医師が警告「生活習慣病」招く3つの身近な食品

「絶対に食べないのは無理なので、極力食べないことが大事」だという(写真:flotsam/PIXTA)
「60代、70代、80代、90代……年代が上になればなるほど、病気がちでいつもしんどそうな人と毎日を元気に楽しそうに過ごす人の二極化が激しくなっているように感じます」と語る内科・総合診療医の橋本将吉氏。
こうした「健康格差」が生まれる要因として、「血管・血流」の重要性を指摘する橋本氏が提唱する食生活の注意点とは?
※本稿は、橋本氏の著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』から、一部を抜粋・編集してお届けします。

食生活の改善でやるべきことは、たったの2つ

生活習慣の乱れからくる生活習慣病。当然、生活習慣の乱れを正すことが、生活習慣病の予防になるのですが、運動もしてストレスフリーな生活をして、規則正しい生活をする。理想的ではありますがそんなこと、なかなかできませんよね。

私は、これまで「年をとっても元気な人」と、「年とともにどんどん衰えていく人」を多く見てきましたが、年をとっても元気な人でも、模範的な規則正しい生活をしている人というのは、ほんの一握りです。

むしろ、規則正しい生活をしなくてはというプレッシャーから、うまくいかない自分に苛立ちやあきらめを覚えて、余計に元気をなくしていく人を多く見てきました。

ただ、生活習慣病になって、どんどん衰えていく人とそうではない人の生活習慣で、大きく違うなと感じるものが食事です。

生活習慣病予防には適度な運動が必要といわれますが、適度な運動をするということは、新たな習慣を生活に加えなくてはならないことで、それはたとえ、ちょっとした運動でも、毎日の生活に取り入れるのは、なかなか難しいでしょう。

ですが、食事に関しては、子どもの頃から1日に3回とってきていますよね。そのすでに習慣化されている3回の食事の1回でも、健康を意識した食事にするだけで習慣的な改善が望めるのです。

やるべきことは次の2つ。

・できるだけ、生活習慣病の原因になるものを食べない
・できるだけ、血管に良いものを食べる

悪いものをあまり食べずに、良いものを食べる。当たり前といえば、当たり前のことかもしれませんが、これが健康のための王道にして、近道です。

ただ、おいしいものを今後一切禁止と言われても、それじゃ人生、楽しくありませんよね。体に悪いと知っている医者の私ですら、金輪際口にしないというのは無理ですし、欲求に負けて食べてしまうことだってあります。重要なのは、これらは極力食べないようにしてほしい食品ということです。

医師の立場として"食べてほしくない"3つのもの

では、さっそく具体的な食べ物を挙げていきましょう。

食べないほうが良いもの、1つめは菓子パンです。理由は糖分です。

口の中に入った食べ物は咀嚼され、幅2〜3㎝のとても細い器官である食道を通り、胃の中に入ります。胃は食べ物が入ってくると、うにょうにょと収縮します。これは医学用語で蠕動運動と言い、食べ物と胃酸を攪拌し消化を促すのです。

胃の中で消化された食べ物は小腸に行きます。ここで本格的な吸収が始まります。「そもそも吸収ってなんだ?」という話ですが、簡単に言えば、ものすごく小さくなった食べ物が血管の中に溶けていくことを指します。

ものすごく小さくなった食べ物は、糖質や脂質、あるいはタンパク質やビタミンなどと、皆さん聞き覚えのある名前で呼ばれる物質になります。

おおむね、これらは体に必要な栄養素です。しかし、そこには適量というものがあります。言うまでもなく、そのボーダーラインを超えてしまっては体に良くありません。そして、一般的な菓子パンには、糖質が多く含まれています。

私も好きですからあまり言いたくはないのですが、菓子パンの7割前後は炭水化物で、炭水化物の主成分は糖質です。そこにおいしくするために砂糖やチョコレートを加えるのですから、必然的に糖質が多くなってしまうのです。血液中に糖質が多く溶け込んでいる状態、つまり血糖値が高い状態を高血糖と言います。

糖分は脳にとって「重要なエネルギー源」でもある

高血糖の状態になると、体はいつもの状態に戻そう、つまり、血糖値を下げようとします。具体的には、胃の後ろ側にある細長い臓器・すい臓からインスリンというホルモンが分泌されます。インスリンが「血糖値を下げるために、筋肉や内臓に糖質を取り込んでくれ!」と指示を出し、吸収が始まります。

これで血糖値が一定に保たれれば問題ないのですが、筋肉や内臓だけで処理しきれない場合は、脂肪細胞にも糖質が取り込まれることになります。簡単に言えば、太るということですね。さらに、高血糖の状態が続くと、多くのインスリンを出そうとすい臓が疲弊するなどして、インスリンを分泌する機能が低下してしまうのです。

こうなると慢性的に血糖値が高くなり、のどが渇いたり、尿が多くなったり、倦怠感を覚えやすくなります。そして、血糖値が高い状態が続くと動脈硬化が起き、血流が悪くなりやすくなります。

こういう話をすると「じゃあ、糖分は悪だ! 糖質制限ダイエットだ!」となりがちですが、事はそう簡単にすみません。

むしろ、糖分は大切なものだからこそ、人は食べようと欲するわけで、筋肉や内臓に脂肪として貯蔵される生命維持に必要な栄養素であり、特に脳にとっては重要なエネルギー源なのです。

ただ、過剰な糖質制限をしない限り、お米やパンが主食の現代の食生活で糖質不足になることはありません。まずお米やパンはおかわりしたり、大盛りにしたりしない。そして甘いものをバクバク食べないなど、過剰な糖質摂取をしないように意識した食生活を心がけることです。

ですから、お昼ごはんなどには菓子パンではなく、ほかのパン。どうしても甘いパンが食べたくなったら、血糖値の上がりにくい菓子パンなどもありますから、そういったものを探してもいいでしょう。

体にさまざまな悪影響を及ぼす「AGE」

次の食べないほうがいいものは、クッキーです。

クッキーには薄力粉、バター、砂糖、卵などが使われていて、糖質とともに、脂質が多く含まれています。先ほどは糖質が血液に多く溶け込むとマズいという話をしましたが、脂質も同様に過剰な摂取は避けたいというところを考えると、クッキーはあまりよろしくない食べ物になります。

避けてほしい最後の食材は、ポテトチップスです。映画なんかを見ながらのポテチはもう最高ですが、これも良くはないんですね。理由は「AGE」です。

聞きなれない単語だと思いますが、これは近年注目され始めたもので、日本語だと「終末糖化産物」と言います。なんだか仰々しい名前ですが、要は糖が過剰にこびりついたタンパク質の成れの果てだと思ってください。読んで字のごとく、終末=最後の最後に、糖化=糖によって変化して、産物=できたものということです。

このAGEは、強い毒性を持ち、体の老化を引き起こし、アルツハイマー型認知症、白内障といった病気の原因にもなるといわれています。

例えば、肌のコラーゲンに悪さをしてしまいます。コラーゲンは、いわゆる肌のバネのような役割を担っています。肌を押してもぷるんとした弾力性があるのは、このコラーゲンのおかげです。しかし、このコラーゲンにAGEがついてしまうと、さびて弾力性のなくなったバネへと変身してしまうのです。

(出所:『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』より)

※外部配信先ではイラストを全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください

また、このAGEは、血管についちゃうんですよね……。ついちゃうと……、脂と糖と同じように「炎症」が起こってしまい、動脈硬化が引き起こされてしまうのです。

AGEは焼いたり揚げたりする高温調理の過程で多く生成されます。ですから、理論上は揚げるよりも焼いたほうが良い、焼くよりも、ゆでたほうが良い、ゆでるよりも生のほうが良いという順序になります。しかし、じゃがいもを生で食べるなんて無理ですし、なにより揚げたポテトはとてつもなくおいしい。

そもそもからして何度も使ったり、鍋の中に長い時間、放置された古い油=悪い油はAGEが多く発生するといわれています。つまり、工業用やお店で揚げているものは、言うに及ばずというわけです。

そういった観点から見直すと、外で食べるとんかつ、唐揚げ、ステーキ、天ぷらなどの動物性脂肪食品に、AGEは多く含まれている可能性が高いと言えるでしょう。

「超加工食品」には依存性も認められている

菓子パンやクッキー、ポテトチップスの3つのような、糖分や塩分、脂肪などを多く含む加工食品は、「超加工食品」などと呼ばれたりします。

糖分は高血糖、塩分は高血圧、脂肪は脂質異常症など生活習慣病のリスクが高まりますから、できるだけ控えてほしいものです。

さらに言えば、最近、超加工食品には、たばこやアルコールなどで見られるような、依存性があるという研究結果も発表されています。

そう考えると、食べ続けることで、やめられなくなる可能性があるので、少しずつでも減らしていくことが必要です。

ちなみに、超加工食品には、次のようなものがあります。

【そのほかの超加工食品例】
冷凍ピザ・ホットドッグ・ミートボール・チキンナゲット・ハム・ソーセージ・キャンディー・グミ・ドーナツ・アイスクリーム・ビスケット・クッキー・炭酸飲料・マーガリン

医者の立場でいうなら良くないものは良くない。しかし、私も医者である前に1人の人間ですから、年がら年中、体のことばかり考えてもいられません。なによりそんな生活、息苦しくて楽しいとも思えません。

ここに挙げた食品を頭の片隅に置いておいて、無理のない範囲で摂生するようにしてみてください。

(橋本 将吉 : 内科・総合診療医)

ジャンルで探す