サーキットと公道の二刀流!? スポーツ走行もツーリングもこなす守備範囲の広い「ミドルスーパースポーツ」バイク3選

 600ccあたりの排気量帯のバイクは「ミドルクラス」などと呼ばれています。ミドルクラスにもスーパースポーツが存在しますが“スーパー”な面は抑えめで、その代わりツーリングなどにも気兼ねなく使用できます。今回は本格的にサーキット走行にもツーリングにも対応できるミドルクラススポーツ3機種を紹介します。

100馬力もあれば十分に速い

 スーパースポーツ、あるいはスーパーバイク(SS)の花形は1000ccクラスです。

1台でツーリングもサーキット走行もこなすミドルクラススポーツは扱いやすさで人気だ(写真はアプリリアRS660)

1台でツーリングもサーキット走行もこなすミドルクラススポーツは扱いやすさで人気だ(写真はアプリリアRS660)

 実際にレースで使用され、そこで“勝つ”ための機能性を極限まで追求しデザインされた車体は、サーキットはもちろん高速道路でもワインディングでもどこでも人目を引きます。

 しかし1000ccのSSはそれがネガティブ要素にもなります。速さに特化しているあまり、公道で必要な機能性は切り捨てられているのです。

 エンジンのパワー・トルクバンドはもちろん、前傾がきつくシート高も嵩むライディングポジションは、300km/hに及ぶ領域でライバルに打ち勝つためのセッティング。公道ではまず使用できない領域です。

 “SSは公道で乗りづらい”といわれるのは、ある意味当然といえるのです。もちろん最新のSSは値段もかなり張ります。

 “それでもSSに乗りたい”、“SSでも快適にツーリングしたい”、“レースはしないけどサーキットは走りたい”のであれば、1000ccから目線を下げて600cc界隈のミドルクラスに注目してはいかがでしょうか。

 ホンダがラインナップするミドルクラスのモデル「CBR650R」は、バランスの取れたSSと言えます。

ホンダ「CBR650R」

ホンダ「CBR650R」

 エンジンは、648ccの水冷直列4気筒DOHCで、最高出力70kW(95PS)/12000rpm・最大トルク63Nm(6.4kgm)/9500rpmを発揮します。

 1000ccのSSの半分のスペックですが、バイクで100PSもあれば十分に速いと言えます。

 そして最高出力の発生回転数が1万2000rpmと高回転であることも注目点です。4気筒エンジンらしいカン高いサウンドを聞けるでしょう。

 さらにCBR650Rには、クラッチ操作を完全自動化した「Honda E-Clutch」搭載モデルも登場しました。

 ギア変速はライダーが行うもののクラッチレバーを握る必要がなく操作がラクになります。サーキット走行でも操作が単純化されるので、より走りに集中できるでしょう。

 またクラッチレバーは従来のまま装着されているので、自動に違和感があればマニュアルモードを選択して従来通りの変速操作が可能です。

 ちなみにCBR650Rのボディサイズは、全長2120×全幅750×全高1145mmで、ホイールベースが1450mm、シート高が810mmで、車重が209kg(E-クラッチ車:211kg)となっています。 

パフォーマンスよりも“ファンライド”

 スズキ「GSX-8R」は、2024年1月に国内発売された新進気鋭のSSです。

スズキ「GSX-8R」

スズキ「GSX-8R」

 先に発表・発売されていた「GSX-8S」の兄弟車で、フルカウル化するとともにセパレートハンドル(8Sはバーハンドル)を装備し、SSらしい前傾したライディングポジションに変更されています。

 エンジンは、775ccの水冷直列2気筒DOHC4バルブで、最高出力59kW(80PS)/8500rpm・最大トルク76Nm(7.7kgm)/6800rpmというスペック。

 パワーよりもトルク重視のエンジンとなっており、コーナからの立ち上がりなどで有利といえるでしょう。もちろんワインディングにおいても、エンジンをブン回さなくて良くなるため、燃費の面でも有利です。

 なお、エンジンパワーモードが選べたりトラクションコントロールの介入度合いが調整できたりと電子制御を生かしたセッティングが可能。ギアはクイックシフトを採用しているので、発進・停止以外はクラッチ操作なく変速できます。サーキット走行でおおいに役立ちそうな機能です。

 ちなみに車体サイズは全長2115×全幅770×全高1135mmで、ホイールベースは1465mm、シート高は810mmで車重は205kgとなっています。

 全幅は770mmですが、この値はハンドルを含んだものなので、実際に跨るとスリムに感じられるでしょう。そういった面でも乗りやすいSSといえます。

 ミドルクラスのSSの中には、サーキットパフォーマンスを重要視したモデルも存在します。

 その中でもユニークなのはアプリリア「RS660」です。

アプリリア「RS660」

アプリリア「RS660」

 最高出力73.5kW(101PS)/10500rpm・最大トルク67Nm(6.83kg)/8500rpmのスペックを誇るエンジンは、4気筒ではなく659ccの水冷直列2気筒DOHCとなっています。

 ショートストローク・高回転型とすることでパワーを絞り出しているエンジンで、公道よりもサーキットでのパフォーマンスにフォーカスしていることがみて取れます。

 エンジンパワーモード選択/エンジンブレーキ制御/トラクションコントロール/ウィリーコントロール/上下クイックシフトを備えていることからもそれが読み取れます。

 しかし公道を割り切っていないのも特徴。その証拠にクルーズコントロール機能を標準装備しています。車重(後述)もかなり軽量なので、取り回しもラクそうです。

 アプリリアはMotoGPにも参戦しているブランドですが、2気筒のミドルSSをあえて新規製作したということは、絶対的な速さとは違う面をアピールしたいのではないのでしょうか。

※ ※ ※

 今回紹介したSSは100馬力級のミドルですが、たかが100馬力と侮ると痛い目をみます。

 実際にサーキットで全開にすれば、異次元の加速を見せ、エンジンが高音で唸り恐怖を感じるはずです。

 しかし、100馬力のマシンは、200馬力級の1000cc車よりも扱いやすいのは事実です。

 1000ccが上級・プロ用と考えると、ミドルは中級から中上級ほどのポジションとなります。

 そして何より、公道で乗っても楽しさを味わえます。

 “1台でツーリングにも行けてサーキットも攻められる”

 こんな欲張りを叶えてくれるのは、実はミドルクラスSSなのかもしれません。

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