「血糖値」下げるつもりが、じつは無意味な習慣4つ
「血糖ブースター」のスイッチをオフにする
人間の体には、最低限の血糖値を維持するために筋肉や脂肪から糖質をつくってくれる「糖新生」というシステムが備わっていますが、この糖新生が頻繁に起こると血糖値の上昇に歯止めがかからなくなってしまいます。
この状態を、私は「血糖ブースター」と呼んでいます。ここでは、つねに血糖ブースターをオンにしてしまう、間違った食生活(&それ以外の生活習慣)の代表的なものを4つ紹介していきます。重視したポイントは次のとおりです。
・血糖値が下がることにつながると勘違いしている
・間違いを正しやすい(すぐに生活を改善できる)
おそらくほとんどの方が、「え! そうだったの?」となることでしょう。よく勘違いされていたり、意外に知られていなかったりすることばかりを集めましたからね。
みなさんが目指すべきなのは血糖値を下げること、すなわち血糖ブースターのスイッチをオフにしておくことです。
本稿で紹介している間違った食生活(&それ以外の生活習慣)を続けていたら、血糖ブースターの活動は止まらず、いつまでたっても血糖値が下がることはありません。まずは、ひとつでもいいのでやめてみましょう。そして、少しずつ着手する項目を増やしていってください。血糖値はひとりでに下がっていきます。最終的には、すべてカバーできるようにしたいですね。
じつは「健康のため」が裏目に出てしまうことも
野菜は体にいい。健康のためには、積極的に摂取したほうがいい。ほとんどの読者が、このような認識を持っていることでしょう。私はこれを真っ向から否定するつもりはありません。
しかしその一方で、全肯定することもできません。野菜を体に摂り入れるのなら、なんでもかんでもOKとはいえないからです。野菜の種類は大事ですし、摂取の仕方も重要になってきます。
注意したいのは、市販の野菜ジュースです。健康のためにと、毎朝飲んでいる人もいるでしょう。「これ1本で1日の半分の野菜の栄養素が摂れる」などの謳い文句を見ると、ついつい手が伸びてしまうかもしれません。
でも、注意してください。野菜ジュースには大きな落とし穴が潜んでいます。砂糖不使用ならいいのですが、たいていの野菜ジュースは飲みやすくするために加糖したり、果物を混ぜたりしています。これが、不要な糖質摂取につながってしまうのです。
200㎖ほどの小さいパックの野菜ジュースには、だいたい15gから20gの糖質が含まれています。角砂糖にすると、4つか5つ分です。それを一気に体に流し込むわけですから、言わずもがな血糖値は上がります。
野菜の栄養素を摂るつもりで飲んでいたとしても、そのプラス面をすべて消し去り、マイナスに転じさせるほどの負のパワーを持った糖質を、過剰に摂取してしまうことになるのです。
野菜ジュースを飲んで健康になる人よりも、不健康になる人のほうが多い――私はそう感じています。健康意識の高い人には、自作のスムージーを毎日飲んでいるというケースもけっこう見られますが、こちらも野菜ジュースと同じこと。血糖値上昇に大きく影響します。果物に含まれる果糖の恐ろしさを侮ってはいけません。
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医学の世界はつねに新たな発見の連続で、日進月歩で発展しています。かつての常識が通用しなくなったり、通説が覆されたり、といったことは日常茶飯事です。極端な話、真逆の結論が示されるケースもあります。
そんな、常識が変わったもののひとつにカロリーが挙げられます。
以前は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると太るとされていました。しかし、さまざまな研究によって、カロリーが太ったりやせたりすることにほとんど関係しないことが明らかになりました。簡単にいうと、カロリーを多く摂取したからといって、太るとは限らないということです。当然、血糖値にも影響しません。
カロリーは体を動かすエネルギーの単位で、食品においては「1気圧の環境下で1Lの水を1℃上昇させるのに必要な熱量=1キロカロリー」と定義されています。そして、その食品が体の中で産出するエネルギー量を〇キロカロリーというように示します。
カロリーが高いということは、それだけ栄養素が豊富に含まれていることを意味するので、食べすぎ防止の参考程度にはなるでしょう。しかし、じつはカロリーは肥満にも血糖値上昇にも関係性が認められません。これが、現在の医学の常識です。
カロリーをいっさい無視して構わないとまではいいませんが、神経質になったところで健康増進にはあまりつながらないということを知っておきましょう。カロリーを気にしながら血糖値を下げることができた人に、私はこれまでお目にかかったことがありません。
食品購入時に成分表をチェックする際は、カロリーではなく炭水化物(糖質)を真っ先に見るようにしてください。これが、血糖値上昇のもとであり、糖尿病の大きな原因のひとつです。数字(グラム数)が高いほどリスクが上がることはいうまでもありません。
甘いものとカフェインの「同時摂取」はNG
甘いものの食べすぎは体に良くない。これがわかっていても、人間、なかなかゼロにすることはできませんよね。
かくいう私も、たまに甘いものを食べることがありますし、「糖尿病になりたくなければ、甘いものを一生口にしてはいけない」といった極論を展開するつもりもありません。節度を守って楽しむぶんには、まったく問題ないと思います。
ただその際に、ぜひとも覚えておいていただきたいことがあります。それは、甘いものと同時にカフェインを摂取すると、血糖値の急上昇をまねく危険性があるということです。例えばケーキを食べる際、免罪符のようにブラックコーヒーを一緒に飲む人は多いでしょう。
「コーヒーに砂糖を入れたら糖質を摂りすぎちゃうから、せめてブラックで」。そんな考えが根底にあると思いますし、実際にコーヒーには糖質の吸収を穏やかにする効果があるとする論も存在します。しかしこの組み合わせは、じつは血糖値の上昇を抑えるどころか、むしろ急上昇を後押しする要因になります。
裏で暗躍しているのは、コーヒーに含まれる成分のカフェインです。カフェインを摂取すると交感神経が活発になり、体のパフォーマンスを高めるホルモンのアドレナリンが分泌されます。すると、アドレナリンが肝臓に働きかけ、糖新生(最低限の血糖値を維持するために、筋肉や脂肪から糖質をつくる作用)を促進します。これにより、ケーキの糖質とカフェインが起こす糖新生のダブルパンチ状態が生まれてしまうのです。
コーヒーを紅茶に切り替えても、やはりカフェインを含むのでほとんど意味はありません。和菓子に緑茶、も同様です。甘いもの+カフェインを含む飲み物の組み合わせは最悪。そのように覚えておいてください。どうしても、という場合は、カフェインレスのコーヒーやお茶を活用しましょう。
「健康食」「ヘルシー」というイメージがあるが
そばという穀物には、さまざまな栄養成分が含まれています。
毛細血管を丈夫にしてくれる、ポリフェノールの一種のルチン。お通じを良くしてくれる食物繊維。エネルギー代謝を促してくれるビタミンB群。体の成長や健康維持をあらゆる面からサポートしてくれるミネラル。などなど、数えだしたらきりがありません。
低カロリーかつ、たんぱく質を豊富に含んでいることも注目されており、「健康食」「ヘルシー」というイメージが根づいています。そばを扱う食品メーカーやそば店は、ことさらそれを強調しています。
ただしこれは、あくまで良い面だけにフォーカスを当てた情報にすぎません。その裏にひそむもうひとつの顔には、いっさい触れられていないのです。薬に例えるのなら、効能だけをアピールして、副作用の可能性にまったく言及していない状況と同じです。
ラーメンもうどんもそばも「糖質」に大差なし
そばは本当に、健康食といえるのでしょうか。
糖尿病専門医の私の答えは「ノー」です。そばには糖質がたくさん含まれている――理由はこれに尽きます。
おそらく「そばよりも小麦粉のほうが糖質は高そう」というイメージを持っている人が多いはずで、それゆえにうどんやラーメンと比較した際に、「そばのほうが断然健康的」と認識しているのではないでしょうか。
しかしそれは、完全な間違いです。
生麵か乾麺か、茹でる前か茹でた後か、などによって数値は若干変動しますが、1食あたりの糖質は、ラーメンもうどんもそばも大差はありません。肥満のもとであり、糖尿病の原因であることに、なんら変わりはないのです。
そばを食べること自体は構いません。しかし、リスクを認識しておくことと、食べすぎに注意することは、忘れないようにお願いします。
(矢野 宏行 : 医学博士、糖尿病専門医)
09/16 15:00
東洋経済オンライン