24年最新版「一般入試の志願者が多い大学」TOP50

一般選抜の志願者数ランキングで11年連続でトップを維持している近畿大学 (写真:ましゃいこ/PIXTA)
18歳人口が急減する日本では、私立大の半数以上が定員割れで、赤字も4割に達する。一方、研究成果の社会還元など大学の新たな役割も期待されている。では、そんな中で勝ち組となる「本当に強い大学」はどこか?
『本当に強い大学2024』は、入試から教育・研究、就職まで今の大学がわかるテーマを徹底取材し、1冊にまとめた「週刊東洋経済」の臨時増刊号だ。その誌面から、注目記事をお届けする。

本当に強い大学2024 (週刊東洋経済臨時増刊)

学習指導要領が切り替わる前年の入試は、国公立大は志願者が減少し、私立大も安全志向から難関大の志願者が減るのが一般的だ。新たな学習指導要領で学んだ受験生対象の入試に変わるため、浪人は不利との思いからだ。

ところが2024年度入試は、これに該当する年にもかかわらず、国公立大志願者は増加し、難関私立大の人気も下がらなかった。大学入学共通テストは旧課程履修者に対する経過措置があり、多くの私立大が入試方式を変えないと発表していた。このため、入試が大きく変わらないと教員と生徒が知っていたことが理由だ。

私立大の志願者は4年連続で減少してきたが、難関私立大を中心に志願者が増加したことから、主要100大学の集計値は前年を上回った。残りの大学の集計を待ちたいが、24年度は志願者が大幅に減少することはなさそうだ。

難関校は前年上回る

個別大学の出願状況を見ると、最難関クラスでは早稲田大学(7位)が減少したが、東京理科大学(14位)、慶應義塾大学(20位)、上智大学(27位)は前年を上回った。予備校関係者は言う。

「大学にこだわらず総合型や学校推薦型選抜を活用して最小限の努力で決めたい層と、一般選抜まで頑張って難関大を目指す層に二極化している。後者の受験生は、先行きを見通しにくい社会を生き抜く力を大学で養いたいと考える傾向が強いようです」

前出の最難関クラス大学に続く難易度帯の大学も志願者が増加傾向にあり、首都圏では明治大学(3位)、法政大学(5位)、青山学院大学(17位)。近畿圏では立命館大学(6位)、関西学院大学(13位)、同志社大学(16位)の志願者が増えている。中でも注目なのは、18歳人口の減少が続く中、4年連続増の関西学院大と3年連続増の明治大だ。

志願者数ランキングで「上位の2校」は安定

関西学院大は、21年度に理工を理、工、建築、生命環境の4学部に改組し、同年から入試改革を続けてきた。また、明治大は、早稲田大が共通テストと大学独自の記述試験を組み合わせた国立大型の入試方式の導入を進めるのに対し、オーソドックスな3教科の私立大型の入試を続けていることが、私立大専願層を中心に志願者を引きつけているようだ。

志願者数ランキングでは、上位2校は安定している。近畿大学は11年連続でランキングトップを続け、千葉工業大学は4年連続で2位の座をキープしている。4位の東洋大学は前年の大幅志願者減の反動もあり志願者を大きく増やし、対照的に8位の日本大学は大幅な志願者減となった。「志望者層が重なる東洋大と日本大は、一方の志願者が増えるともう一方は減る」(予備校関係者)という。

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次に学部系統別の志願者状況を見ていこう。

定員規模が小さく、志願者のわずかな変化で増減率が大きく変わる宗教系を除くと、志願者が最も増えたのは17.4%増の情報・メディアだ。デジタルやグリーンなど成長分野を担う人材養成のために文部科学省が進める「大学・高専機能強化支援事業」の一環で学部・学科新設が進んでいることが志願者増の一因となっている。グリーン分野を担うも7.3%増と高人気。情報・メディアや農に受験生が引っ張られたためか、理・工は1.9%減だ。

文系では外国語が増加

文系で注目したいのは、外国語が14.3%と大きく増えていること。コロナ禍で人気が下がった学部系統だが、観光(6.9%増)や国際(2.8%増)とともに志願者が戻ってきている。他の系統では、(0.5%増)、(1.0%減)、経済(1.7%減)、経営(1.9%減)といった社会科学系の出願状況は落ち着いている。

すべての学部系統の中で、志願者が最も減ったのは家政・栄養(17.3%減)。女子の学部志望動向が社会科学系や理系学部に移りつつある影響を色濃く反映している。家政・栄養の減少は女子大の出願状況に影響し、私立大全体の志願者が増加する一方、主要女子大に限ると前年を7%程度下回った。女子大が置かれた厳しい環境を象徴する数値といえる。

(井沢 秀 : 大学通信 取締役情報調査・編集部部長)

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