「マジで!?」ホコリまみれの“スクラップ車”が14億5000万円で落札!? 50年ぶりに見つかった1956年製メルセデスの“驚きの価値”とは?
2024年10月にRMサザビーズが開催した「ジャンクヤード ルディ・クラインコレクション」。これは米国ロスアンゼルスのコレクター、ルディ・クライン氏が集めたお宝のオークションだったのですが、1台のメルセデス・ベンツが驚きの価格で落札されました。
50年間「倉庫」の外には一度も出ていない幻の1台
2024年10月、世界有数のオークショニア「RMサザビーズ」が「ジャンクヤード ルディ・クラインコレクション」というオークションを開催しました。
ルディ・クライン氏は1967年以来、コレクターの世界では著名な人物だったといいますが、ロサンゼルス南部の小さな倉庫で、クルマのエンジンやボディ、そして車両そのものをひっそりと収集していました。ただしそのコレクションは長い間厳重に秘密にされ、一部のコレクターのみがその噂を知っている程度でした。
そして今回、そのコレクションがオークションに出品されることになり、世界中のコレクターが注目しました。
数多くのコレクションのうち、注目を集めたのが今回紹介する1956年式メルセデス・ベンツ300SL「アロイ」ガルウイングです。
ホコリを被り左タイヤはパンク、右リアは衝突した跡が残る、一見するとただのスクラップ車にしか見えないこのモデルですが、なんと935万5000ドル(日本円で約14億5000万円)で落札されたといいます。
いったいどんなクルマなのでしょうか。
1950年代、メルセデス・ベンツはル・マン24時間レースやカレラ・パナメリカーナ・メヒコで優勝した「W194」というレースマシンをベースに市販バージョンを制作、これが1954年に登場した世界初のガルウイング採用モデル「300SL(W198)」でした。
このW198型300SLはニューヨークショーでデビュー、西ドイツ本国で発表される前に海外で公開された初のメルセデス車でもあります。
生産開始から1年後、メルセデス・ベンツのエンジニアリング責任者、フリッツ・ナリンガー博士は、W198型300SLをベースとした特別な「レース専用」バージョンの製造を提案。1954年から「Leichtmetallausführung(ライトメタルバージョン)」として製造を進めさせ、その後販売されました。それが今回オークションに登場した300SL「アロイ」ガルウイングです。
ただし法外なコストなどの理由により、わずか12か月しか製造されず、29台のみの生産となりました。
1956年1月12日に完成したシャシ番号198.043.5500872は生産ラインから出荷された29台中26番目のアルミボディのガルウィングであり、実際には1956年に完成した最初のモデルでした。
特徴は、レッドレザーとブラック内装という、唯一のモデルだということです。
最初のオーナーはル・マン24時間レースで優勝し、後にフェラーリ北米の輸入業者となったルイジ・キネッティ氏。キネッティ氏がアロイ・ガルウイングを購入したのは、当時所有していたフェラーリと比較するためだったと言われています。
時は経ち1976年、デイトナ500に参戦していたルイジ・キネッティ氏はルディ・クライン氏と出会い、このアロイ・ガルウイングを3万ドルで売却しました。当時の請求書が履歴ファイルに存在しています。
そしてその後およそ50年間、ルディ・クライン氏の倉庫でひっそりと置かれていました。クライン家の息子たちは、アロイ・ガルウイングはルディ氏が膨大なコレクションの中で唯一、運転しなかったモデルだといいます。
メーター読みの走行距離は7万3387kmです。
このモデルの見た目での損傷は、後部にある大きな凹みのみです。これはルディ氏がフォークリフトを運転中、バックでアロイ・ガルウイングにぶつかったときのものだといいます。
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50年近くの間カリフォルニアの倉庫で眠り、もっとも秘密めいた車両として紹介された1956年式メルセデス・ベンツ300SL「アロイ」ガルウイング。
そんなストーリーもあり、予想価格を大幅に超える価格で落札されました。
11/21 07:30
VAGUE