「業界地図」で探す地方の知られざる有力企業

業界地図

あなたの住む都道府県で、売上高トップの企業はどこでしょうか(写真:metamorworks/PIXTA)

あなたの住んでいる都道府県で売上高トップの企業はどこか——。その質問に読者は答えられるだろうか。8月24日に発売された『「会社四季報」業界地図2025年版』には、全193業界を掲載。これまでの号と同様、国内外の主要業界やニッチ業界の勢力図を詳しく解説した一方、「世界」でも「日本」でもなく、「地域」を対象とした業界地図を初めて掲載した。

低落傾向の近畿経済、産業の新陳代謝に期待

例えば「近畿地方」の地図を見てみよう。もちろん経済の中心は大阪府。2025年の「大阪・関西万博」、2030年の「大阪IR(統合型リゾート)」開業を控え、目下インバウンド需要が旺盛。「うめきた」などの都市再開発も活発だ。

「会社四季報」業界地図 2025年版

ただし中長期のスパンで見ると、近畿地方にかつての活力は乏しい。家電を中心とした製造業の国際競争力低下や工場の海外移転、本社機能の東京移転などが重なり、1970年に約23%あった製造出荷額の全国シェア(近畿経済産業局調べ)は、2020年代には17%弱へと低下した。

一方で、近畿圏には今後成長が期待されるヘルスケア企業の拠点や、次世代エネルギーとして注目される水素の関連技術に強い企業なども多い。万博を契機に産業の新陳代謝が期待されている。

近畿地方の各府県の代表的企業を掲載

では近畿の各府県の代表的企業を北部から順に見てみよう。滋賀県に本社がある製造業で県内売上高首位だったのは、薄型パネル用ガラス大手の日本電気硝子。

戦後にNECから分離・独立した経緯があり、韓国LGや台湾AUOといった顧客を抱えるグローバル企業だ(なおここでいう売上高上位企業は、各都道府県に本社・本店を置く株式会社などを対象に、東洋経済が保有する上場企業・未上場企業の業績データと、東京商工リサーチの業績データを基に選出。売上高は2023年6月期から2024年5月期までの直近決算を対象としている)。

京都府を代表する企業といえば、家庭用ゲーム最大手の任天堂が挙がるだろう。10月には宇治市に、同社の歴史に触れられる「ニンテンドーミュージアム」を開設予定。ゲームファンを中心に県外からの集客効果も期待できそうだ。

兵庫県の製造業首位は鉄鋼大手の神戸製鋼所。1905年設立の名門で、造船業をはじめ地元の重工業を支えてきた。同様に三重県の売上高首位は電装・ケーブルの住友電装。住友電気工業の子会社で、自動車用ワイヤーハーネスのリーディング企業だ。

奈良県創業の工作機械大手

奈良県を代表とする企業といえば、工作機械大手のDMG森精機。1948年に奈良県大和郡山市で創業。2004年に取引先の自動車企業が多い愛知県名古屋市に本社機能を移転したが、2016年にドイツの工作機械大手ギルデマイスター社を連結子会社化したことを契機に、2022年以降は奈良と東京の2本社体制を導入している。

また和歌山県で売上高首位となったのは近畿・中部地方で食品スーパーを展開するオークワ。地方では製造業大手が立地すると、売上高上位にランクインしやすいが、目立った製造業が乏しい県では、食品スーパーなど生活に密着した流通業が上位に入りやすい。

最後の大阪府を代表する企業といえば、地図ではパナソニック ホールディングスを挙げている。関西財界の名門で、大阪府門真市にグループ本社を構える。ただ昨今では中核の事業小会社であるパナソニックの本社機能が東京に移転するなど、徐々に東京シフトを進めている。

近畿地方の各府県の代表的企業を掲載

『業界地図2025年版』では、近畿地方の各府県のその他の売上高上位企業についても掲載。大阪府の売上高首位は総合商社の伊藤忠商事。大阪にはその他にも、各業界の国内最大手で、売上高が数兆円規模の企業が上位に並ぶ。一方、三重県や奈良県、和歌山県といった近畿南部の県では、売上高上位でも数百億円規模の企業が中心。府県での企業規模の格差が鮮明となっている。

日本だけでなく、アメリカや中国の業界も

誌面では近畿地方に限らず、北海道・東北地方から九州・沖縄までの日本全国の地方、またアメリカの製造・運輸や流通・消費、中国など、世界の地域に目を向けた業界地図も掲載している。

なお『業界地図2025年版』の発売に合わせ、業界地図のデジタル版である「業界地図デジタル」が、東洋経済が展開する「会社四季報オンライン」と統合し、会社四季報オンライン上に新設した「業界研究」ページでも、「業界地図」の内容を閲覧できるようになった。

会社四季報オンラインの各地方の「業界地図」では、誌面に掲載できなかった、それぞれの地方に本社・本店を置く上場企業もずらっと掲載。株式投資や就職・転職活動などの際、あなたの身近に存在する有望企業を見つけ出すのに、ぜひ活用していただきたい。

(許斐 健太 : 『会社四季報 業界地図』 編集長)

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