元メーカーのクレーム対応→コンサル転身の事例

ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事

自分の経験が、他の人とどれだけ違うか確認して、その経験をどのようにしたらコンサルタントとして活かせるのか考えていきましょう(写真:KiRi/PIXTA)
前回の記事(経験ゼロでも「経歴の棚卸し」でコンサルになれる)では、コンサルタントになるには「ニッチ」な強みを見つける必要があることをお伝えしました。今回は、実際にコンサルタントとして活躍するための準備や「ナンバーワンニッチ」の見つけ方を、林田さんの著書『ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事』から一部引用・再構成してお届けします。

コンサルタントとしての第一歩をはじめる

コンサルタントは、クライアントとなる企業の業績が良くなることが、自身の成果につながります。業績が向上することや会社の人事制度が整うこと、安定した経営ができるようになること、会社として成長し続けることをクライアント企業と一緒になって考えます。

顧問先企業のメンバーと、ともに汗をかいてやっていくことが何より喜ばれる仕事の仕方なのです。今まで経験してきたそれぞれのスキルを見極めて、どうやって自分のスキルを活かせるかを考えましょう。

どのようにすれば、お客様からも喜ばれて、自分もやりがいを持って仕事に取り組むことができるか、そして、会社員として働いていたころと同じ、またはもっと高い金額で、自分の知識をお金に換えることができるかをお伝えしていきたいと思います。

自分の経験が、他の人とどれだけ違うか確認して、その経験をどのようにしたらコンサルタントとして活かせるのか考えていきましょう。そのうえで、誰でもスタートできるコンサルタントの基礎を学んでデビューすれば、お客様から喜ばれるコンサルタントになれることは間違いありません。

まずは一社お客様を見つけるために、準備を始めましょう。

会社を作る際には会社名を考える必要があります。個人事業主として活動する場合は、屋号を考える必要があります。屋号とは会社名と同じですが、株式会社や合同会社がつかないタイプの会社名です。たとえば林田商店とか、林田コンサルタントグループとか、自由につけることができる名前です。

その際には、商標を確認して名前を付けましょう。商標をチェックするサイトが特許庁にありますので「J-Plat Pat」特許情報プラットフォームで検索します。まずはこのページでチェックして、自分で考えた商標と似た名前がないか、確認しましょう。

名前を考えて名刺やパンフレットを作ったあとに、他の企業がすでに使用している名前や類似した名前だったために、名前を変えるように言われてしまうケースもあります。

「ナンバーワンニッチ」という考え方

準備を始めると同時に進めてもらいたいのが、ナンバーワンニッチを探すことです。ナンバーワンニッチとは、狭い範囲で一番になることです。

たとえば、「経営コンサルタント」だと、範囲が広すぎて競争相手もたくさんいます。これが、男性エステサロン向けの経営コンサルタントだとどうでしょうか? 範囲を狭めることによって、競争相手も減りますし、専門特化することで強みが際立ちます。

Mさんは、コミュニケーション力向上のコンサルタントとして仕事をしていましたが、ネイルサロン専門のコミュニケーション力向上コンサルタントとして、ターゲットとなるお客様を絞り込み、ネイルサロン専門の冊子でコラムを書いたそうです。

そうすると、ネイル業界のコミュニケーションならMさん、と評判になり、今ではネイルサロンだけではなく広くビューティー業界からの依頼が来ています。

自分の強みと得意分野は何かを明確にして、その強みを使って誰にどのようにアピールしていくかが重要になります。

自分が今までしてきた経験も、業界を変えるとほかの人にはできない特殊なスキルになることがあります。今まで積み重ねてきた経験のなかで、まったく違う業界の人から「すごい!」と言われた強みや得意分野はないでしょうか?

2つの軸を組み合わせてナンバーワンニッチを探す

ポイントは、2つの特殊なニッチを掛け合わせて考えることです。まったく違う2つの分野のニッチな特技をもっていないでしょうか?

たとえば、会計士の資格を持っていて、食品メーカーでラーメンの研究をしていた方は、ラーメン店専門の会計コンサルタント。

たとえば、ホテルでサービスのプロとして仕事をしていて、手話がネイティブ並みにできる人(手話クラブに入って10年など)は、サービス業に向けた、身体的に不自由さを持った方向けのサービスをアドバイスできるプロフェッショナルアドバイザー、などです。そのような、2つの特殊なキャリアや特技を掛け合わせるとナンバーワンニッチが完成します。

キャリアは、よく「専門性」と「マネジメント」の二軸で説明されます。専門性の軸は、特定の分野や技術における深い知識や技能を追求することを意味します。

エンジニアであればプログラミング言語やシステム設計。医師であれば特定の医療分野や治療技術に関する専門知識を極めることが該当します。

専門性を高めることで、その分野における専門家としての地位を確立し、より高い価値を提供できるようになります。

マネジメントの軸は、チームやプロジェクト、組織を効果的に管理し、リードする能力を発展させることを指します。この軸では、人材の育成、プロジェクト管理、戦略的思考、リーダーシップといったスキルが求められます。

「専門性」と「マネジメント」の二軸にこだわらず、2つの軸という意味で広く考えて自分のニッチな部分を探しましょう。「専門性」と「専門性」の掛け合わせでもいいですし、「専門性」と「ちょっと変わった趣味」でもOKです。自分が他の人と違うところを探すと、ニッチな部分の発見につながります。

ナンバーワンニッチな自分の表現方法

自分のことを伝えるときにありがちな表現にならないために、ナンバーワンニッチを意識していただけたらと思います。私が今までに出会った、ナンバーワンニッチの事例をご紹介します。

■「経営コンサルタント」をナンバーワンニッチな表現にしている事例

大学時代から環境問題に取り組み、環境NPOの理事も務めているEさんは「サステナブル経営ナビゲーター」というニッチなネーミングで活躍しています。

Eさん曰く、東大卒の経営コンサルタントは数多くいるとのこと。私からすると、東大卒というだけでもかなり印象に残りますが、さらに環境問題にも詳しく、「サステナブル経営」というあまり聞かないワードを使っています。

Eさんが会社を立ち上げたときは、環境に詳しいコンサルタントが今ほど多くいなかったそうです。経営コンサルタントのスキルもあるうえに、環境にも詳しいナンバーワンニッチなご自身の表現方法をお持ちです。

■銀行出身者のナンバーワンニッチな事例

銀行にお勤めだった人が、経営コンサルタントを目指すことは比較的多いです。金融業界出身の経営コンサルタントだと、ありふれている印象を受けます。

子ども向けに金融教育を提供する「金融教育コンサルタント」の肩書を使って活動を始めた方がいます。

今後金融教育が必要になる学校教育現場で、金融教育やスタートアップ支援を行うためのノウハウを提供しています。

■元メーカーのお客様対応担当者の事例

お客様対応窓口の担当者は、日々お客様からの声やクレームを受け取ります。自分自身は会社の顔としてお客様に向き合わなければなりません。Qさんはその現場で30年の経験をお持ちです。

日々受けるお客様の声を本社にレポートし、お客様のご意見に対応する方法をコンサルティングメニューにして、クレーム対応コンサルタントとして独自のノウハウを提供しています。

どの事例も、過去の経験と自分の珍しい趣味や、やりたいことを掛け合わせているのがポイントです。キャリアの2つの柱を持つ優位性はよく言われていますが、そのような考え方と同じです。

キャリアの二軸とは、一般的には「専門性の軸」と「マネジメントの軸」を指すことが多いですが、ここで言うキャリアの2つの柱は、一般論にとらわれず、過去のキャリアや経験から考えてください。

ぜひ、みなさんもご自身の本当の強み「ナンバーワンニッチ」を見つけて、その強みを活かせるコンサルタントの仕事にチャレンジしていただけたらと思います。

ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事

(林田 佳代 : ソフィアコミュニケーションズ代表取締役)

ジャンルで探す