTOP10

Audibleはポッドキャストを聴くこともできますが、ポッドキャストの1位は『ほんとはヤバい平安ワールド ~「光る君へ」がもっと面白くなる』 。大河ドラマを観ている人に人気を集めたようです。2位には、これを聴くためにAudibleを始める人も多いという『宮藤官九郎が愚痴をコントにさせていただきました』。他に、星占いや英会話などの教養番組も人気を集めたようです。

▲2024年1月〜10月に、Audibleで聴かれたポッドキャストTOP10

 

■月額1500円でオーディオブックが聴き放題

そもそも「Audibleって何?」という人もいるかもしれません。まず、Audibleがどういうものかを説明しておきましょう。

Audibleはスマホやタブレットで聴けるオーディオブックの配信サービス。以前は月額1500円(税込)で、毎月付与される1コインでオーディオブックを1冊聴ける仕組みでしたが、2022年1月に月額料金はそのままに聴き放題に移行。12万以上の作品が聴き放題で利用できるようになりました。

その後、作品数が増えて、2024年4月には20万を超えています。なお、単品で購入できる作品もあり、それらは会員にならなくても購入できます。

▲多彩なジャンルから聴きたい本を選んで聴ける。定額制なので、気軽に試し聴きできるのも魅力

Amazonが提供するサービスなので、Amazonの会員であれば簡単に入会でき、月額料金はAmazonに登録してある決済方法で支払えます。パソコンでも聴けますが、パソコンでは作品のダウンロードは不可。スマホではストリーミングでもダウンロードでも利用できるのが便利です。

Amazonの「Echo」シリーズなど、スマートスピーカーにも対応しています。「アレクサ、本を読んで」と話しかけるだけで、聴きかけのオーディオブックの続きを再生してくれます。外出時にはスマホ+イヤホンで聴き、自宅に戻ったらスマートスピーカーで聴くといった使い分けもできるわけです。

▲Alexa対応のスマートスピーカーがあれば、話しかけるだけで、続きが再生される。「もっとゆっくり読んで」と話して、再生速度を変えたりもできる

 

■人気俳優の朗読やオーディオファースト作品に注力

今年6月に開催された記者発表会では、Audibleのここ数年の成長について説明されました。

Audibleは、会員数は公表していないものの、コイン制だった2021年12月を基準にすると、2024年4月の会員数は107.24%増になったとのこと。7.24%増えたのではなく、2倍以上になったわけです。急成長の理由が聴き放題にあることは間違いないでしょうが、継続利用を促すための施策も強化されているようです。

そのひとつが朗読に人気俳優を起用したこと。オーディオブックはナレーションによって印象に差が出ます。文芸作品ではなおさらです。聴きやすい声が望ましいことは言うまでもありませんが、過度に感情表現が入ると、聞き手の想像力が削がれてしまいます。読むでも演じるでもない絶妙なテクニックが必要となるようです。よって、ヘヴィリスナーは作家名や作品名だけでなく、誰が朗読するかもチェックしているようです。

俳優が読む作品は人気が高いようで、今年の4位に入った湊かなえの「サファイア」は永作博美が朗読。村上春樹の『ノルウェイの森』は妻夫木聡、同『カンガルー日和』は多部未華子。他にも宮沢りえ、木村佳乃、堤真一、高橋一生ら、多くの俳優が朗読に参加しています。また、花澤香菜、梶裕貴ら、人気声優が読む作品も楽しめます。

▲人気俳優・声優が朗読するオーディオブックを選んで聴くことも可能

▲著者自身が朗読するエッセイも話題になった

Audibleで配信される作品は、すでに書籍として発売されているものが中心ですが、今年からAudibleのために書き下ろされた作品にも力を入れているとのこと。「オーディオファースト」と呼び、7月には東野圭吾が書き下ろした『誰かが私を殺した』を配信。加賀恭一郎の新シリーズで、寺島しのぶ、松坂桃李ら、人気俳優陣がナレーションに参加したことでも話題になりました。

▲以前は、出版された書籍のオーディオブック化に時間がかかったが、先にオーディオブックとして配信される作品も登場している

 

■隙間時間を有効に使えるのが魅力

日本国内のオーディオブックのリスナーを対象にした調査(マクロミル調査)によると、オーディオブックを聴き始めるきっかけは「時間を有効活用するため」(48%)で、1回あたりに聴く時間は「20〜30分」が最多。利用シーンとして最も多いのは「寝る前の時間」だが、約75%の人が通勤・通学、運動、仕事、家事、育児などの「隙間時間に聴いている」とのこと。紙の本と違い、何かをしながら聴けることが大きなメリットとなっているようです。

実は筆者も今年の春頃からAudibleを始めて、だいたい月に2〜3冊聴いています。ラジオを聴く感覚でポッドキャストも楽しんでいます。紙の単行本は1500円以上するものが多く、文庫本でも700〜800円くらいが相場。なので、Audibleの月額1500円は、十分に元が取れる価格と感じています。

▲本屋大賞をはじめ、さまざまな賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』の単行本は1705円(税込)なので、1冊読むだけで元が取れるとも言える

ここ数年、スマホを使う時間が増えて、読書が減っていたのですが、Audibleによって読書ならぬ “聴書” が増え、読まないので、目が疲れにくくなったようにも感じています。

「Audible ベスト・オブ 2024」の上位には、新しい文芸作品が並びましたが、ビジネス書も人気が高いようで、若い世代に人気のライトノベル、子どもに聴かせる絵本・児童書も充実しつつあるようです。

▲ライトノベルや児童書も人気

Audibleは来年、日本でのサービス開始から10周年を迎えるとのこと。さらなるコンテンツの充実にも期待できそうです。

>> Audible

<取材・文/村元正剛(ゴーズ)

村元正剛|iモードが始まった1999年からモバイル業界を取材し、さまざまな雑誌やWebメディアに記事を寄稿。2005年に編集プロダクション「ゴーズ」を設立。スマホ関連の書籍・ムックの編集にも携わっている。

 

 

 

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