びっくりドンキー「545円朝食」で待ちわびた甘い朝
ファストフードに牛丼チェーンにファミリーレストラン。カフェに焼肉に立ち食い蕎麦にドーナツショップ。飲食チェーンがひそかにしのぎを削っているジャンル、それがモーニングです。集客の弱い時間帯である午前中の売り上げを強化すべく、朝の数時間だけ提供される限定メニューの数々は、コスパ抜群かつ店の特色が強く表れ、どれも魅力にあふれています。
今回ご紹介するのはファミレスチェーン「びっくりドンキー」のモーニングです。
以前にも当連載で「卵かけご飯(みそ汁付き)」、「トーストセット」をご紹介しましたが、今回は新メニューの「イチゴホイップトーストセット」と、看板メニューであるハンバーグプレートを朝食サイズにした「ミニマムバーグディッシュセット」をご紹介します。
びっくりドンキーの朝メニュー
「びっくりドンキー」のモーニングメニューの販売時間は、開店(朝8時もしくは9時)から11時まで。全国250以上の店舗で実施されています。
最安値は税込330円、高いものでも1000円ちょっと。ドリンク付きのトーストセットが380円など、朝ならではのお手頃な価格が魅力です。
なお、びっくりドンキーのメニューは、都道府県により価格が変わります。当記事では、筆者が訪れた東京都の都心のとある店舗の価格を記載しています。
・プレーントーストセット 税込435円
・チーズトーストセット 税込545円
・ポテサラトーストセット 税込545円
・イチゴホイップトーストセット 税込545円
・ミニマムレギュラーバーグディッシュ 単品税込610円 セット税込720円
・ミニマムエッグバーグディッシュ 単品税込720円 セット税込830円
・ミニマムレおろしそバーグディッシュ 単品税込720円 セット税込830円
・ミニマムチーズバーグディッシュ 単品税込790円 セット税込900円
・ミニマムパインバーグディッシュ 単品税込790円 セット税込900円
・ドンキースペシャルブレックファスト(目玉焼き) 税込935円〜1045円
・ドンキースペシャルブレックファスト(スクランブルエッグ) 税込935円〜1045円
モーニング好評につき実施店舗拡大中
「ガスト」や「ジョナサン」、「デニーズ」や「ロイヤルホスト」などのファミリーレストラン大手は以前から、充実したモーニングメニューを提供しています。「モーニングといえば、ファミレスか牛丼屋」というイメージを持っている方も多いかもしれません。
でも実は「びっくりドンキー」のモーニングの歴史は浅く、2021年に開始したばかりです。
当時はコロナ禍で、緊急事態宣言を受け夜間営業ができなくなった飲食チェーンが多くあり、「夜がダメなら朝だ」ということで、早朝から店を開けるお店が続出。焼肉店やラーメン店でも朝限定メニューが並びました。さながらモーニング戦国時代です。
あれから3年。コロナ収束とともに、ほとんどの店が以前の営業形態に戻るなか、「びっくりドンキー」のモーニングは大好評のまま継続しています。モーニングの実施店舗をさらに拡大。サービス内容も充実し、新メニューも増えました。
甘党垂涎!ホイップたっぷりのイチゴホイップトーストセット545円
「びっくりドンキー」モーニングの新メニュー「イチゴホイップトーストセット」が7月頃に登場しました。いちごジャムとホイップクリームを載せた食パンと、ゆで卵、ドリンクがセットで税込545円。今までしょっぱい系ばかりだったメニューに、待望の甘いメニューの追加です。
5枚切り程度の厚みのある食パンは、しっかりトーストされています。パンの外周には、たっぷりのホイップクリームで土手をつくり、中央にたっぷりのいちごジャムをオン。
このいちごジャムがなんともフルーティー。角切りのいちごがたっぷり入って、甘酸っぱい味わいです。ジャム(果物を煮詰めてゼリー状にしたもの)というよりも、果物をシロップで煮たコンポートというのがふさわしいかもしれません。
トーストが熱々の状態でホイップを絞ってあるので、序盤は熱い食パンがサクッ、そこに冷たいホイップ&ジャムをプラスして口の中はサクとろのひやあつです。ホイップはパンケーキやワッフルなど、柔らかい生地と食べることが多いので、こんがり食パンとの歯触りのコントラストは新鮮です。
食べ進めるとパンの余熱で徐々にホイップクリームが溶け出します。ホイップがパンに染み込んでいき食パンはしっとり、かむと甘いクリームがジュワ〜という食感に変化していきます。
コーヒーはホットもアイスもおかわりOKに進化
モーニングのセットドリンクは8種類です。
・アイスコーヒー
・太陽のオレンジS
・コーラS
・メロンソーダS
・ホットウーロン茶
・アイスウーロン茶
・ヨーデルS
ホットコーヒーとアイスコーヒーはブレンドとシングルの2種類で、どちらもおかわり自由です。
以前はホットコーヒーをオーダーすると、おかわりできるのはホットコーヒーだけだったのですが、いつの間にか、ホットコーヒーをオーダーした場合、ホットコーヒーもアイスコーヒーも(さらにブレンドでもシングルでも)おかわりできるようになっていました。
コーヒーの豆は高地栽培を行う生産者から直接買い付け、北海道の自社工場で焙煎するというこだわりよう。ファミレスだとあなどれない、本格的なスペシャルティコーヒーが飲めます。
最近ではコーヒー人気の高まりや、コーヒーメーカーの進化もあり「どのファミレスで飲んでもはずれなしで、ちゃんとおいしいなぁ」と感じるようになりましたが、「びっくりドンキー」のコーヒーは癖が強くてちょっと特別。
「料理の邪魔にならない無難なコーヒーを出しておこう」ではなく、「コーヒーもうちの看板メニューです(キリッ)」というプライドを感じさせます。
ブレンドは「びっくりドンキー」独自の配合、深煎りでしっかりとした苦味があり、濃厚で複雑な味わいです。おいしいのはもちろんのこと、味が強い。シングルは1種類のコーヒー豆を使用し、時期によってコーヒー豆を変更しているので、旬の味わいの変化が楽しめます。
ミニマムというよりミディアムなボリューム、ミニマムバーグディッシュセット720円
「びっくりドンキー」の看板メニューが、ワンプレートにハンバーグとライス、サラダを盛り付けた「バーグディッシュ」です。
甘い玉ねぎがたっぷり溶け込んだ醤油ベースで甘辛いオリジナルソースがかかったハンバーグは、「びっくりドンキー」ならではの唯一無二の味わい。木製の大きなお皿に華やかに盛り付けられ、さながら大人のお子様ランチ。見るだけで心が躍ります。
それをまるっと小さくしたのが、朝限定メニューの「ミニマムレギュラーバーグディッシュ」税込610円です。小さめの木皿に、ハンバーグが100g、ライスとサラダも朝食サイズで提供されます。
「レギュラーバーグディッシュS」がハンバーグ150gで税込860円なので、通常サイズよりもマイナス250円で設定されています。みそ汁がついたセットを注文しても税込720円と、レギュラーサイズよりも安いのが嬉しい。
レギュラーサイズとミニマムサイズを並べると、パッと見て1まわりどころか2まわりぐらい小さく感じたのですが、実はお皿が小さいだけで、中身の量はミニマム(最小)というよりは、ミディアム(中くらい)という感じ。朝食としては十分すぎるぐらいの食べ応えがありました。
味はみなさんご存じの「レギュラーバーグディッシュ」そのままで、量だけ少なめ。大根のサラダはシャキシャキで、てっぺんのマヨネーズはすっぱさ控えめで濃厚。マヨネーズに申し訳程度にふりかけられた白ごまで香ばしさや風味がアップします。
ハンバーグは平たく伸ばして、ラグビーボール型に成形。お箸でも食べやすい厚みです。「フォークとナイフでいざ!」というハンバーグもご馳走っぽさがあっていいのですが、「ハンバーグとライス、サラダをワンプレートでお箸を使って食べる」というのは、他店にはないコンセプトでカジュアルさが嬉しい。
牛と豚を独自の配合でブレンドした合いびき肉は、しっとり柔らかで肉汁たっぷりです。ハンバーグソースも「実はかかってました」ぐらいの控えめさなのに、しっかりおいしい。ハンバーグをお箸で割って口に入れると、ふわぷりの食感とともに、目には見えない飴色玉ねぎの旨みが広がります。硬めに炊いたライスを、お皿のくぼみにたまったソースにつけて食べると、これまた絶品なのです。
ワクワクテーマパークから、落ち着けるいつもの店へ
今回筆者が訪れた店舗は、都心の駅チカ路面店で、5月にオープンしたばかりの店舗です。以前も並びにお店があったのですが、いつの間にか閉店して今回の店舗にお引っ越ししていました。
私のなかでは「びっくりドンキー」というと、店の雰囲気込みで楽しみに行くテーマパークのような印象があったのですが、徐々にそのイメージが変化してきています。
以前の店舗は天井に古びた自転車がディスプレイされていたり、岩を模した壁や、レンガにウッドフェンスなど、アメリカの開拓時代にタイムスリップしたような、インディージョーンズの世界を探検するような演出がされていました。
今回の店舗は、壁一面にネイビーグリーンのウィリアム・モリスの壁紙が貼られ、建具はツヤツヤの焦茶色。広々とした店舗なのに、落ち着いた空間に仕上がっていました。まるで「赤毛のアン」の世界。男心くすぐる大冒険活劇から、少女文学へと大幅なイメチェンです。
月曜日の朝10時頃。広い店舗なので全体を見渡すことはできませんでしたが、筆者のまわりのテーブルは、ひとつとばしで埋まっています。驚いたのはカップル、ファミリーだけでなく、1人客も複数いたこと。
「友達や家族、大人数でたまに行く、テーマパーク的なお店」ではなく、「1人でも入りやすく、居心地よくすごせる、いつも行くお店」にシフトしていっているのだなと感じました。
4人掛けの席に1人で座り、ゆっくりモーニングを食べたのち、スマホを眺めながらコーヒーを飲む。並んで注文するセルフオーダー式のカフェチェーンや、カウンター席で食べるファストフード店にはないゆとりが、そこにはありました。
(大木奈 ハル子 : ブロガー・ライター)
09/07 08:00
東洋経済オンライン