【G-7ホールディングス】M&Aで「業務スーパー」「オートバックス」に次ぐ新事業創出に注力

食品スーパーの「業務スーパー」や、カー用品販売の「オートバックス」などをフランチャイズ展開するG-7ホールディングス<7508>が、適時開示ベースでは4年半ぶりとなるM&Aに踏み切った。

2024年7月に「業務スーパー」をフランチャイズ展開するボン・サンテ(東京都葛飾区)を子会社化したのだ。

実は、同社は適時開示をしないケースが少なくなく、2023年の酒や食品のネット販売を手がけるミツワ酒販(東京都葛飾区)の子会社化や、2018年の子会社G7リテールジャパン(神戸市)による店舗システム・イー・シー(兵庫県加古川市)の子会社化など、いくつもの事例がある。

公表されている沿革などによると、2006年以降、適時開示を含めた主な案件は14件に達する。

2021年4月に策定した「中期経営計画2025」では、創業50周年となる2026年3月期に、売上高2500億円、経常利益100億円を目指しており、この目標を達成する手段として、投資効率の良い新規事業、新業態の開発に挑戦するとともに、M&Aの推進を挙げている。

「業務スーパー」「オートバックス」に次ぐ投資効率の良い新規事業や新業態は、誕生するだろうか。

各事業で過去最高に挑戦

ボン・サンテの子会社化は、業務スーパー事業の強化が目的で、「各事業が毎期増収、増益を達成し、過去最高に挑戦する」との中期経営計画で掲げた方針に沿ったものだ。

G-7ホールディングスは子会社を通じて、業務スーパーを北海道15店舗、首都圏73店舗、中部圏43店舗、近畿圏34店舗、九州圏26店舗の合計191店舗(2024年3月末時点)を運営している。

一方のボン・サンテは埼玉・千葉・東京・神奈川で15店舗を展開しており、これら店舗を傘下に収めることで、首都圏での業務スーパー事業で多くの相乗効果が期待できると判断した。

ボン・サンテの2023年3月期の売上高は144億6400万円(前年度比21.1%増)、経常利益は200万円(同88.8%減)で、この数字が加われば、業務スーパー事業の増収、増益に少なからずプラスになることは間違いない。

M&Aで業容を拡大

G-7ホールディングスは1975年10月に創業者の木下守氏が、兵庫県加古川市のボーリング場駐車場内でカー用品販売の「オートセブン加古川店」を開店したのが始まり。翌年の1976年6月に兵庫県明石市でカー用品販売の「キノシタ商事」を設立した。

翌月の1976年7月にオートバックスフランチャイズチェーンに加盟し、オートバックスの多店舗展開に乗り出し、現在はオートバックスを中心とする車関連事業(オートバックス、バイク用品のバイクワールド、新車、中古車販売など)が、同社の売上高(2024年3月期1929億9200万円)の4分の1ほど(433億8600万円)を占める事業の柱の一つに成長している。

一方、全社売上高の半分を超える業務スーパー事業(売上高1063億1000万円、業務スーパー、お弁当Kを含む)は2002年に、神戸物産<3038>との間でフランチャイジー契約を結び、参入した事業で、店舗数はボン・サンテが加わったことで、全国で206店舗に達した。

この二つの事業のほかにも、M&Aを通じて多くの事業を取り込んできた。2008年に飲食店や喫茶店、遊技場などを運営する「シーアンドシー」を、2011年に食品の企画、開発、製造を行う「上野食品」を、2015年に食肉、鮮魚、食品、青果の加工販売を行う 「テラバヤシ」を、さらに2020年にはミニスーパー「mini ピアゴ」を運営する 「99イチバ」を子会社化した。

精肉事業の2024年3月期の売上高は211億7400万円で、業務スーパー事業、車関連事業に次ぐ3番目の柱にまで成長しており、ミニスーパーや食品などを含むその他事業(ミニスーパー「リコス」、こだわり食品、農産物直売所「めぐみの郷」、健康体操教室「カーブス」など)も売上高が221億2200万円に達するなど、M&Aで業容が拡大していることが分かる。

G-7ホールディングスの沿革と主なM&A

株主構成の変動も

創業者で取締役名誉会長だった木下守氏が2021年に死去(享年80歳)したのに伴って、G-7ホールディングスの大株主の構成に変動が現れてきた。2022年2月に木下守氏の妻の木下陽子氏が、木下守氏が所有していた株式を相続し、保有割合が7.50%から15.81%に高まり、それまでの第4位の株主から第2位の株主になった。

その後2024年8月には、合同会社KCMが木下陽子氏からG-7ホールディングス株7.04%を取得。G-7ホールディングスでは「KCMは木下陽子氏から株式を現物出資財産として取得し、当社の安定株主として長期保有することを目的としている」と発表した。

G-7ホールディングスが提出した2024年3月期の有価証券報告書によると、2024年3月末時点で木下陽子氏は7.50%を保有する第3位の株主となっている。

また、2024年2月には、米国の投資会社であるエフエムアール エルエルシー(FMR LLC)が、G-7ホールディングス株5.24%を新規保有したあと、同年8月と10月7日に買い増し、保有割合を7.39%に高めた。エフエムアールによると、保有目的は「顧客の財産を信託証書および契約等に基づき運用するため」としている。

さらに、オートバックスのフランチャイズ本部であるオートバックスセブン<9832>が2023年2月にG-7ホールディングス株5%を新規に保有した。保有目的は「関係強化のため」という。大株主の顔ぶれは今後どのように変化するだろうか。

10事業の売り上げと利益を設定

G-7ホールディングスは現在、事業を四つの部門(業務スーパー事業、車関連事業、精肉事業、その他事業)に分け運営しているが、中期経営計画の最終年となる2026年3月期には10の事業に分け、それぞれに売上高と経常利益の目標を設定した。

それによると業務スーパー事業で売上高1000億円、経常利益45億円、オートバックス事業で売上高500億円、経常利益25億円、精肉事業で売上高350億円、経常利益12億円。

このほかにミニスーパー事業やアグリ事業、バイクワールド事業などの七つの事業で、売上高650億円、経常利益18億円を目指す計画だ。

中期経営計画前の2022年3月期と比べると、48.3%の増収、26.9%の経常増益となる。2024年3月期の実績に対しては、売上高で570億円ほど、経常利益で26億円強の上積みが必要となる計算だ。

残りの期間は2年足らず。この目標数字にM&Aが絡む可能性は高そうだ。

G-7ホールディングスの2026年3月期の部門別の業績見込み

文:M&A Online記者 松本亮一

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