【8月 アクティビストサマリー】 旧村上系・海外勢の新規保有が広がる、株価暴落も買い増し

物言う株主(アクティビスト)は株式市場で今や最も注視される存在だ。株式取得が判明すれば、当該企業の株価に少なからず影響を与える。株主提案権を行使し、経営陣に揺さぶりをかけることもしばしばだ。直近8月の主な動きを振り返る。

株価暴落も、買い増しが続く

8月初めの東京株式市場は大暴落に見舞われた。週明け5日の日経平均終値は4451円安の3万1458円と、過去最大の下げ幅を記録した。前営業日の2日も2216円下げており、パニック売りの様相を呈した。

こうした中、アクティビストはどう立ち回ったのか。8月前半に提出された大量保有報告書を見ると、アクティビストと認められる提出者のうち保有割合を落としたケースは見当たらず、いずれも買い増し、もしくは新規保有だった。

3D、日鉄ソリューションズに触手

シンガポール投資ファンドでアクティビストとして知られる3Dインベストメント・パートナーズは日鉄ソリューションズの株式を5.0%新規保有したとする大量保有報告書を8月26日に関東財務局に提出した。「状況に応じて経営陣への助言・重要提案行為を行う」としている。

日鉄ソリューションズは日本製鉄の上場子会社で、金融系のシステム構築に強みを持つ。日鉄ソリューションズに関し、アクティビストによる大量保有報告書の提出は過去10年で見る限り初めてだ。

3Dは自身が筆頭株主の富士ソフトの株式を買い増し、保有割合を22.01%に高めた。富士ソフトをめぐっては米投資ファンドのKKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)による5500億円規模のTOB(株式公開買い付け)が9月5日に始まり、3Dは保有する富士ソフト株のすべてをTOBに応募する予定だ。

また、3Dは医薬品卸大手の東邦ホールディングスについても保有割合を15.26%まで高めた。

香港投資ファンドのオアシス・マネジメントはキャッシュレス決済サービスなどのデジタルガレージを15.42%まで買い増した。

オアシスは調剤薬局最大手のアインホールディングスで約15%、ドラッグストア準大手のクスリのアオキホールディングスで10%近くを保有する大株主となっているが、8月中、買い増しなどの動きは表面化しなかった。

旧村上系、パイオラックスなど2銘柄を新規保有

旧村上ファンド系投資会社の動きはどうか。南青山不動産(東京都渋谷区)が三井住友建設を13.8%、日産自動車系部品メーカーのヨロズを11.67%まで買い増した。

同じく旧村上系のシティインデックスイレブンス(同)は自動車部品メーカーのエクセディを15.49%、平和不動産を6.06%、フェロニッケル製錬の大平洋金属を9.1%まで買い増した。また、自動車部品のパイオラックス、車載用コネクターのイリソ電子工業の両社については5%を超える株式の新規保有が明らかになった。

8月は新規保有の対象となった銘柄が多かった。英国アセット・バリュー・インベスターズは繊維製品のアツギ、住まいトラブル解消サービスのシェアリングテクノロジー、金属製品の新家工業の3社について大量保有報告書を提出したが、いずれも5%台の新規保有だった。

同じく英国投資ファンドのニッポン・アクティブ・バリュー・ファンドは給湯機大手のノーリツの株式を5.02%新規保有した。

同ファンドは昨年来、日本での投資を活発化している。8月中、栄研化学、トランコム、ホギメディカル、あすか製薬ホールディングス、那須電機鉄工、ヘリオスホールディングスの株式をそれぞれ買い増したことが判明した。

ストラテジック、山洋電気を5%超保有

米投資ファンドのミリ・キャピタル・マネジメントは越境EC(電子商取引)事業のBEENOS株を5.22%新規保有し、その後に9.35%まで買い増した。

国内勢ではストラテジックキャピタルがサーボモーター大手の山洋電気の株式5.24%を新規保有した。ストラテジックキャピタルは旧村上ファンド幹部だった丸木強氏が率いる。既存投資先も多岐にわたり、各銘柄の買い増しも相次いだ。

キリンホールディングスによるTOBが進行中のファンケルをめぐっては、香港投資ファンドのエムワイ・アルファ・マネジメントHKアドバイザーズが9.94%まで保有割合を高めたことが明らかになった。他の株主に周知するため、8月28日までだったTOBの期間が9月11日まで延長された。

◎8月:アクティビストによる主な保有状況(赤字は新規保有、大量保有報告書に基づく)

文:M&A  Online

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