沖縄移住で「なじめる人」「なじめない人」決定的差

(写真:撮るねっと /PIXTA)
ビジネスチャンス、そして暮らしやすさを求めて、沖縄に進出する人は少なくありません。一方で、撤退する人も同様に多いと言われます。「沖縄は日本語の通じる外国と考えたほうがうまくいく」と話すのが、琉球王国を建国した尚巴志王の末裔であり、沖縄進出コンサルタントとして、「本土企業」のお手伝いをしている伊波貢さん。沖縄独自のビジネス慣習「沖縄ルール」について、伊波さんの著書『沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!』から紹介します。

相手との距離感を測っている

仕事だろうが観光だろうが、沖縄に来ると、必ず沖縄の人に聞かれるのが、「出身はどこ? 沖縄よく来るの?」。

「沖縄のどこに泊まっているの?」「沖縄に住んで何年になる?」「奥さんはどこの人? 子どもはいるの?」などなど、次から次へと質問攻めにあうことになります。しかも、会う人会う人に同じようなことを何度も聞かれるはず。なぜ、これほどまでに出身地など自分のプライベートなことをあれこれ詮索されるのだろうと思うかもしれません。

これは、沖縄の人が、この人とどういう付き合い方をしたらいいか、距離感を一生懸命に探っているのです。たとえば、ご縁があって今日一緒に飲みに行くことになったとします。「この人は、すぐに内地(本土)に帰ってしまう人だから、それなら少しだけお付き合いすればいいのかな?」と考えるわけです。1メートルの距離感でいいのか、5メートル、10メートルの距離感なのか、それを探っているのです。

つまり、「出身はどこ?」という質問から始まって、あなたとの関係性や共通項をリサーチしているのです。

(画像:『沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!』)

沖縄の人が安心できる答えとは?

沖縄の人からすると内地の人は外国人と一緒。特に内地にほとんど行かない人にとっては、何を話せばいいのかわからないし、話のきっかけすらわからないわけです。内地から来た人は得体の知れない人、そんな感覚を持っているのかもしれません。

沖縄の人同士であれば、どこの出身で、何年生まれかがわかれば、大体の見当がつきます。A高校の第何期生で、だれそれが同級生だ、くらいまで確認できます。近所の人や同級生2、3人にリサーチすれば、その人がどんな人なのかの情報が得られ、関係性を深めやすくなります。しかし内地の人だと、これが通用しないので、「どこの出身? 沖縄のどこに住んでいる? 沖縄には何年いるの?」といった確認作業が必要になるのです。

もし、沖縄に受け入れられたいと思うのであれば、沖縄になじみたいという思い、気持ちを最初からしっかりと伝えることが大事です。

「妻は沖縄出身で、子ども2人は地元の保育園に通わせています」「○○マンションを借りていて、大家さんの金城さんにはお世話になっています」「大学の同級生に沖縄出身の友人がいます」「お墓は沖縄に作るつもりです」など、こんな話をすれば「ああ、この人は沖縄から逃げない人だな」って思ってもらえます。

知り合ってずいぶん経ってから、「実は、妻は沖縄出身なんですよ」とポロっと言うと、「なんだ、それを早く言ってよ! じゃあ、飲みに行こう」となります。最初から話していれば、もっと早く距離感を縮められたのに、と思います。沖縄の人が安心する材料やネタは最初から言っておくことをおすすめします。

年上の人は「シージャ」として敬う

実は、沖縄県民同士でも、出身地や出身高校、生まれ年のことを聞きます。特に仕事の場面では重要な情報となるから、ごくごく普通の会話のなかで確認します。

その背景にあるのが「シージャ」という概念です。生まれ年が1つでも上であれば、相手を「シージャ」(年上の先輩、兄、姉)として敬うのです。相手の職業や会社での立場は関係ない。社会的な序列とでも言えばいいのでしょうか。絶対的な上下関係です。

案外、沖縄には年功序列の関係がしっかり残っています。生まれ年での先輩、後輩の関係は仕事の場面はもちろんのこと、飲み屋でも同じで、人生の先輩として敬うことを忘れてはいけません。地元の居酒屋さんに行けば、必ず先輩、「シージャ」がいるから、少人数の飲み会が大宴会になることもあります。お酒がなくなったら注ぐのを忘れてはならないから、酔うに酔えない。だから地元では飲まないという人もいるくらいです。

しかし、同じ出身地、同じ高校出身とわかれば、その後の仕事は非常にやりやすくなります。地元意識も高いので、単に上下関係を強要するのではなく、どうしたら自分たちの地元が豊かになるかを考えているからです。

(画像:『沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!』より)

年功序列、そして派閥もある

例えば、沖縄本島北部・名護市はオリオンビールの工場があることで有名です。そのオリオンビールを中心に地元の有力者、有力企業を交えた勉強会が盛んに開催されていると聞きます。沖縄本島では那覇以外の地域、離島でも、こうした勉強会が行われています。

沖縄ルール 知っておくとビジネスも人間関係もうまくいく!

都会の那覇とは違い、本島中南部、北部、離島は沖縄県全体の経済政策の恩恵を十分に受けられていないこともあり、自分たちで自分たちの「生まれ島」(育った地域)を盛り上げたいという地元愛が強いわけです。ビジネスを考えているなら、こうした勉強会に参加させてもらえるような努力が必要になってくるでしょう。

笑い話のような話ですが、ある役場では「うちの役場には派閥があるんですよ」と。どんな派閥かと聞けば、小学校派閥だそうです。沖縄は特に地元出身者を採用する傾向が強いため、小学校派閥というワードが出てくるのです。実際にその派閥で、どんなことが起きるのか内情まではわかりませんが、それぐらい小さな社会であり、その社会のなかで「シージャ」は敬うべき存在なのです。

沖縄県民は、みんな「シージャ」を敬う。もしも、あとから先輩だったとわかった時には大変なことになります。だから県民同士でも生まれ年、出身地、出身高校は必ず聞いて確認するわけです。

ただし、内地と外国人について、この「シージャ」は別枠となっているので、ご安心ください。上下の関係を作りにくいから、年齢が上でも「シージャ」とはなりません。先輩であれば、先輩としての扱いはされるでしょうが、県民同士の敬い方とは違うので、その点も理解しておきましょう。

(伊波 貢 : 沖縄進出コンサルタント)

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