森田剛「グルメ番組で食べず炎上」への強烈な違和感

森田剛

“グルメ旅番組に出演しながらも食べなかった”として、ネット上ではバッシングが続出している(写真:「森田 剛_GO MORITA」Xより)

アイドルグループ「V6」元メンバーの森田剛さんが、グルメ旅番組に出演しながらも食べなかったとして、ネット上で炎上の様相を呈している。さらに、ネットニュースへのコメントに加えて、週刊誌なども「森田バッシング」を題材にすることで、よりその火力が増しつつある。

ネットメディア編集者として、これまで数々のネット炎上を見てきた筆者からすると、「テレビ番組内での芸能人発言」が着火剤になるケースは珍しくない。しかし今回、全編を通して見てみると、批判すべきは森田さんではなく、むしろ番組制作側にあるのではないかと感じるのだ。

物議を醸す「食に積極的ではない」シーン

話題になっているのは、2024年9月7日に放送された「メシドラ 〜兼近&真之介のグルメドライブ〜」(日本テレビ)。お笑いコンビ「EXIT」の兼近大樹さんと、俳優の満島真之介さんによる旅行番組だ。この日は番組初登場の森田さんとともに、埼玉県越谷市を旅した。

物議を醸しているのは、森田さんが「食に積極的ではない」様子を示すシーンだ。1軒目に訪れた古民家カフェでは、スタッフから「食べないんですか?」と聞かれて、森田さんが「オレ、食べない。ちょっとタバコ吸ってきていい?」と答える。2軒目のイタリアンでは、兼近さんと満島さんからパスタを食べるかと聞かれて、「あーでも食って。オレ大丈夫」「スゴい食うね」と返事した。

【画像3枚】「ワガママだ」「食べたくないならオファーを受けるな」と非難轟々も…。森田剛さんの出演時の様子

こうした発言の画面キャプチャがSNS上で拡散されると、ネット上では「ワガママだ」「食べたくないならオファーを受けるな」といったバッシングが続出。森田さんは2018年に、俳優の宮沢りえさんと結婚していることから、「宮沢りえは、なぜこんな男にほれたのか」「甘やかしすぎでは」といった批判も出た。

これらの視聴者コメントを、さらに週刊誌や夕刊紙が扱うことにより、森田さんへのバッシングが強まって、「炎上」の様相を呈している。しかし、しっかり番組を見てみると、疑問視されるべきは森田さんではないのではと感じるのだ。その理由を考察していこう。

森田さんにも隙はあったが、それ以上に…

「メシドラ」はタイトル通り、グルメとドライブを軸に据えている。番組のコンセプトからすると、食事に積極的でないのは、番組を通して「徒歩移動」するのと同様に、言語道断と言えるだろう。

食事よりも喫煙を優先させるように見えた構図も、あまり最近の世論には合っていない。また、ヒゲを生やす人物への偏見も否定できない。あらゆる状況が絡み合った結果、「森田剛はダメだ」という印象を残してしまったのだろう。その点においては、森田さん側にも要因はあるように感じる。

メシドラの画像

「メシドラ」の名の通り、グルメとドライブを軸に据えた番組だ(画像:番組HPより)

しかし、1時間の番組全編を見てみると、あくまで筆者の感覚ではあるものの、森田さんそのものには、むしろ好印象を覚えた。「食べない」という一点だけは異様だとしても、その他の場面では、積極的に番組を盛り上げようとしているように感じられたのだ。

番組スタッフが、どれだけ事前リサーチをしていたかは不明だが、少なくともロケ冒頭から「森田さんは食べない」は共通認識として描かれていた。

共演歴のある満島さんが、「みんな飲んだり食ったりしてる中で、1人だけずっとコーラかコーヒー飲んでる。口に物入れてるの見たことない」と明かし、兼近さんが「今日ももしかしたら食べない?」と反応する場面もある。後部座席で聞いていた森田さんは、そこにコメントを挟まなかったが、「かたくなに食べない方がオイシイ」と思った可能性もある。

そして、放送時間が残り3分の1となったころ、森田さんは「仕事のときは夜1食が多い。朝も昼も食べずに夜だけ」と明かす。それに兼近さんが「よく『メシドラ』っていう名前ついてる番組、許可出してくれましたね」と返して、ようやく初めて、森田さんは口元を押さえつつ、「そういうこと!? だから食ってんの? 今初めて気づいた」と驚くのだった。

そこで浮かぶのが、どれだけ制作サイドが「演者」を守れていたのかという疑問だ。森田さんは今回、5年以上ぶりにバラエティー番組に出演したと話していた。つまり、2021年の「V6」解散と、ジャニーズ事務所(当時)からの独立後、初めての露出となる。

わざわざ、メシドラをその場に選んだ理由は、どこにあるのだろう。森田さんの反応からするに、本人が番組を見た経験はなさそうだ。満島さんとの関係性から受けた可能性もあるが、だとすれば「企画よりも共演者との縁」で判断したことになり、グルメロケという企画に忠実であることが、後回しになるのもわからなくもない。

今回のメシドラは、TVerでも配信されているが、その番組概要には「自由すぎる森田剛がMCを翻弄」と書かれていた。もし企画やキャスティング時点で、「自由」を求めていたのだとすれば、森田さん側とのコミュニケーションが不足していたと感じてしまう。

制作側は「グルメ番組なのに食べない」という構図に魅力を感じて、オファーしたのかもしれないが、それがしっかり伝わっていなかったら、演者の動きも変わってきてしまう。ただ、森田さんは、終盤まで番組コンセプトを知らなかったとしても、当初から「『食べない自分』を求められている」と察していたように見える。

例えば、1杯目のドリンクを飲んだ瞬間から「これ飲んだら帰ろう」と呼びかけたり、フレンチトーストを見て「めっちゃうまそう」と反応した直後に、冒頭の「吸ってきていい?」発言をしたり……。

また、あくまで筆者の感想でしかないが、食以外の部分においては、できる限りのサービス精神を見せていたように感じられる。ドライブの道中では、結婚相手を知らない兼近さんに、森田さん自ら「みやざ……き……は……」と小出しにすることで、映画監督の宮崎駿氏と答えさせようとする場面もあった。また、トランポリンを跳びはねながら、テンション高く「ウォホーーー!」(番組テロップの表記)と叫ぶシーンもあった。

SNS社会における「切り抜き」のリスク

今回の炎上では、「SNSでの画面キャプチャ」が発火点となった。当然ながら著作権や肖像権から問題があるものなのだが、このSNS社会において、「切り抜き」のリスクは、常に隣り合わせだ。

そして、いざ切り抜かれてしまったら、本来とは異なる文脈が付与されてしまう。拡散されたキャプチャには、森田さんによる「興味ないわ」という発言もあったが、番組を見る限り、これはスベり気味の満島さんの言動をツッコむ文脈だった。

満島さんとの関係性における「イジり」と思われるにもかかわらず、本来の文脈が絶たれ、批判的な文脈で拡散されることにより、「食に対して興味がない」といった意味合いに受け取られてしまう。

「とにかく批判したい」タイプのネットユーザーは、1時間の本編すべてを見ることは少なく、最大4枚の画面キャプチャのみで判断しがちだ。私たちのようなライターの記事が、最後まで読まれず、見出しだけで批判されるのと近い感覚だろう。

テレビの場合には、そこにテロップの功罪も間違いなく存在する。目立つ発言をテロップで引き立たせることで、より印象づけようとする演出が、効果を持つことはわかる。ただ、静止画で「誰が何を言った」が明確になることで、発言者をおとしめようとする人が、SNSにて拡散しやすくなる側面もある。

このような時代背景を鑑みると、今回のメシドラは「演者の個性」を尊重した結果、かえって演者に迷惑をかける結果になったようにも感じられる。

今後の「番宣」では、どんな姿を見せてくれるか

ちなみに番組ラストには、森田さんが出演する舞台が告知されていた。つまり「宣伝」の一環だったわけで、今後も各局の番組に出る可能性は高い。そこで「どう写るか」が、森田さんの今後を左右するだろう。

森田剛

番組を盛り上げたり、楽しむ姿勢は一貫している印象だった(画像:番組公式インスタグラムより)

(城戸 譲 : ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー)

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