だし茶漬けえん「620円朝食」の凄さに膝を打つ朝
ハンバーガーショップや、カフェ、ファミリーレストラン、牛丼チェーンなど、さまざまな飲食チェーンが提供する朝限定メニュー。
集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回モーニングをご紹介するのは「だし茶漬け えん」。和食のファストフード店というと牛丼チェーンが代表的ですが、考えてみれば、お茶漬けも日本のファストフード。
身近さで言えばソウルフードと言っても過言ではありません。調理時間が短いので提供が早く、忙しい朝時間でも利用でき、サラっと食べられるので、食欲のない朝にうってつけです。
だし茶漬け えんは、抜群の立地
「だし茶漬け えん」の店舗数は26店舗。手がけているのは「おぼんdeごはん」などの和食に特化した飲食チェーンを展開する「株式会社ビー・ワイ・オー」。
「だし茶漬け えん」は、東京都内の主要駅やショッピングモールを中心に展開しつつ、大阪・京都・静岡・仙台・名古屋・札幌・福岡など日本全国の都市部にも出店しているため「食べたことがある」「知っている」という方は多いのではないでしょうか?
さらに系列店で「和食 えん」、「肉うどん・肉どうふ えん」「和食屋の惣菜 えん」など「えん」と名の付くお店は合計40店舗以上。いずれも駅・デパ地下など、抜群の立地ばかり。明確な戦略を感じさせます。
だし茶漬け えんのモーニング
「だし茶漬け えん」のモーニングの提供時間は開店から朝10時までです。一部店舗(駅構内の店舗が中心)で販売しています。
モーニングの種類は4種類で、いずれもだし茶漬け・小鉢1品・お漬物がセットになっています。
・焼き鮭とごま昆布 税込680円
・釜揚げしらすと南高梅 税込620円
・山形だしと湯葉ちりめん 税込620円
同じ価格でごはんの量が、小盛り(約150g)・普通盛り(約180g)・大盛り(約280g)から選べ、出汁は無料でおかわりできます。
税込620円の3メニューは、グランドメニューで税込860円で販売しています。その価格差は240円。グランドメニューの方がモーニングよりも小鉢が1品多いのですが、それでもかなりお得な印象です。
山形だしと湯葉ちりめんのだし茶漬けモーニング620円
山形だしと湯葉ちりめんのだし茶漬けモーニングは税込620円。「だし茶漬け えん」のモーニングは、木製のトレイにトッピングが乗ったごはん、だしの入った急須、2連小鉢が行儀良く並んだ状態で提供されます。
お茶漬け専用のお椀は、丼鉢より小さめで、ご飯茶碗よりも大きめな絶妙サイズ。だしをたっぷり注いでもこぼれないように、深めになっています。ごはんの上には山形だしと湯葉ちりめんがたっぷり乗っています。そこに、急須のだしを注いでいただきます。
急須を傾けると、だしの香りがふわり。「だし茶漬け えん」のだしは、昆布・いりこ・かつおという定番の和風だしに、鶏がらスープをブレンドしたオリジナルです。
私流の美味しく食べるコツは、だしを少しずつ注ぐこと。急須の中には熱いだしが入っているので、だし茶漬けがぬるくなる頃に継ぎ足し継ぎ足しで食べ進めることで、最後まで冷めることなく完食できます。
ご飯は国産米を使用し、だし茶漬けに合うように粘り気の少ないものを選んでいるそう。硬めに炊いてあるのでだしをかけても、ふやけにくく、最後までサラっと食べられます。
山形だしは山形県の郷土料理で、夏野菜を細かく刻んで和えたもの。「だし茶漬け えん」では、おくら、きゅうり、青菜、枝豆などが入っています。
湯葉ちりめんは、生湯葉とちりめん山椒の炊き合わせで、京都の佃煮屋さんでは定番です。つまりは、ホカホカごはんの上に山形と京都の名物料理を乗せて、東京で食べる。なんだかとても贅沢です。
食べるほどに、胃に優しく染み渡る味
ご飯の友として愛されている、山形だしと湯葉ちりめんを、まずは別々にパクリ。山形だしはきゅうりがシャキシャキ、おくらがとろり、食感が楽しい。夏野菜特有の青い味わいがさっぱりとおいしい大地の味。
ちりめん山椒は、うってかわってお上品。繊細な湯葉を香り高い山椒ちりめんで煮ています。山椒のピリッとした辛味と爽やかで深い清涼感と、小さめサイズのちりめんじゃこの塩気と、カリカリとした香ばしさは、ご飯を格上げしてくれるおいしさ。
湯葉は豆腐を作る過程で豆乳を煮た時に、表面にできる薄皮をすくい取ったもので、しっとりと柔らかく、口の中に入れるやいなや、ホロホロとほどけていきます。味は非常に淡白で「言われてみれば確かに豆腐っぽい味がするな」という程度。つまりは湯葉に、山椒ちりめんの旨みがたっぷりと染み込んでいます。
だしをかけて、かき混ぜて一緒に掻き込めば、相乗効果でますますおいしい。
自宅で食べるお茶漬けって、余ったご飯に冷蔵庫にある漬物なり梅干しなり、鮭フレークなりを乗せて(もしくはお茶漬けの素をかけて)、お茶をかけて食べるという、「料理と言うのもおこがましいのでは?」というぐらいのお手軽な存在。
だけど、「だし茶漬け えん」は、極上のだしで食べることで、軽食でありながらごちそう感があります。
お馴染みのお茶漬けというスタイルであり、注文したらあっという間に出てくるけれど、家庭ではとてもじゃないけど真似できない深みのあるだしは、わざわざ訪れて食べたくなる味です。
朝は男性に人気・夜は女性が多め?
筆者が今回訪問した店舗は、山手線の駅直結の地下街にあります。細長い空間の左右にカウンターが1列ずつ配置された15席ほどの小さなお店ながら、朝から5人ほどの利用者がいました。
椅子は背もたれなしの丸椅子で、それぞれが2席から3席とばしで座り、黙々と食べています。新しい客がやってきて、1人が券売機前に立つと、誰かが席を立つというループが繰り返され、回転率はかなり高め。
私が店に滞在した間に、お茶漬けを食べていたのは全員が男性でした。女性もやってくるのですが、「お茶漬けを食べるのかな?」と思ったら、揃いも揃ってテイクアウトのおにぎりを買って去っていきます。
以前から「だし茶漬け えん」を、朝食も夕食にもちょこちょこ利用しているのですが、朝はいつも男性客が多めで、夜は女性客が多めです。これって大変興味深い。
飲食店の客層って固定されていることが多いんです。「松屋」はいつ行っても男性客が多いし、「Soup Stock Tokyo」はいつ行っても女性客が多い。「だし茶漬け えん」のように、時間帯によって男女比が変わるって意外と少ないんです。
そういえばお茶漬けって、「朝からごはんをしっかり食べて、1日がんばるぞ!」という男性にもぴったりですし、「夕飯は外食にしたいけど、ハンバーグやラーメンは重いから、サラッと食べられるものを」という女性にもぴったりです。
平日の朝9時前。カウンターの窓ガラス越しに、ひっきりなしに行き交う人々を眺めながら、お茶漬けをすすりつつ、さまざまに思いをめぐらす朝です。
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(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)
09/14 08:00
東洋経済オンライン