仕事に忙殺される起業家がつい見失う2つのこと
君は自分の人生を生きているか?
深く理由を考えることなく、惰性で生きている人は多い。
ただ他人の真似をし、流されるままに生き、自分で道を切り開かずに、誰かが敷いたレールの上を進もうとする。
それが本当の幸せにつながっていないことに無自覚のまま、「誰かがそう言っていたから」という理由だけで、借り物の人生に何十年もの時間を費やしてしまう。
「つまらない考えにとらわれず、夢を追い求めて、自分が本当に望むような生き方をすればよかった。たった一度の人生を無駄にしてしまった」
いつか死の床についたとき、そんな後悔の念に駆られるのは残念なことだ。
だからこそ、何をすれば幸せになれるのか、人生でする価値があることは何かについて、自分の考えをよく整理しておかなければならない。
この本は、そんな僕の考えをまとめたものだ。
僕はもともと、本を書くつもりはなかった。書いてほしいと頼まれても、いつも断っていた。自分のウェブサイトに記事を書くだけで満足だった。
ところがあるとき、僕のヒーローで著名作家のセス・ゴーディンから電話があった。新しい出版社を立ち上げるので、最初に刊行する本の著者になってほしいと言われた。
もちろん、二つ返事で承諾した。
セスからは、短く、マニフェストのような本を書いてほしいという注文があった。
そこで僕はこの本を11日間で一気に書き上げ、そのまま原稿を渡した。『エニシング・ユーウォント(好きなことをやれ)』というタイトルを決めたのは彼だ。
起業の基本とは何だろうか?
この本は現在も売れ続けていて、多くの起業家に影響を与えている。
ここには、自分にとって当たり前のことを書いただけだ。だから、それが熱狂的に受け入れられたのには正直驚いた。
でも、自分にとっては当たり前のことでも、他人にとっては驚くべきということもある。
意外にも、この本はビジネスの経験が豊富な人から受けが良かった。「忘れかけていた初心を思い出させてくれる」ということらしい。
経験の浅い起業家からも、ベテランの起業家からも、「基本に立ち返るのに役立つ」という感想が寄せられた。
特に、次の2点の大切さをあらためて実感できるのだという。
1 起業の究極の目的は幸福だ 利益やサービスの追求さえも、突き詰めればそれは自分や顧客を幸せにするためのもの。だから、幸福を最優先させよう。たとえそのことで利益が減ったとしても、自分と顧客を幸せにすることをビジネスの中心に据えること。
2 他人の真似などいらない 自分の会社では、自分で自由にルールをつくれる。思いどおりに夢を叶え、小さなユートピアを創造できる。他の企業がしていることは無視して、自分にとって理想的な世界はどのようなものかを考えよう。
この本では、僕がスモールビジネスを立ち上げ、成長させることに費やした10年間に育んだ哲学を語っている。
そこにはいくつかの共通したテーマがある。主なものをここに紹介しよう。
⚫︎「ビジネス=お金」ではない。ビジネスで一番大切なのは、他者や自分にとっての夢を実現すること。
⚫︎起業は、自分を成長させながら世界をより良い場所に変えていくための、すばらしい方法になる。
⚫︎会社をつくるとは、ユートピアをつくること。そこでは、理想の世界をデザインできる。
⚫︎決してお金のためだけに何かをしてはいけない。
⚫︎自分の利益ばかりに目を向けず、誰かの役に立つことを考えるべき。
⚫︎成功とは、改善と発明を繰り返すことによってもたらされる。うまくいかないことを繰り返してもたらされるのではない。
⚫︎事業計画どおりには物ごとは進まない。世の中の本当のニーズは、実際にビジネスを始めるまでわからない。
⚫︎お金がない状態からビジネスを始めることには利点もある。誰かを助け始めるのに、資金はいらない。
⚫︎あらゆる人を喜ばせることはできない。堂々と対象を絞ろう。
⚫︎自分がいなくてもビジネスが回るようにしよう。
⚫︎何をするにせよ、本当の目的は幸せになること。ハッピーになれることだけしよう。
(デレク・シヴァーズ : CDベイビー創業者、ミュージシャン)
06/27 14:30
東洋経済オンライン