【9月アクティビストサマリー】旧村上系が活発化、香港オアシスは日本ゼオンを新規保有

9月は与党・自民党の総裁選と野党第一党・立憲民主党の代表選が関心を呼んだ。自民党総裁選では石破茂氏が高市早苗氏を決選投票の末、逆転勝利で次期首相の座を射止めた。秋の「政局」を前に、アクティビスト(物言く株主)は株式市場でどう動いたのか。

旧村上系、NITTOKUなど3銘柄を保有

石破自民党新総裁の誕生を受けた30日の日経平均株価の終値は3万7919円と前週末比2000円近く下落し、波乱のうちに9月の取引を終えた。月中に4万円台への回復も果たせなかった。

9月に提出された大量保有報告書をもとにアクティビストの動向をみると、新規に5%以上の株式保有があったのは日本ゼオン、NITTOKU、新光商事、三和ホールディングス(HD)、愛知製鋼の5銘柄。

このうち、3銘柄について新規保有が明らかになったのが旧村上ファンド系投資会社のシティインデックスイレブンス(東京都渋谷区)だ。

シティは9月10日、コイル用巻線機メーカーのNITTOKU株を5.15%取得したとする大量保有報告書を関東財務局に提出。その後、1.27%を買い増し、保有割合を6.42%まで高めた。さらにシティはエレクトロニクス商社の新光商事株を5.04%、自動車用特殊鋼の愛知製鋼株を5.08%それぞれ新規保有したことが大量保有報告書で分かった。

保有目的は3銘柄とも「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行うこと」としている。

イリソ電子株の保有割合を下げる

シティは8月に自動車部品のパイオラックス、車載用コネクターのイリソ電子工業の両社株について5%以上新規保有したが、9月中、パイオラックス株を7%超まで買い増す一方、イリソ株は3%台後半に保有割合を下げた。

旧村上系の別の投資会社である南青山不動産(東京都渋谷区)は大豊建設株、三井住友建設株を、エスグラントコーポレーション(同)はアルプスアルパイン株を買い増した。保有割合はいずれも10%を大きく超える。

日本ゼオン株主にオアシスが登場

合成ゴム大手の日本ゼオンの株式を6.29%新規保有したのは香港投資ファンドのオアシス・マネジメント。「ポートフォリオ投資および重要提案行為」を保有目的とする。日本ゼオンは先端素材のカーボンの量産技術で定評を持つ。

オアシスは調剤薬局最大手のアインホールディングス株約15%、ドラッグストア準大手のクスリのアオキホールディングス株約10%を保有する大株主で、業界再編への発展の可能性と絡んでその動静が注目されているが、8月に続き、9月も保有割合の増減はなかった。

シンガポール投資ファンドの3Dインベストメント・パートナーズはアジア系としてオアシスと並ぶアクティビストとして知られる。8月に新規保有した日鉄ソリューションズの株式を1.08%買い増し、保有割合を6.08%とした。日鉄ソリューションは日本製鉄の上場子会社。

国内投資ファンドのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)はサーボモーター大手、山洋電気株の買い増しに伴う変更報告者を4度提出し、保有割合を10%ちょうどまで高めた。新規取得(5.24%)が判明したのは8月だが、矢継ぎ早に追加取得した形だ。

バリューアクト、三和HD株を取得

米投資ファンドのバリューアクト・キャピタルは建材大手の三和シャッター工業を傘下に置く三和ホールディングス株を5.94%新規取得した。

バリューアクトは粉飾決算事件で経営が暗転したオリンパスの改革を主導したほか、セブン&アイ・ホールディングスに総合スーパーなどの小売事業の分離を迫ったことで知られる。

三和のライバルである文化シヤッター株をめぐっては英国ニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドが保有割合を14.24%まで高めた。同じ英国のアセット・バリュー・インベスターズは8月に新規保有した繊維製品のアツギ株を1.1%買い増して6.86%とした。

◎9月:アクティビストによる主な保有状況(赤字は新規保有、大量保有報告書に基づく)

文:M&A  Online

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