「日本製鉄」と「日立製作所」が相次いで合弁解消

日本製鉄<5401>と日立製作所<6501>が相次いで合弁を解消することになった。

日本製鉄は自動車用鋼板を製造している中国の宝鋼日鉄自動車鋼板有限公司(上海市)を、合弁相手である中国の宝山鋼鉄股份有限公司に売却する。

日立製作所は米国のジョンソン・コントロールズ・インターナショナルと共同出資で設立した家庭用や業務用の空調機を手がけるジョンソンコントロールズ日立空調(東京都港区)をドイツのボッシュに売却する。

日立は空調業界のグローバル市場での競争力向上を目的に2026年3月期第1四半期までに、日本製鉄は合弁会社の経営期間満了日の2024年8月29日に、それぞれ保有する全株式を譲渡する。

日本の自動車メーカーの不振が引き金か

宝鋼日鉄自動車鋼板は2004年に、日本製鉄と宝山鋼鉄がそれぞれ50%を出資して設立した企業で、自動車向け冷延、溶融亜鉛めっき鋼板を製造している。資本金は30億人民元(約630億円)。

中国では大手不動産会社の経営危機が表面化するなど景気の先行きが不透明を増しているほか、宝鋼日鉄自動車鋼板の顧客である日本の自動車メーカーは、EV(電気自動車)の普及が進む中、中国からの撤退や事業縮小を余儀なくされており、厳しい状況にある。

日本製鉄は詳細を明らかにしていないが、こうした中国経済の先行きや日本の自動車メーカーの不振などを背景に合弁解消に踏み切ったとみられる。

世界的な再編の流れが背景に

ジョンソンコントロールズ日立空調は、日立の子会社である日立アプライアンス(現・日立グローバルライフソリューションズ)の空調事業とジョンソンコントロールズが2015年に設立した企業で、株式の60%をジョンソンコントロールズが、同40%を日立グローバルライフソリューションズが保有しており、全世界に30カ所以上の拠点を持つ。

空調業界は世界的に再編が進んでおり、世界での競争力を高めるため、日立グローバルライフソリューションズとジョンソンコントロールズが保有する全株式をボッシュに売却することにした。

日立の株式売却価格は14億ドル(約1950億円=1ドル140円で計算)で、日立は、2026年3月期決算で「事業再編等利益」として約1250億円を計上する。

ボッシュが株主となる新会社は、日立グローバルライフソリューションズとブランドライセンス契約を結び、引き続き日立ブランドの空調機器を生産し世界に供給する。

一方、日立グローバルライフソリューションズは、ジョンソンコントロールズ日立空調の業務用空調機器の開発、製造拠点である清水事業所(静岡市)を取得し、国内向け業務用空調機の開発、製造、販売、保守を行う。

合弁解消は今後増加?

上場企業が2024年上期(1~6月)に子会社や事業を売却した件数(適時開示ベース)は前年同期より22件多い162件となり、2015年以降の10年間では2021年上期(168件)に次ぐ2番目に高い水準となった。

中核事業に集中する動きが件数を押し上げたものとみられるが、中には譲渡先企業と共同で事業の運営や、新規事業の開発に取り組む案件などもあり、競争が激化する中で、新たな連携を模索する動きが見られた。

経営権を握っていない合弁会社についても、経済環境は変わらず、合弁解消の動きは上場企業の子会社・事業売却と同様に増加傾向をたどる可能性がありそうだ。

文:M&A Online記者 松本亮一

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