数値化が苦手なマネジャーは、なぜ感情的に部下を叱るのか?

Herlanzer / Shutterstock.com

 仕事の結果は、数字で分解することで初めて改善点が明らかになる。「うちだって数値化はやっている」と胸を張る経営者やマネジャーは少なくない。問題は、数値化が成果を高めることに結びつかないことだ。キーエンスでマネジャー経験がある岩田圭弘氏は、高い成果を生む数値化は「目標の精度の高さ」が違うという。本連載では、『数値化の魔力“最強企業”で学んだ「仕事ができる人」になる自己成長メソッド』(岩田圭弘著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集し、チームのマネジメントに欠かせない数値化の基本を紹介する。

 第8回は、数値化による精度の高い目標設定と、行動と結果を追跡するプロセス解析について解説する。

<連載ラインアップ>
第1回 毎日の業務を数値化すると、なぜ“10倍速の成長”が可能になるのか
第2回 “会社から与えられた目標”をゴールに設定すると、なぜ未達に終わるのか
第3回 仕事の成果が低い時、「能力不足かも」と悩む前にすぐやるべきこととは?
第4回 「行動の量」を増やすことが、“根性論”にならない理由とは?
第5回 「行動の量」を増やしても、残業が増えない発想とは?
第6回 なぜ、「数値目標が設定しにくい業務」の数値化が重要なのか?
第7回 部下を“茹でガエル”にするマネジャーの、典型的なチームの状態の捉え方とは
■第8回 数値化が苦手なマネジャーは、なぜ感情的に部下を叱るのか?(本稿)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

 

数値化の魔力』(SBクリエイティブ)

■数値で「マネジメントを見える化」する

 キーエンスではチームを数値でマネジメントするために、各メンバーの出した数字を合計した数字を確認することから始めます。

 全体の数字がKGIに対して不足していれば、プロセス単位の数字を確認します。プロセス単位でKPIに到達していない数字を見つけ出したら、そのプロセスにおける各メンバーの数字を確認します。

 すると、そのプロセスにおいてどのメンバーが成果を出せていないかを見つけることができます。

 このように、チームの状態をメンバーごとにプロセス単位で確認できる透明性が、数値化の大きなメリットです。

 一方、数値化において透明性を確保できていないマネジャー(中小企業では経営者自身の場合もあります)は、月末に初めて業績が悪いことに気づいて、「なんでこんなに数字が足りていないんだ!」と感情的になってしまうのです。

 しかし数値化によってマネジメントに透明性を確保できていれば、まさに問題が生じているリアルタイムで改善策を指示できますので、月末になって慌てることがありません。

 したがってチームの数値化は、メンバーにとってもマネジャーにとってもお互いにストレスフリーな関係を維持できる施策だと言えます。

 つまり、マネジャーが日次でチーム全体のプロセス単位の数字を追跡することは、チーム全体の行動の結果を追跡することであり、問題のあるプロセスを見つけ出してメンバー単位の数字を確認することは各メンバーの行動の結果を追跡できていることになります。

 仕事の結果というのは行動からしか生まれないのですから、結果を数字で分解することで初めて改善すべき行動を明らかにすることができるのです。

 それこそがキーエンスで言うところのマネジメントです。

 マネジャーがメンバーに対して闇雲に発破をかけることがマネジメントではありません。

■「一般的なマネジメントの数値化」と「キーエンスの数値化」は何が違うのか?

 経営者の方やマネジャークラスの方にお話を伺うと、「いやいや、うちだって数値化はしていますよ」と言われることがあります。

 しかし、「数値化はしているのだが成果が出ていないんだよねぇ」と言うのでさらに詳しく聞いてみると、その数値化がキーエンスの数値化とはだいぶ異なっていることがわかります。

 それでは何が違うのかというと、一つは「目標の精度の高さ」です。

 キーエンスでは本社で目標が設定されますが、その精度は実現可能性に対してプラスマイナス3%の誤差になっています。

 根拠がないのにやたらと高くて精度が低い目標を打ち上げた場合、もしも達成できていなくても、「まぁ、あくまで目標だから」といった自らを甘やかすような受け取り方をされてしまい、結局行動を改善する動機づけに至りません。

 キーエンスの場合は、たとえば受注件数であれば、季節性や決算の時期との関係性なども考慮されたとても精度の高い目標が設定されます。

 ですからそこには、僅かといえども目標を達成できないはずがないという厳格さが生まれます。

 もう一つの違いは、「数値化で明らかになった変化の原因がきちんと追究されているかどうか」です。

 キーエンスの数値化ではプロセスごとの数字を追跡しますので、行動と結果の因果関係が明確にされます。

 成果が出せていない企業では、数値化しているといっても、行動と結果の因果関係を追跡できないほどに大雑把なのです。

 ですから、成果が出せていないときに、その原因がアポの数にあるのか商談化率の低さにあるのかといった具体的な原因を明らかにできません。

 そのため、「なんとなく空中戦をしている」といったあやふやな感覚になり、漠然と「頑張りが足りなかった」といった言い訳しか出てきません。 

 しかし、キーエンスの場合は、顧客の規模別に原因を追究して、お客様から問い合わせがあったものとなかったものとでどのように成果の差があるのかなどまでがわかるようになっています。

 つまり、キーエンスの数値化では行動と結果の因果関係を追跡できるほどにプロセスを分解しているわけです。

<連載ラインアップ>
第1回 毎日の業務を数値化すると、なぜ“10倍速の成長”が可能になるのか
第2回 “会社から与えられた目標”をゴールに設定すると、なぜ未達に終わるのか
第3回 仕事の成果が低い時、「能力不足かも」と悩む前にすぐやるべきこととは?
第4回 「行動の量」を増やすことが、“根性論”にならない理由とは?
第5回 「行動の量」を増やしても、残業が増えない発想とは?
第6回 なぜ、「数値目標が設定しにくい業務」の数値化が重要なのか?
第7回 部下を“茹でガエル”にするマネジャーの、典型的なチームの状態の捉え方とは
■第8回 数値化が苦手なマネジャーは、なぜ感情的に部下を叱るのか?(本稿)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
会員登録(無料)はこちらから

ジャンルで探す