夏の「蓄積疲労」をスッキリ運動・睡眠・食事のコツ

夏も終わり。夏バテをこじらせている人にぜひやってほしい簡単エクササイズを紹介(写真:プラナ/PIXTA)
テレビや雑誌などのメディアで健康情報を発信するトレーナーの坂詰真二さんが、疲れない体、引き締まった体、自信がもてる体を作るメソッドを伝授する本連載。
今回のテーマは「夏後半の夏バテを解消する」です。

今年も全国各地で猛暑日の連続記録が更新されるなど、厳しい暑さが続きましたが、8月後半に入って、それもようやく落ち着いてきました。

一方で心配なのは夏バテ。ここ数年は9月も最高気温が25℃以上の夏日や、30℃以上の真夏日が多いことから、秋バテといってもいいでしょう。

夏バテ、秋バテは直接命にかかわる病気ではなく、暑さがもとで起こる複合的な蓄積疲労です。一般的に短期(急性)の疲労は回復も早いのですが、蓄積疲労は回復に時間がかかります。夏バテも同様に、気温が下がってもなかなか回復しないものです。

こじらした夏ばての原因は体力低下

実は、夏バテの原因として1つ考えられるのが、運動不足による体力低下です。

運動をすると体温が上昇するので、これを避けようとして買い物や散歩などの外出を控えるために、日中の活動量が減るのは致し方のないことです。ですが、それと引き換えに筋力、持久力、柔軟性が気づかないうちに少しずつ衰えていきます。

7月から8月前半に感じる初期の夏バテは、後述する睡眠不足や栄養のアンバランスによるものですが、8月後半から9月の残暑に感じる夏バテ、秋バテは、体力の低下が大きく影響していると思われます。

これを予防するためには、適度な運動で体力を維持することが必要です。

例えば、涼しい電車やバスの中なら座らずにできるだけ立つ、駅やデパートなどの商業施設ならできるだけ階段を使う、比較的気温が下がった日の夕方や夜間には散歩をする、といったことを心がけるだけでも、顕著な体力低下を抑えることができます。

エアコンや扇風機を効かせた涼しい部屋の中で、週に1~2回でも動画サイトやDVDを利用して、ヨガやダンスなどのエクササイズを行えれば、なお良しです。

念のためですが、汗をかかないと運動効果が出ないようなイメージがありますが、それは誤解で、汗の量と運動量やエネルギー(カロリー)消費量の間に直接的な因果関係はありません。

この後に特に衰えやすい下半身の筋肉を鍛えるスクワットを紹介しますので、週に2回、涼しい部屋でやってみてください。

スクワットが終わったら、一緒に紹介するストレッチでクールダウンをしましょう。

運動をするのに特におすすめの時間帯は、夕食から2時間程度経過した夜8~9時頃です。この時間にスクワットなどの筋力トレーニングで交感神経の働きを強めておくと、その後に反動で副交感神経が働いて、夜11~12時頃の入眠をスムーズにしてくれます。

夏バテ・秋バテに効くエクササイズ

■スクワット

①足を揃えて真っすぐに立って手を腰に置いたら、一方の足を半歩下げて、つま先を床につける。

②息を吸いながら3秒かけて、前側の脚に体重をかけ、背すじを伸ばしたまま無理のない位置まで膝を曲げていく。息を吐きながら2秒で元の位置に戻る。

10回反復したら、足を入れ替えて同様に行う。これを3セット行う。

■お尻と太もも裏のストレッチ

①仰向けになって体を真っすぐに伸ばしてから、一方の膝の裏を持って胸に向かって引き寄せ、お尻が気持ちよく伸びる位置で、楽に呼吸をしながら10秒キープする。

②続いて、手をふくらはぎにずらし、膝を軽く曲げた状態で手前に引き寄せ、太ももの裏が気持ちよく伸びる位置で、楽に呼吸をしながら10秒キープする。

これを左右交互に3セット行う。

(イラスト:竹口睦郁)

夏バテの原因、睡眠の問題を解決する

体力低下以外で、夏バテを起こす主な原因は大きく2つに分けられます。1つは睡眠の問題、もう1つは栄養の問題です。

脳と体の活動を低下させて、細胞の修復や再生を促すことで脳や体を回復させるのが睡眠の役割ですが、暑さによって寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなったりすることでその役割が十分に果たされず、それが続くことで脳にも体にも疲労が蓄積していきます。

脳の疲労が蓄積すれば、認知、判断、記憶といった機能に悪影響を及ぼしますし、体の疲労が蓄積すれば、筋肉だけでなく胃腸など内臓の機能も低下しやすくなります。

また、睡眠不足は自律神経のバランスを乱します。

夜間、特に就寝中は心身をオフモードに導く副交感神経が、起きている間は心身をオンモードに導く交感神経が主として働いて、心身を適正にコントロールしているのですが、睡眠が不足すると、この自律神経のバランスが崩れます。

すると夜間になっても副交感神経が働かず、体がオンモードのままで眠気がなかなか訪れず、これがさらに睡眠不足に拍車をかける、という悪循環に陥ります。これが夏バテや秋バテを長引かせてしまうのです。

交感神経と副交感神経の1日の関係(イラスト:CHIWACO/PIXTA)

睡眠不足を防ぐには兎にも角にも、寝つきを良くすることです。夜間は適度にエアコンと扇風機を使い、個人差はありますが快適に感じる24~28℃程度の室温、50~60%程度の湿度にして 、その状態で読書をするなどゆったりと過ごせば、副交感神経の働きが強くなって自然と眠気を催しやすくなります。

冷たい飲み物は交感神経の働きを強めてしまうので、夜間に摂る水分は冷やしすぎないようにしましょう。胃の負担が少なく、かつ大腸からの吸収が速い飲料水の温度は5~15℃程度です。

加えて、就寝前に楽な姿勢で、筋肉に心地よい伸びを感じる程度の強さでゆったりと先ほど紹介したストレッチをすることも有効です。

ビタミンB1を摂ってだるさを解消

夏バテ、秋バテの予防の食べ物というと、鰻を思い浮かべる人が多いことでしょう。

鰻にはタンパク質や脂質に加え、さまざまなビタミンやミネラルが含まれていますが、特に夏バテ予防に効果を発揮するのが、ビタミンB1です。

ビタミンB1は、主に糖質からエネルギーを産生する酵素の働きをサポートする補酵素で、不足するとエネルギーの産生量が低下して疲れを感じやすくなり、あまり体を動かしていなくてもスタミナ切れの状態となります。

またビタミンB1は神経伝達にも関わっているため、不足すると神経の機能が低下し、体のさまざまな場所に悪影響を及ぼします。過度に不足した状態は脚気(かっけ)と呼ばれるものですが、そのほかにも末梢神経や心臓に不具合が起こり、感覚のまひや全身のむくみなどを引き起こします。

ビタミンB1が不足するのは、喉越しのよい素麺や冷やし中華など、炭水化物中心のあっさりとした食事が多くなることが原因です。

「食事誘発性体熱産生」といって、食事を摂るとその栄養素が使われる過程で熱が生まれて体温が上昇しますが、特に顕著に体温を上げるのが、主菜となる肉や魚、豆などに多く含まれるタンパク質です。

ビタミンB1が多い食べ物とは?

暑い夏にタンパク質を避けようとするのは、無意識のうちに体温上昇を抑えようとする生物としての戦略ですが、 これが一方でビタミンB1不足を引き起こす原因なのです。

ビタミンB1は鰻だけでなく、豚肉や牛肉の赤身のほか、大豆やエンドウ豆、米ぬか、海苔、ゴマなど、さまざまな食品にも含まれています。

特定の食品に偏ると、別の栄養素の過不足が起きてしまいますから、「主食、主菜、副菜、汁物」という食事の基本構成を守りつつ、さまざまな食材を摂るように心がけましょう。

筆者作成

(坂詰 真二 : スポーツ&サイエンス代表、フィジカルトレーナー)

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