「スタートアップワールドカップ」東京予選 Digital Entertainment Assetが優勝
スタートアップによる技術やサービスのコンテスト「スタートアップワールドカップ2024」の東京予選が7月19日、グランドハイアット東京(東京都港区)で開催され、ブロックチェーン技術によるゲームアイテムNFT(非代替性トークン)を提供するDigital Entertainment Asset Pte.Ltd(シンガポール)が優勝した。京都予選、九州予選の優勝企業とともに、10月2日から4日までの3日間、米サンフランシスコで開催される決勝大会に、日本代表として出場する。
投資家ら4000人が観戦
優勝したDigital Entertainment Assetの山田耕三ファウンダー兼Co-CEOは「このところ注目度が下がっているウェブ3.0業界にも元気を与えられると思うと非常にうれしい」とコメントした。
東京予選はエントリーした約230社の中から、書類選考で絞り込まれた11社が自慢の技術やサービスを競い合った。会場とオンラインで大企業の担当者や投資家、登壇企業の関係者ら約4000人がピッチと審査を見守った。
河野デジタル相「日本ではなく、世界をターゲットに」
ピッチに先立ち、スペシャルゲストの河野太郎デジタル相が「政府の成長戦略でもスタートアップ育成は重要なテーマになっている。韓国のエンターテイメント業界は、世界市場を相手にして大きく成長した。日本のスタートアップも国内ではなく、世界をターゲットにビジネスを展開してほしい」と激励した。
小池百合子東京都知事は「米西海岸を訪れたが、現地の大学が(大学発)スタートアップの数を競っているのに驚いた。やはり新しい企業が誕生する国は活気にあふれている。日本もそうならないといけない。東京都は、これからもスタートアップ支援に力を入れていく」とエールを送った。
起業家でもあるタレントの田村淳さんは、自らが手がける遺言動画サービスについて「母の病死をきっかけに遺言に興味を持ち大学院で研究し、その成果で起業した。苦労しているが保険会社と業務提携を結び、展望が開けつつある」と明かした。
その上で田村さんは「スタートアップは意思決定が早いし、柔軟だ。日本を良くするためにも(スタートアップを)応援したい。起業家と芸能人が協力すれば、スタートアップが成長する環境づくりもできるのではないか」と、スタートアップを盛り上げる意欲を見せた。
パネルディスカッションではMPower Partners Fund L.P.のキャシー松井ゼネラル・パートナーが「米国ではスタートアップの経営計画でIPO(新規上場)を目指すケースは珍しい」と指摘し、日本のスタートアップはM&Aにも目を向けるべきだと問題提起した。
8月の九州大会で決勝大会が出そろう
ALHD賞(投資賞金1億円)には体育会学生・アスリート特化型採用サービスなどスポーツマン支援ビジネスを展開するアーシャルデザイン(東京都渋谷区)が、ジャパネットグループ賞(同5000万円)には知的障がいのあるアーティストが描くアート作品をプロダクトにして社会に提案するヘラルボニー(盛岡市)が、それぞれ選ばれた。
このほかピッチには登壇していないが、年間を通じて注目されたスタートアップを表彰する「スターアップオブザイヤー2024」に自動運転車技術を開発するティアフォー(名古屋市)が選ばれた。
スタートアップ展示会も併催し、全国のスタートアップが独自開発した最新技術や製品を披露した。ネットワーキングパーティーでは出場者と入場者が交流し、情報交換や商談を交わしていた。
スタートアップワールドカップは、米国のベンチャーキャピタルであるペガサス・テック・ベンチャーズ(シリコンバレー)が主催するもので、今年が6回目。世界106の国と地域で実施される予選を通過した企業が、決勝大会でビジネスプランを披露し合い、優勝企業には100万ドル(約1億6000万円)の投資賞金が贈られる。M&A Onlineは同大会のメディアスポンサーとなっている。
5月の京都予選では東京大会でジャパネットグループ賞を受賞したヘラルボニーが優勝。九州予選は8月27日に熊本市などで開催し、今年の決勝大会へ出場するスタートアップが確定する。
文・写真:糸永正行編集委員
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