【東京スター銀行】第二地銀を譲り受けて出帆|ご当地銀行の合従連衡史

東京スター銀行<8384>はもともと、1999年に経営破綻した第二地銀の東京相和銀行の営業を譲り受けて誕生した。営業を始めたのは2年後の2001年6月のことだ。

(一社)第二地方銀行協会の加盟資格には、「会員から営業を譲り受ける目的で新たに免許を受けた銀行で、営業基盤が地方的なもの」という加盟資格がある。かつては、なみはや銀行やわかしお銀行などもこの資格で第二地方銀行協会に加盟した銀行だった。

だが、いずれもM&Aにより消滅したり、都市銀行と「逆さ合併」することにより転換したりしている。逆さ合併とは、小さい会社が存続会社となり、大きい会社を合併することをいう。

その点、東京スター銀行は第二地銀協会の加盟資格を活かして成長した稀有な銀行ともいえる。本店を港区赤坂に置き、2021年には創業20周年を迎えた。

創業当初のM&Aにより業容を拡大

営業開始後、東京スター銀行は矢継ぎ早にM&Aを実施していく。2002年には東京信用組合と東京中央信用組合、さらに千葉県商工信用組合の事業を譲り受け、翌2003年には、預金保険法に基づき2002年3月に同機構の全額出資で設立された日本承継銀行が持つ旧中部銀行の営業を分割して譲り受けた。

このほか2004年にかけて、西友系のノンバンクであった東京シティファイナンスグループの3社、りそなグループであった総合住宅ローンを買収し、TSBキャピタル(現・東京スター・ビジネス・ファイナンス)」を発足させた。なお、総合住宅ローンは大阪市中央区に本社があったが、東京スター銀行の子会社として同行の住宅ローン事業における関西の拠点とする意図があった。

2007年以降はM&A攻勢を受ける立場に

積極的にM&Aを仕掛けた東京スター銀行は2007年以降、逆にM&A攻勢を受ける立場になった。まず、同年12月には、プライベート・エクイティ・ファンドのアドバンテッジパートナーズ(東京都港区)がサービスを提供するファンドによって、株式公開買付け(TOB)により買収することを発表した。プライベート・エクイティ・ファンドとは、投資家から資金を集めて未公開企業の株式を取得し、企業価値を高めたあとに売却して利益を得る組織のこと。TOBに応じたのは、米国投資ファンドのローンスターであった。

ローンスターが筆頭株主であった時代はしばらく続き、今度は2013年に、台湾大手の中国信託商業銀行(CTBC Bank)が買収に名乗りをあげた。2014年に金融庁の許可が下り、CTBC Bankの完全子会社となった。

同行内の変革も積極的に推進

東京スター銀行はいわば新興の第二地銀だけに、東京を中心に拠点も積極的に展開し、2000年代後半には当時のサークルKサンクス(現ファミリーマート)と提携し、ATMサービス「ゼロバンク」の出店を続け、勢いもあった。

だが、2012年にはサークルKサンクスとの契約期間が満了し、サービスを終了している。並行するように急拡大した店舗網も統廃合を進めた。現在は第二地銀の中でも支店数が少ない銀行となっている。

さらに、2024年3月から本店を除く13拠点30店を順次キャッシュレス化してきた。本店ファイナンシャル・ラウンジを除くすべての拠点の窓口での現金取扱いを終了している。

支店数が少なく、窓口での現金取り扱いをしないとなると、営業基盤が地方的であるものの、一般の人には馴染みの薄い金融機関とも言える。その馴染みの薄さを払拭するためもあるだろう。同行は働き方改革にも積極的に取り組んでいる。

2017年5月に女性活躍推進法にもとづく優良企業認定マーク「えるぼし」最高位三ツ星に認定され、2021年4月には優良子育てサポート企業の特例認定「プラチナくるみん」を取得した。また2019年には行員の兼業を解禁も実施している。

文・菱田秀則(ライター)

【M&A Online 無料会員登録のご案内】
6000本超のM&A関連コラム読み放題!! M&Aデータベースが使い放題!!
登録無料、会員登録はここをクリック

ジャンルで探す