経験ゼロでも「経歴の棚卸し」でコンサルになれる

キャリア

「キャリアの棚卸し」であなたの「ニッチ」な強みを見つけよう(写真:Ushico/PIXTA)
前回の記事(50代で「ニッチな部分で稼ぐコンサル」になる方法)で、コンサルタントは人生や定年後の生きがいを見つけられる、一生モノの仕事であることをご紹介しました。今回は実際にコンサルタントとして活躍するにはなにが必要か、自分の強みとはどんなことか、林田佳代さんの著書『ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事』から一部引用・再編集してお届けします。

コンサルに学歴は不要です

コンサルタントと言えば、大手のコンサルティングファーム出身者しかできないのではと思われるかもしれませんが、そのようなことはまったくありません。

現在活躍しているコンサルタントの学歴やキャリアもさまざまです。お客様から喜ばれて、次もお願いしますと言ってもらえるかどうか、これがコンサルタントとして長く続くかどうかの秘訣です。

学歴に関係なくコンサルタントとして活躍されている方はいます。自分の経歴の棚卸しをしっかりとして、今までの経験とスキルを活かして活動しています。

学歴を作りたいと思ったら、それも可能です。全国の大学院では社会人大学院生を多く受け入れています。自分のキャリアの軸が決まったら、その軸をテーマに社会人大学院生になって学ぶのもいいかもしれません。

学歴は不問ですが、常に情報を収集して学び直しを行うスキルはコンサルタントにとって必要なスキルと言えます。

「ニッチ」の意味は、特定の小さな市場や活動の領域ですが、「ニッチとは具体的にどのようなことか」を考えるトレーニングとして、いくつか事例を交えて解説します。

たとえば、とても珍しい趣味や特殊な興味を持っていて、それについての商品が一般のお店に売っていないとします。その場合、お客様はその商品を販売しているお店を探してそこに問い合わせをするのではないでしょうか。このような、特定の小さな市場をニッチ市場といいます。

一般的ではないアニメのグッズを売っているお店は、ニッチ市場をターゲットにしていると言えます。このお店は、一般的なアニメファンよりも、さらに熱心な少数派のファンを対象にしています。

工場の部品という例で考えてみましょう。この部品は非常に特殊で、使われるのは特定の産業や特定の機械に限られています。他の多くの工場では生産されていません。この部品を必要としているお客様は、その工場に注文するしかないわけです。これが「ニッチ市場」です。

大阪のある町工場の例ですが、おむつの製造機械の世界シェア3位というニッチな部分を市場にし続けている会社があります。この会社は、世界シェアナンバーワンを目指して、頑張っています。

この会社の人たちは、全世界へ機械の修理に出張するため、英語力も交渉力もグローバルスタンダードです。まさに、どこにいても、どのような状況でもニッチな強みがあると、世界で活躍できるといういい事例だと思います。

大規模な市場ではなく、特定の製品に特化した小規模な市場で勝負をするのが、ニッチ市場で仕事をするということなのです。

このようなニッチ市場は、大きな市場に比べて競争が少なく、その分野に特化することで安定した収益を確保できる場合があります。また、専門知識や技術が求められるため、その分野での専門家としての価値も高まります。

簡単に言うと、ニッチとは提供するサービスや商品が市場の小さな部分をおさえ、そこで強みを発揮している状態のことを指します。この考え方は、他の多くの業界にも当てはまる便利な考え方です。

このような考え方を参考にして、自分自身の強みとニッチな部分を発見しましょう。

キャリアの棚卸しをしよう

私の会社には、さまざまな年齢、性別の人がコンサルタントとして登録をしています。専門分野を持っていれば年齢は関係ありません。今までの社会人経験のなかで、他の人にはない、ご自身の専門分野は何でしょうか。探せばきっといくつか出てくるはずです。

たとえば、現代は情報セキュリティに関する知識が進化し続けており、最新の情報セキュリティを知っているコンサルタントは年齢に関係なく、企業からのニーズが高いです。企業のなかで情報セキュリティ担当者だった人はそれがご自身のスキルとなるのです。

他にも、ホテル業界の人材育成をずっと担っていたので接客業の会社のホスピタリティを上げることが得意であるなど、それぞれの専門分野を持っている人は活躍の道がひらけています。

業界が変われば専門分野も変わります。自分のいた業界ではない仕事をしてきた人たちと話をすることが気づきのきっかけになります。

また、ご自身が趣味で学んでいた知識がコンサルタントとして活きてくる事例もあります。このあと、活躍しているAさんの事例を紹介しますので、コンサルタントの仕事をイメージしていただけたらと思います。

まずは、ご自身のコンサルタントの要素チェックをしていただき、その後どのようなタイプのコンサルタントが合っているかを見ていただきたいと思います。

(画像:『ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事』より)

このチェック表は、キャリアの棚卸しの緊急度を確認する表です。

該当の数が多い人ほど早くキャリアの棚卸しをして、次のキャリアを考えたほうがいいです。ぜひ、ご自身でチェックしてみてください。

業界が変われば強みも変わる

Aさんの事例を紹介しましょう。Aさんはセキュリティコンサルタントとして全国各地を飛び回っている超人気コンサルタントです。セキュリティに関する専門知識を持っているだけではなく、地方自治体におけるセキュリティ対策にも詳しいというニッチな専門分野を持っています。大学卒業後、大手のデータ通信会社に就職、社内での競争も激しかったので懸命に仕事をしました。国内・海外のサーバーの設計構築や海外での研究開発などを経験しました。

ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事

20年以上も、その地域や会社の状況に合わせたシステム基盤構築、専門技術による地域活性化を手掛けてきました。そこでの経験を活かして、現在は、情報基盤構築支援やマイナンバー対応支援コンサルティング、セキュリティ強靭(きょうじん)化対応支援コンサルティングなどをしています。まさに、会社員時代の経験をコンサルタントとして活かしている事例なのです。

現在、Aさんは地方自治体の情報セキュリティ担当部門をお客様として、全国各地でセキュリティに関するコンサルティングを行っています。Aさんの仕事のやりがいは、地方に行くことによって地域に貢献できている実感を得られることだそうです。

しかし、このように20年以上の会社員の経験があっても、それだけではコンサルタントにはなれません。まずは、お客様がどこにいるのか、お客様が何に困っているのか、どのような課題解決策を提供すれば喜んでもらえるのかをしっかりと把握し、提案し、お客様に喜んでいただかなければ、仕事としては成り立たないのです。

実際に地方都市に行くと、都心との情報格差があり、セキュリティ対策も遅れていることが多いそうです。近年では、たった一回の情報漏洩で会社がつぶれてしまうこともある時代です。Aさんは、「まだまだやることがたくさんあります」と言います。

出張が多く、自宅に戻ることが少ない状況ですが、強みを生かし、やりがいをもって仕事をしています。そんな充実した毎日を過ごしているAさんです。

(林田 佳代 : ソフィアコミュニケーションズ代表取締役)

ジャンルで探す