京阪電車「開業の地」天満橋駅にいま何があるのか

京阪電気鉄道 天満橋駅 ホーム

京阪電気鉄道の天満橋駅は地下にのりばがある(記者撮影)

京阪電気鉄道の天満橋は、造幣局の桜の通り抜けや、天神祭の船渡御(ふなとぎょ)・奉納花火など「水都大阪」の風物詩の見物に出かけるのに欠かせない駅だ。

駅直結の商業施設「京阪シティモール」、京阪ホールディングスが本社を置く「OMMビル」など、京阪グループにとっても一大拠点となっている。

京阪本線は大阪の淀屋橋と京都の三条までを結ぶ49.3kmの路線。座席指定特別車両「プレミアムカー」を連結した特急と快速急行が行き交う京阪の大動脈だ。三条から先の鴨東線の出町柳まで乗り入れる。

京阪開業時の「ターミナル」

京阪本線の両端、淀屋橋は大阪市役所、三条は京都市役所と、関西を代表する政令指定都市の中心は徒歩圏内。だが、どちらも地下に駅があって外から電車の姿を見ることができない。大阪側で地下に入る最初の駅が天満橋駅だ。同駅から中之島駅まで、なにわ橋、大江橋、渡辺橋と「橋」が付く駅が続く中之島線も延びている。

1910年4月15日の開業以来、京阪の大阪側の「ターミナル」は天満橋駅だった(開業時の京都側は五条駅)。半世紀以上を経た1963年4月16日に淀屋橋地下延長線が営業を開始、大阪都心部へ乗り入れて地下鉄御堂筋線との接続を実現した。途中駅の北浜は大阪の経済の中心、大阪取引所が入るビルに直結している。

天満橋駅 京阪シティモール

天満橋駅の駅ビルには商業施設の「京阪シティモール」(記者撮影)

天満橋駅の所在地は大阪市中央区天満橋京町1番1号。南北方向に通る天満橋筋が大川(旧淀川)を渡るのが、1935年に架けられた天満橋だ。1970年に橋の上に高架橋が建設されて2層構造となった。

天満という地名は「天満の天神さん」こと、菅原道真をまつる大阪天満宮に由来する。天満橋を渡った先は北区。桜の通り抜けで有名な造幣局本局があるのが天満1丁目、帝国ホテル大阪があるのが天満橋1丁目だ。北区の住所としての天満橋は駅から見てかなり北側に位置する。

駅ビルには商業施設の「京阪シティモール」。スーパーマーケットの「FREST(フレスト)」「成城石井」や、チョコレート専門店「リンツ」などの食料品のほか、「ニトリ」「ユニクロ」「エディオン」「ジュンク堂書店」といった幅広いジャンルの店舗が入る。レストランフロアや屋上庭園からの大川の眺めも自慢だ。1966年の竣工当初は「松坂屋」が入っていた。

京阪天満橋駅 OMMビル

大川の対岸から見た天満橋駅。左が地上駅の跡地に建つOMMビル(記者撮影)

天満橋筋を挟んで東側にはOMMビルがそびえる。かつて地上にあった天満橋駅の跡地に建てられた。線路はその東で地上に出て寝屋川を渡る。道路橋の寝屋川橋東詰から大阪城側へ南下するように架けられているのが京橋。京阪線最多の乗降人員を誇る京橋駅は、京都方へ1.7kmの1駅隣、大阪環状線と交わる地点に設けられている。

周辺にビジネス街と観光地

天満橋駅の周辺は大阪府庁・府警察本部、国の機関が入る合同庁舎、大学・高校や専門学校、病院が集まっている。大阪城公園の京橋口や大手門も近い。宿泊施設は、京阪シティモール隣接の「大阪キャッスルホテル」、「天満橋」「天満橋駅前」の2つのホテル京阪に加え、2024年5月1日にはヒルトンと大和ハウス工業による「ダブルツリーbyヒルトン大阪城」が開業した。

空から見た天満橋駅

天満橋駅の周辺には官公庁や学校が多い。大阪城公園や造幣局も(記者撮影)

天満橋駅を管轄する大阪エリアの清家幸宏駅長は1989年入社。運転士経験が長く、助役、運転指令所などを経て2023年7月に大阪エリアの駅長に就任した。天満橋駅の特徴については「平日は主に通勤の利用が多く、休日は大阪城公園に行く観光の方が目立つ」と説明する。桜の通り抜けと天神祭は駅特有の「ビッグイベント」だが、普段は「川を眺めていると気持ちが落ち着く」場所でもある。

京阪天満橋駅 駅長

天満橋駅を管轄する大阪エリアの清家幸宏駅長(記者撮影)

改札は地下1階で、東改札口は大阪メトロ谷町線の天満橋駅に近い。谷町線は大阪モノレールの大日から、東梅田や天王寺などの大阪中心部を通り、八尾南まで結ぶ約28kmの路線で、天神橋筋六丁目で阪急線、谷町九丁目で近鉄線に乗り換えられる。

ホームは地下2階。いちばん北側の1番線は中之島発の三条・出町柳方面で、島式ホームの2番線は中之島方面、3番線は淀屋橋発の三条・出町柳方面。いちばん南側の4番線が淀屋橋方面となっている。

天満橋駅 4番のりば 扁額

淀屋橋方面の電車が発着する4番線の先端に掲げられた「先覚志茲成」の扁額(記者撮影)

かつての京阪の「悲願」を象徴するものが、4番線の先端に掲げられた「先覚志茲成」の扁額だ。「せんがくのこころざしここになる」と読む。添えられた解説文によると、淀屋橋地下延長線の開通にあたって当時の村岡四郎社長が「創業以来の先輩の宿願である大阪都心部との直結を果すという文意を定め」自ら書いたという。

西へ延びる路線の記念碑

一方、1番線にもモニュメントがあることはあまり知られていないかもしれない。「2001年1月 京阪電気鉄道株式会社」と記された説明書きには「開業90周年を記念するとともに、中之島新線の早期事業化を願ってここに制作した」とある。

造形作家の今井祝雄氏の作品で、レールで作られた六角柱は「中之島新線」から石山坂本線までの京阪の6線を表していて、その上に(旧)3000系車両の軸箱とウイングばねが載っている。内部には「社員一人ひとりのメッセージ」が収められているという。

天満橋駅 90周年記念モニュメント

1番線の「開業90周年モニュメント」(記者撮影)

中之島線は2008年10月19日に開業。「大阪東西軸の要として都市部活性化に大いに寄与することを期待する」としたモニュメントはいま、地下ホームを行き来する電車を静かに見守り続けている。

(橋村 季真 : 東洋経済 記者)

ジャンルで探す