【外国人社長】オリンパスでまさかの辞任劇、三菱ケミカルグループは在任3年で交代

オリンパスのシュテファン・カウフマン社長兼CEO(最高経営責任者)が10月28日付で辞任した。理由は違法薬物を購入した疑い。約4000社に上る国内上場企業の中でも外国人社長はほんの一握り。外国人社長の起用には日本的慣行や社内のしがらみにとらわれない大胆な経営、グローバル感覚などへの期待が大きいが、過去を振り返ると、功罪が相半ばするのが実情だ。

外国人社長、12年ぶり2人目だった

オリンパスの発表によると、違法薬物購入の通報を受け、捜査機関に報告するとともに、内部調査の結果、取締役会は「カウフマン氏が当社の行動規範とは相容れない行為をしていた可能性が高い」と全会一致で判断。カウフマン氏に辞任を求めたところ、応じたという。当面の間、竹内康雄会長がCEOを務め、指名委員会が後任の人選を進める。

カウフマン氏は2003年にオリンパスのドイツ現地法人に入社。オリンパス本体の執行役員などを経て、2023年4月に社長兼CEOに就いた。違法薬物購入疑惑で辞任となれば、上場企業として由々しき事態だ。

実はオリンパスにとっては外国人社長はカウフマン氏で2人目。2011年、後に「オリンパス事件」と呼ばれた巨額不正事件を質そうとして逆に解任されたマイケル・ウッドフォード社長以来12年ぶりだった。

当時、不正会計の発覚で株価が急落し、オリンパスは上場廃止も検討されるほどの窮地に陥った。事件を受け、コーポレートガバナンスの強化とともに、企業価値向上に向けて事業の選別にアクセルを踏み込んだ。

世界シェア7割を誇る内視鏡を中心とする医療機器分野に経営資源を集中。一方、祖業である顕微鏡などの科学事業、カメラ事業は売却した。こうした一連の改革路線を発展させるため、経営のバトンを託されたのがカウフマン氏だった。

三菱ケミカル、在任3年で事実上解任

今年4月には、三菱ケミカルグループのジョンマーク・ギルソン社長が退任した。在任満3年のタイミングでの交代だったが、事実上の解任とされる。実際、2023年12月にあった社長交代発表の記者会見には次期社長の出席のみで、ギルソン氏の姿はなかった。

ギルソン氏はフランスの素材大手でCEOを務めるなど欧米化学メーカーでの豊富な経営経験が買われ、トップに招聘された。石油化学事業を分離し、同業他社との事業再編などの改革計画を打ち出したが、社内に軋轢が生じた模様だ。

外国人社長には従来の経営の延長線上にとらわれず、新たな発想による経営手腕の発揮を期待する向きが多い。

武田薬品・ウェバー社長、長期政権に

現役の外国人社長として在任10年超となるのは武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長・CEOだ。2019年1月、日本企業によるM&Aとして過去最大の約6兆2000億円を投じてアイルランド製薬大手のシャイアーを買収した。医療用医薬品事業に経営資源を集中する一方、一般大衆薬事業(現アリナミン製薬)を米投資ファンドに売却するなど、事業の入れ替えに力を振るってきた。

自動車用ランプ大手の市光工業では2010年以降、外国人社長が3代連続する。現社長のヴィラット・クリストフ氏までいずれもフランス自動車部品メーカーのヴァレオ・バイエンの出身。2017年にヴァレオがTOB(株式公開買い付け)で市光工業を子会社化(ただし上場は維持)したが、それ以前から両社は協業関係を築いていた経緯がある。

武田薬品工業の本社(東京・日本橋本町)

日産、ソニーはどうだったか?

もちろん、経営トップには毀誉褒貶がつきものだ。1999年にフランスのルノーから送り込まれ、窮地の日産自動車を再生し、剛腕経営者とうたわれたカルロス・ゴーン元会長(社長・CEOも一時兼務)。ところが、あろうことか2018年、金融商品取引法違反容疑で逮捕され、保釈中にレバノンに逃亡したことは記憶に新しい。

日本板硝子も苦い過去を持つ。同社は2006年、自社の2倍の売上規模を持つ世界第3位ガラスメーカー、ピルキントンを買収。大型M&A後の経営を外国人社長に託したが、2代続けて2年ももたずに退任し、経営の迷走で悪化した業績を立て直すのに10年の歳月を要した。

ソニー(現ソニーグループ)で初の外国人トップが誕生したのは2005年。米テレビ界出身で、ソニー米国法人社長などを務めたハワード・ストリンガー氏が本社の会長兼CEOに就き、後に社長も兼務した。

ストリンガー氏の在任期間は2012年まで7年間に及んだが、むしろ停滞を招いた感が強い。ヒット商品が出ず、エレクトロニクス企業としてのモノづくり力の低下への懸念が広がった。日本を代表するグローバル企業の同社だが、外国人トップを待望する声は聞こえてこない。

亀田製菓のトップはインド出身

食品業界で注目を集めているのは亀田製菓のジュネジャ・レカ・ラジュ会長兼CEO。インド出身で、日本の大学で学んだ。ロート製薬副社長を経て2020年に亀田製菓の副社長に転じ、2022年6月から現職に就いている。

半導体材料大手のJSRは今年6月に上場企業の看板を返上した。官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)によるTOBを受け入れ、株式を非公開化した結果だが、これを主導したのはエリック・ジョンソンCEO・社長。2019年にJSR初の外国人トップとして常務から昇格した。日本政府が半導体産業の復権を国策とする中、同氏は次の一手をどう繰り出すのか。

文:M&A Online

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