旧ジャニ「超蜜月のTV局」と「推しグループ」の関係

Snow Man

旧ジャニーズ事務所を継いだSTARTO ENTERTAINMENTに所属するグループで、人気・売上ともにトップに君臨しているSnow Man(画像:Snow Man公式Instagramより)

このところウェブメディア各社の関係者から「STARTOのタレント起用はどうなっているのか」「テレビ局との関係性はどうなのか」などと尋ねられる機会が増えています。

ウェブメディアの関係者がそれらを尋ねた理由は、「旧ジャニーズの謝罪会見からちょうど1年が過ぎた」こと。また、「民放各局が行っている秋の番組改編説明会で彼らの名前があまりあがらない」こと。さらに「“ある民放局”の起用に対する見解を聞きたい」という問い合わせもいくつかありました。

昨年9月に行われた旧ジャニーズ事務所の謝罪会見から1年が過ぎた今、最もSTARTO ENTERTAINMENTとの関係性が近いテレビ局はどこなのか。

民放各局のテレビマンや制作会社のスタッフなどから聞いた話をベースに、STARTOとテレビの関係性を掘り下げていきます。

9月から顕著になった「推しグループ」

前述した“ある民放局”は日本テレビのこと。8月31日から9月1日にかけて放送された「24時間テレビ47」で20年超にわたって旧ジャニーズの所属タレントが務めてきた“メインパーソナリティー”というポジションを廃止するなど、これまでとは異なるスタンスを見せました。

ただその一方で、9月10日放送の「第44回全国高等学校クイズ選手権」のメインパーソナリティーにSTARTOのSixTONESを起用。

かまいたちや指原莉乃さんなど他のメンバーは「超無敵クラス」の出演者で固めていたほか、昨年まで事実上、坂道グループやQuizKnockが務めていたポジションだけに不自然さを指摘する声があがっていました。

さらに日本テレビは9月15日に「SixTONESの今日からプロデューサーズ!」、22日に「Game of SixTONES」を放送。

SixTONESにとって民放初の冠番組であり、前者がロケ、後者がゲームという異なるジャンルのバラエティを用意したところに「手応えがよければレギュラー化も視野に入れる」というニュアンスが推察されます。

また、個々に注目しても、これまで日本テレビはSixTONESのメンバーを起用してきました。

森本慎太郎さんはバラエティの「ザ!鉄腕!DASH!!」に加えて、ドラマの「だが、情熱はある」と「街並み照らすヤツら」に2年連続で主演。

ジェシーさんは長年「有吉ゼミ」の“八王子リホーム”に出演し続けているほか、今年はドラマ「新空港占拠」のキーマンとして出演。

田中樹さんは今年バラエティの「あべこべ男子の待つ部屋で」でMCに起用されたほか、ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」に出演。

髙地優吾さんは旧ジャニーズ事務所に入った2009年からバラエティの「スクール革命!」に出演し続けています。

SixTONES

テレビ各局への露出が高まってきているSixTONES(画像:STARTO ENTERTAINMENT公式サイトより)

新番組開始から半年で「ほぼ網羅」

そもそもSixTONESは2012年の日本テレビ系ドラマ「私立バカレア高校」に出演した6人で結成されたグループ。もともと日本テレビとの結び付きは強かったのですが、ここに来てグッと力を入れた感があります。

現在STARTOのグループで人気・売上などでトップに君臨しているのはSnow Man。圧倒的なセールスに加えて視聴率や配信再生への影響力も高まり、民放各局はSnow Manの起用を進めたいものの、多忙な彼らをグループで集めることは難しくなりました。

すでにゴールデンタイム(19~22時)の冠番組「それSnow Manにやらせて下さい」(TBS系)があるため、民放各局はグループではなく1~2人での出演を進めています。

そこで民放各局は続く人気を誇るSixTONESを起用したいのですが、ここまで関係性を築いてきた日本テレビとしては譲れないところ。バラエティとドラマの両ジャンルで先行投資してきただけに、STARTOの運営が軌道に乗り、「24時間テレビ」が終わったタイミングでそのスタンスが表れはじめています。

また、日本テレビは今年4月スタートの新音楽番組「with MUSIC」にSTARTOの20th Century、NEWS、SUPER EIGHT、Kis-My-Ft2、timelesz、WEST.、King & Prince、Snow Man、SixTONES、なにわ男子、Aぇ!groupが出演。

残る未出演グループはHey!Say!JUMPなどわずかであり、半年間で早くもほぼ網羅されています。

さらに、7月6日に放送した8時間にわたる音楽特番「THE MUSIC DAY」にも、SUPER EIGHT、KAT-TUN、timelesz、King & Prince、Snow Man、SixTONES、なにわ男子の7組が出演しました。

他局の音楽特番と比べても、SixTONESだけでなく多くのグループにオファーしている様子がうかがえます。

ただ、日本テレビはSTARTOだけにこだわっているわけではありません。

アイドル要素を含む男性グループでは、「with MUSIC」にBMSGのBE:FIRSTとMAZZEL、LAPONEのJO1とINI、LDHの三代目J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、エイベックスのDa-iCE、HYBEの&TEAM、K-POPのTWSとBOYNEXTDOOR。

さらにTOBEのNumber_iとIMP.、CULENの新しい地図(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)が出演しました。

ちなみに「THE MUSIC DAY」にもBE:FIRST、JO1、三代目J SOUL BROTHERS、Da-iCE、&TEAM、Number_i、スターダストのDISH//、K-POPのTOMORROW X TOGETHERとNEXZが出演していました。

つまり「最も関係性が深いのはSTARTOで間違いないものの、あらゆる芸能事務所の男性グループをこれまで以上にキャスティングしている」ということ。

局を問わず旧ジャニーズ事務所時代は避けられていた共演への支障がなくなり、「視聴率を獲得できそうなベストのキャスティングをしていこう」というなりふり構わず数字を追い求める姿勢がうかがえます。

そうなると、より視聴率獲得に妥協のない戦略を採る日本テレビが、「他の芸能事務所より影響力のあるグループが多いSTARTOとの良好な関係性を保つために、彼らの割合を高めていこう」と考えるのはビジネスとして当然でしょう。

「Snow Man」を押さえ順調なTBS

他局に目を向けると、最もSTARTOとの関係性が良好と言われるのがTBS。

現在、日本の音楽シーンで断トツのセールスを誇るSnow Manの冠番組に加えて、目黒蓮さんのゴールデン・プライムタイム(19~23時)初主演ドラマ「トリリオンゲーム」、宮舘涼太さんや佐久間大介さんの「ラヴィット!」など、個人出演もしっかり押さえてきました。

それに次ぐSixTONESのメンバーも、ジェシーさんと田中樹さんをバラエティの「オオカミ少年」、松村北斗さんを今夏ドラマ「西園寺さんは家事をしない」に起用。

さらに今秋ドラマ「あのクズを殴ってやりたいんだ」にもKis-My-Ft2の玉森裕太さんを起用しているほか、毎週2時間の音楽番組「CDTV ライブ!ライブ!」を放送しており、他グループの出演機会を確保しやすいため、事務所と円満な取引がしやすいのでしょう。

フジテレビについては、今秋の新番組「この世界は1ダフル」にSnow Manの渡辺翔太さん、ドラマ「わたしの宝物」にSnow Manの深澤辰哉さん、ドラマ「モンスター」(カンテレ制作)にSixTONESのジェシーさんを起用するなど、個人での起用を進めています。

ただ、主要4局では唯一アーティストが出演するゴールデン・プライムタイムの音楽番組がないほか、昨秋に各グループから出演者を集結させた「VS魂グラデーション」を終了。

以降、今春も「Kinki Kidsのブンブブーン」「トキタビ」「いただきハイジャンプ」「SUPER EIGHTのあとはご自由に」を終了させるなど、各グループの冠番組が減った状態が続き、かつてほどの濃い関係性は感じられません。

今秋ドラマにSTARTOタレントの起用が少ない背景

テレビ朝日も今秋のゴールデン・プライムタイムでは、ドラマ「民王R」になにわ男子の大橋和也さんが出演する程度で、「ミュージックステーション」での関係性が継続されている形に留まっています。

ちなみに今秋ドラマにSTARTOのタレントが少ない理由は、キャスティングの時期によるもの。コロナ禍で撮影スケジュールが乱れ、その後、放送枠や配信作品が増えたこともあってドラマのキャスティング時期が前倒しされていきました。

1年以上前からキャスティングが行われ、それでも「『思い描いた俳優を集められなかった』というプロデューサーが多い」というのが現実。だから、旧ジャニーズが謝罪会見を開き、各局が新規起用見送りを発表してから1年の今秋ドラマはSTARTOのタレントが少ないのです。

逆に「来春以降のドラマでは再び増えていく可能性が高い」ということ。その際、積極的な動きを見せるのはどのテレビ局なのか。

バラエティや情報番組への出演も併せて、日本テレビとTBSがさらに関係性を深めていくのか。それともフジテレビとテレビ朝日が食い込もうとするのか。

私たちは悲劇を繰り返さないために、「両者の関係性にビジネスとして不適切な圧力や過剰な忖度がないか」を注視していくべきなのかもしれません。

(木村 隆志 : コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者)

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