中国で世界最大の「上場造船会社」が発足の背景

中国の造船業界は重複投資が多く、効率化の余地が大きいとされる。写真は中国船舶工業傘下の外高橋造船のドックを離れる新造船(中国船舶工業のウェブサイトより)

中国の上場造船大手の中国船舶工業と中国船舶重工は9月2日、株式交換を通じた合併計画を発表した。中国船舶工業が中国船舶重工の株主に対して株式を発行・交換することにより、前者が後者を吸収合併する。

両社は中央政府直属の国有造船持ち株会社、中国船舶集団(CSSC)の事業の中核を担う2大上場企業だ。合併後の存続会社の総資産は4000億元(約8兆2455億円)に迫り、年間売上高は1000億元(約2兆614億円)を超える見通しだ。

「南船」と「北船」がルーツ

中国船舶工業の前身は、かつて「南船」の略称で呼ばれていた旧中国船舶工業集団である。主要製造拠点は華中以南にあり、上海市の江南造船集団と外高橋造船、江蘇省の中船澄西船舶修造、広東省の広船国際などの有力造船会社を傘下に持つ。

それに対し、中国船舶重工はかつて「北船」と呼ばれた旧中国船舶重工集団を母体とする。主要製造拠点を華中以北に置き、傘下に遼寧省の大連造船、湖北省の武昌造船、山東省の北海造船などを擁している。

中国船舶工業は2024年上半期(1~6月)に合計109隻、載貨重量トン数換算で855万7700トンの民用船舶を受注した。これは載貨重量トン数ベースの受注シェアで中国市場の16%、世界市場の11%に相当する。

中国の習近平政権は国有企業を重視し、かつて分割された大型企業の再統合を進める。写真は中国船舶重工傘下の大連造船が建造した中国初の空母「山東」(中国船舶重工のウェブサイトより)

一方、中国船舶重工は上半期に合計68隻、載貨重量トン数換算で1167万1000トンの民用船舶を受注。載貨重量トン数ベースの受注シェアは中国市場の15%、世界市場の22%を占めた。

(訳注:中国船舶工業と中国船舶重工は軍用船舶も受注・建造している)

両社の合併により、新造船のグローバル市場で約3分の1のシェアを握る世界最大の上場造船会社が誕生することになる。

空前の造船景気が追い風に

両社の親会社である中国船舶集団は、2019年に南船と北船が合併して発足した。南船と北船は1999年に旧中国船舶工業総公司が2分割されたものであり、(国有企業の発展を重視する)中国政府の政策により20年ぶりに再統合された。

にもかかわらず、南船および北船の上場子会社の合併計画は遅々として進まなかった。それがここに来て一気に進展したのは、造船業界が空前の好景気に沸き、受注価格が上昇している(ため、グループ内の利害調整がしやすい)ことが追い風になったと見られている。

イギリスの海事情報会社クラークソンズ・リサーチが発表している新造船価格指数(訳注:1988年1月の船舶建造価格を100とした指数)は2024年6月末時点で187.23に達し、過去最高の191.6に迫りつつある。

(財新記者:李蓉茜)
※原文の配信は9月3日

(財新 Biz&Tech)

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