60〜70歳までの「資産形成期」に何に投資するか

資産運用で儲けを期待する60代女性

60歳から70歳までの資産形成期に何に投資するか、そしてどの程度お金が増えるのか?(写真:nonpii/PIXTA)
年金だけでは心もとないし、老後資金が心配。でも、投資はしてみたいが、いまからでは遅くはないだろうか、そもそもどうやったらいいかわからない…と悩む人も少なくないでしょう。そこで頼藤太希さんの著書『60歳からの新・投資術』から、60歳からできる資産形成術を具体的な例を一部引用・再編集してご紹介します。

まずは60歳までに500万円の投資資産を作る

読者の中には、60歳から初めて投資をするという人もいるかもしれませんが、資産形成は早く始めたほうが時間を味方にできるので有利ですし、まとまった資産があったほうがお金の増えるスピードも増します。

60歳までに預貯金300万〜500万円とは別に、500万円の投資資産を作ることを目標にしましょう。

500万円の資産を作るには「投資信託」がおすすめ。新NISAとiDeCoを優先的に活用し、インデックスファンドまたはバランスファンド(国内外の株式、債券、リートなどに分散投資する投資信託)で積立・分散投資をし、時間を味方につけながら500万円の投資資産を築くことを目指します。

60歳までに500万円の投資資産を作ったら、60歳以降はその500万円の運用に加えて、70歳まで別途、積立投資を行うことで、預貯金とは別に計1000万~1500万円の資産を築けるでしょう。

資産作りのイメージ

(画像:『60歳からの新・投資術』より)

500万円の運用では、70歳までの10年間で800万円、1000万円などと、老後資金を増やすことを目指します。

係数表

(画像:『60歳からの新・投資術』より)

縦の列には運用年数、横の行には運用利回りをとっています。投資資産の金額に係数をかけると、資産がいくらになるかがすぐ計算できます。たとえば、運用利回り5%で10年間運用ができた場合、500万円が「×1.629」で814.5万円になる、というわけです。

70歳までにその資産を増やす①──投資で増やす基本戦略

60歳以降は、60歳までに用意した投資資金を投資に回しつつ、70歳までの勤労収入の一部(毎月1万~5万円程度)の積立投資を10年間続けて行うのが基本戦略です。

仮に10年間、積立投資をした場合、資産総額がいくらになるかをまとめたのが、図表3です。

縦の列には毎月の積立金額(1万円単位)、横の行には運用利回り(1~7%)をとっています。縦と横の交わるところにある金額が「毎月の積立金額が◯万円・運用利回りが△%だった場合の資産総額」です。

早見表

(画像:『60歳からの新・投資術』より)

運用利回りと言われても、どの金融商品に投資をすると、どのくらいの運用利回りが得られるのかイメージがわきにくいかもしれません。

IMFが半年に1度発表している「世界経済見通し(World Economic Outlook)」(2024年4月)によると、リーマンショックのあった2009年やコロナショックのあった2020年などは一時的に成長が鈍化していますが、それ以外の年を見ると、世界経済はおおむね年3~4%程度ずつ経済成長しています。

フランスの経済学者トマ・ピケティ氏は著書『21世紀の資本』の中で過去200年以上のデータ分析の結果「r(投資のリターン)>g(経済成長率)」という不等式が成り立つことを発表しました。

つまり、全世界に投資することで少なくとも年3~4%を超えて、投資のリターンが得られることを示したわけです。もちろん、過去データの研究なので、将来も必ずこうなるという保証はありませんが、全世界に投資することで少なくとも年3~4%を超えて、投資のリターンが得られる可能性はきわめて高いといえます。

60代は何に投資する?

では、60歳から70歳までの資産形成期に何に投資するか、そしてどの程度お金が増えるのか、先の図表2、図表3で紹介したシミュレーションの考え方を利用して、2つの運用例を紹介しましょう。

【前提条件】
・60歳時点で500万円の資産をすべて投資信託・株のいずれかで複利運用
・70歳までの10年間、500万円の運用とは別に、毎月3万円ずつ積み立て投資を行う
・新NISAを利用(運用益非課税)
・投資先はリスク許容度に合わせて3種類想定。目標利回りは3%・5%
【リスクを抑えて堅実に増やしたい人向け】目標利回り:年3%

バランスファンド(4資産均等)
・「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」(100%)→ [ポートフォリオ例①]

リスクを抑えて堅実に増やしていきたいならば、国内外の株と債券に25%ずつ分散投資する「ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)」1本に絞るのがシンプルで簡単です。資産配分は株と債券がそれぞれ50%ずつで、地域配分は国内と先進国の比率も50%ずつ。500万円の一括投資+月3万円の積立投資で利回りが年3%だった場合、資産合計は1091万円となります。

ポートフォリオ例①

(画像:『60歳からの新・投資術』より)

なお、ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型)の運用がスタートした2015年8月から同商品に毎月3万円ずつ積立投資していたら、元本の312万円が約465万円になっていた計算です(2024年3月末時点)。将来も同様にお金が増えるとは限りませんが、ひとつのシミュレーションとして参考になるでしょう。

【やや積極的に運用したい人向け】目標利回り:年5%

全世界株インデックスファンド
・「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(100%)→ [ポートフォリオ例②]

60歳からの新・投資術 (青春新書インテリジェンス PI 697)

やや積極的に運用したいのであれば、「オルカン」こと「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」1本に絞るのがシンプルで簡単です。全世界株とあるので、全世界株に均等に投資していると思われた人もいるかもしれませんが、実際はグラフのとおり、米国だけで約6割を占めています。米国株の配分が多いということを知らない人も多いので、覚えておきましょう。

米国株が多い理由は、やはり米国が世界経済の中心で、長らく大きく成長してきたからです。米国が今後もずっと成長を続けるという保証はありませんが、オルカンでは米国以外の先進国・新興国も約4割組み込んでいるので、米国だけに集中するよりも分散投資効果が期待できます。500万円の一括投資+月3万円の積立投資で利回り年5%の場合、資産合計は1280.5万円となる計算です。

オルカンの運用がスタートした2018年10月から同商品に毎月3万円ずつ積立投資していたら、元本の198万円が約352万円になっていた計算です(2024年3月末時点)。運用開始から約5年半で約1.8倍に増えています。

ポートフォリオ例②

(画像:『60歳からの新・投資術』より)

(頼藤 太希 : マネーコンサルタント)

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