何もやらない人が口にしがち「ヤバい言い訳3つ」

できたことノート

「できたこと」を見るということは、「小さな成功体験」を確認するということ(写真:utah_51/PIXTA)
何か明確な心配ごとがあるわけでないのに「なんとなく不安な人」も多いのではないでしょうか。
「行動を変える専門家」の永谷研一さんは、「特にいま、仕事や子育てで頑張っているのに、『誰からもほめられない』『自分は何もできてない』と感じている自己肯定感の低い人は多い。そうした人こそ、心を整え、ほんの少しずつでも『前に進んでいる実感』を持つことがとても必要」と話します。
その日の「できたこと」を振り返ることで、自分を深く知り、自己肯定感を上げる科学的なメソッドを紹介する書籍『1日5分 書けば明日が変わる できたことノート』をもとに、3回にわたって解説します。

言い訳が「自己イメージ」を下げる

私はさまざまな企業や学校で、「目標に向かって行動を習慣化する」人材育成の仕事をしています。そのなかで、行動する人としない人の違いをたくさん見てきました。

私の研修では、受講生は行動計画を立てるのですが、それだけで終わりません。

企業の研修では、受講生は全員、研修を終えて職場に戻ったあとに、私が考案したITシステムを使って、「計画した行動ができているかどうか」と、「行動について内省した文章」を記録していきます。すると各人のデータが大量にたまっていきます。

私はこのデータを、いろいろな角度で分析しています。

たとえば、「計画を立てるだけで行動をしない人」は、実際にどんな言い訳をすると思いますか? ここでは、代表的なものを紹介しましょう。

行動しない人の言い訳トップ3

① 忙しくて時間がなかった(時間不足)
② 自分のせいではない(他責)
③ 計画が悪い。来週からがんばる(先延ばし)

こうした言葉をつい日常的に使っている人は要注意。行動につながらなかった本当の理由を深く考えておらず、当たり障りのない表面的な思考をしているだけかもしれないからです。

また、言い訳が思い浮かんだとき、それを口に出すと、自分の言い訳を耳からも聞くことになります。

「思う」ことに「聞く」ことが重なり、「できない」という自分を否定するような自己イメージ(セルフイメージ)が固定されてしまいます。

これは、専門的には「ラベリング効果」と呼ぶ、自分へのラベル付け、レッテル貼りです。つまり、言い訳することで、知らず知らずのうちに「自分はできない人間なんだ」と決めつけてしまうのです。

ただ、よくないと思ってはいても、人はつい言い訳をしてしまいます。その原因は何なのでしょうか?

自分の本音を隠す「心のフタ」

「忙しかったんだよ」「私のせいじゃないし」「計画が悪かったんだ」

こうした言い訳は、固定観念や思い込みからきていることも多々あります。

「忙しい」と思い込んでいるだけで、優先順位をつけるなど、工夫すれば時間をつくれたかもしれません。「自分のせいじゃない」と決めつけていますが、早く周りの人に相談すればよかったのかもしれません。「計画が悪い」と断言しているものの、計画を変える方法があったかもしれません。

問題は、そうした思い込みに陥っている自分に気がついていないこと。だから言い訳を重ねて、そんな自分を正当化しようとしてしまうのです。

では、なぜそうしてしまうのでしょうか?

それは自分の「本音の感情」とのアクセスを遮断しているから。それに深く関わっているのが「心の中にあるフタ」の存在です。

少し詳しくお話ししましょう。

人間が生まれたときには、自分に対しての思い込みや決めつけはほとんどないはずです。誰でも最初は、創造性や好奇心にあふれていて、気持ちのおもむくままに遊び、毎日がワクワクだったことでしょう。

それが、大きくなるにつれ、社会に適応するために、「本音をさらけ出して無邪気に」というわけにはいかなくなります。また、勇気を出して行動したら、逆に痛い目にあったこともあるでしょう。

こうした経験を経て、私たちは少しずつ自分の「本音と建前」を上手に使いこなすようになります。社会経験の中で「うまく生きるすべ」を身につけていくのです。

「私はこうあらねばならない」

しかし、このように社会性が身につく一方で、自分の行動をよい方向に変えていくエネルギーとなる「本音の感情」をどんどんしまい込んでいくようになります。そして、「私はこうあらねばならない」と思い込んでしまいます。

実は誰の心の中にも「フタ」があります。人はうまく生きるために、「純粋な心」の上にフタをして、図の三角形の「外に見えている自分」を使って過ごしています(※外部配信先では閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。

「心のフタ」の下にあるもの

(図:『1日5分 書けば明日が変わる できたことノート』より)

言い訳は、まさにこの部分から出てくるもの。

ヘタに「純粋な心」をさらけ出してしまうと、自分が傷つくことになりかねません。「心のフタ」によって、私たちは傷つきやすい純粋な心を守っているのです。

「言い訳はやめよう」といっても、それが難しいのは、言い訳とは、無意識のうちに自分の「純粋な心」を傷つけないために表れる「自己防衛本能」だからです。

ですので、一概に言い訳が悪いことだとはいえません。ただ、「言い訳している自分」に気づければいいのですが、多くの場合、本人は言い訳していることにさえ気づいていません。

つまり、本来は柔らかく傷つきやすい心を守るための「心のフタ」が、他方では自分の「いい方向への変化」を阻んでしまっているのです。

この心のフタを開けられるか

もう少し詳しくいえば、「心のフタ」は「思考停止に陥る原因」になります。深く考えず、本音に触れず、とりつくろってしまう。すると周りにいい顔をするだけの「作文」のような思考になってしまいます。

そのため、行動をいい方向に変えようとは思わず、いつまでもよくない習慣を続けてしまったりします。

キーになるのは、「どうすれば、この心のフタを開けることができるか」ということ。フタが開けば、その下にある純粋な心にアクセスでき、自分に対して正直になることで、「いい方向への変化」を促すことができます。

その方法とは、「自己肯定感が高い状態をつくる」ことです。

ご存じの方も多いと思いますが、自己肯定感が高い状態とは、「自分は大切な存在であり、価値ある人間だ」と自分で自分を認めている状態のことをいいます。

自己肯定感を高めると、欠点も含めてありのままの自分を受け入れ、「心のフタ」を開けられるようになります。そうして自分の「本音の感情」に上手にアクセスできるようになると、何か行動を起こすときに、万が一うまくいかなかった場合のリスクなども含めて、状況を客観的に受け止められるようになります。

「失敗しても、絶対に挽回できる」

「万が一、傷つくことがあっても、なんとかなる」

と、前向きに考えることができるようになるのです。

たとえば、仕事の壁にぶつかったとき「この仕事は失敗できないぞ。嫌だな」と考えているうちは苦痛でしかありません。しかし「この仕事がうまくいくと、こんないいことがある」と考えられると、ワクワクしてきて、困難にも立ち向かう勇気が湧いてくるようになります。

「人の行動を変える」ことを専門にしている私が、自己肯定感を重視する理由はここにあります。自己肯定感が高い人というのは「行動できる人」だからです。行動が変わらなければ、何も始まらないのです。

自分の成長を阻んでいる「心のフタ」を開けるためには、自分を肯定的に見ている状態が必要だ、ということはわかっていただけたと思います。

次に考えなくてはいけないのは、「どうすれば、自己肯定感が高い状態をつくれるか」ということ。この状態は、実は誰でも簡単につくることができます。そのためにするとよいのは、

毎日、具体的な「できたこと」に着目する

ということです。

言い訳思考にはまらないために

言い訳は「できなかったこと」を見ているので、「ダメな自分を見つめる思考」だといってもいいでしょう。うまくできたことに関して、普通は言い訳したりしないですから。

そこで、着目するものを「できなかったこと」から「できたこと」に変える。最初の段階から、言い訳思考にはまらないために、「とっかかり」を変えるのです。

「反省しない」「言い訳しない」というと、単なる精神論になってしまいます。でも、「できたこと」だけ見るようにすれば、最初から反省も言い訳も必要なくなります。

「そんなにできたことなんてないよ」と言われるかもしれませんが、小さな「できたこと」であれば、1日の中で1つや2つ、必ず見つけることができます。

1日5分 書けば明日が変わる できたことノート

「机の上をきれいに片づけた」「いつもより野菜を多く食べた」「駅でエスカレーターじゃなく階段を使った」「他愛もない話で相手が笑ってくれた」など、ちょっとしたことで構いません。

「できたこと」を見るということは、行動科学の観点でいえば、「小さな成功体験」を確認するということ。そうなると、あなたの毎日が何かしら「うまくいったことの積み重ね」であることを実感できます。

「実は知らないうちに成功体験を積んできた」ということに気づき、「なかなか自分もやるじゃないか」と自分に思い込ませることができます。すでにあなたは、いろんなことが「できている」はずなのです。

このように、「できたこと」に着目するクセをつけることは、セルフイメージをどんどん上げていくことにつながります。

(永谷 研一 : 行動科学専門家、発明家、株式会社ネットマン代表取締役社長)

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