待望の予約受注スタート 「世界一売れているVW車」の実力が気になる “全方位的に進化”した新型「ティグアン」公道での印象は

VWのベストセラー「ティグアン」の新型モデルが、ついに日本での予約受注をスタートしました。3代目となる新型は、果たしてどんな実力の持ち主なのでしょうか? ひと足早くドイツで試乗したモータージャーナリストの藤島知子さんがレポートします。

3代目へ進化したVWのベストセラーの実力は?

 VW(フォルクスワーゲン)ジャパンは2024年9月13日、ミッドサイズSUV新型「ティグアン」の予約受注をスタートしました。

VW新型「ティグアン」

VW新型「ティグアン」

 新型はフルモデルチェンジにより誕生した3代目。パワートレインは、「ティグアン」としては初めて48Vのマイルドハイブリッドを搭載した「1.5 eTSI」が日本市場にラインナップされたほか、ディーゼルターボエンジンを搭載する「2.0 TDI」の2種類から選べます。

 グレード構成は大きく分けて3タイプ。「1.5 eTSI」、「2.0 TDI」それぞれにベーシック仕様の「アクティブ(Active)」、快適装備を充実させた「エレガンス(Elegance)」、スポーティさを高めた「Rライン(R-Line)」を設定しています。

 アクティブに乗りこなせるSUVの「ティグアン」は、日本の道路環境でも走らせやすいボディサイズに、家族や友人とのお出かけ時に快適に過ごせる居住スペース、実用的なラゲッジスペースを備えたモデル。

 全世界で販売されるVW車でベストセラーカーの座に君臨するだけあって、新型はこれまでの正常進化の域を超える内外装の刷新や走りの質感向上、新機能の充実ぶりに力を入れてきています。

 実際の走りはどうなのかと気になっている方も多いと思いますので、ここからはひと足早くヨーロッパの地で試乗してきた印象をお届けしたいと思います。

 まずはスタイリング。

 先代「ティグアン」のフロントグリルは、VWらしくエッジの効いた水平基調で描かれたデザインが特徴でしたが、新型は最新世代の“VW”エンブレムが採用されたほか、グリル上部には水平基調のバーをシンプルにあしらい、グリル下部の開口部の面積を大きく描いているのが特徴。

 従来よりも、フロントフードが高く構えられていることで、SUVとしての頼もしさが強調された形ですが、空気抵抗係数(Cd値)が従来の0.33から0.28に低減されており、燃費面や風騒音低減への効果も期待できます。

 ヘッドライトには、左右を合わせて3万8400個ものマルチピクセルLEDで構成されたHDマトリクスヘッドライト“IQ.LIGHT”が設定されていて、夜間にはハイビームを点灯した状態で遠方まで明るく照射。対向車への遮光を繊細に制御しながら、運転しやすい視界をもたらしてくれます。

 新型「ティグアン」のボディサイズ(欧州仕様)は、全長4539mm(従来比プラス30mm)、全幅1842mm(同寸)、全高1639mm(従来比プラス4mm)。前後タイヤの間隔(ホイールベース)は従来モデルと変わらない2680mmとなっています。

 全長は伸びやかな印象になっていますが、リアエンドはスポーツクーペのように美しいフォルムで描かれていて、都会の景色にも映える洗練されたデザインに仕上げられています。

 外観がスタイリッシュになると荷室容量が犠牲になりがちですが、新型「ティグアン」は従来比37リットル増の652リットルが確保されているというのはうれしい驚き。レジャードライブへ出かける際、余裕をもって各種ギアを積む込むことができそうです。

 リアまわりに目を向けると、大型のルーフスポイラーを採用したことでスポーティなイメージになっています。

 水平基調で描かれたLEDのテールランプは、デジタル時代を迎えたVWを印象づける先進的で力強いたたずまい。両手に荷物を抱えているときでも、リアゲートのドアハンドルに手を触れることなく、バンパー下のセンサーに足でキックするような動作で開閉できる電動開閉式リアゲートを用意しています。

 大幅に進化したと感じさせるのがインテリア。

 ドアを開けて、まず目に飛び込んでくるのは、“MIB4”と呼ばれる最新世代のデジタルコックピットです。ドライバーの正面には、車両情報やマップなどを表示できる液晶メーターを配置。さらにインパネの中央には、15インチの大型タッチディスプレイを装着することが可能です。

 このディスプレイは、カーナビのマップを表示できるのはもちろんのこと、音楽再生やエアコンなど車両設定にまつわる各種操作がおこなえます。従来のタッチディスプレイと比べて情報処理能力が高められていて、指先のタッチや2本指で地図の縮尺を変えるピンチアウトや、エアコンの温度調整時にスライダーに指をすべらせるといった各種操作にレスポンスよく反応してくれます。

 また、スマホアプリとの連携も可能で、アプリ上の膨大なリストの中から音楽などのストリーミング再生を楽しめるなど、ドライブライフを充実させてくれそうです。

 加えて新型「ティグアン」には、このクラスをリードしてきた車種ならではの快適性にも並々ならぬコダワリが見られます。

 シートの質感は高く、適正な姿勢で身体を預けられる座り心地のよさもさることながら、フロントシートにはドライブの疲れを癒やしてくれるマッサージ機能も装備されています。

軽快に駆け出す「1.5 eTSI」&ジワジワと車速を高める「2.0 TDI」

 このように、内外装は素材の質感やディテールともに上質なものに仕上げられていますが、実際に走ってみてどうなのかも気になるところでしょう。

VW新型「ティグアン」

VW新型「ティグアン」

 まず試乗したのは、1.5リッター4気筒ガソリンターボエンジンを搭載する「1.5 eTSI」の前輪駆動モデル。

 エンジンの力にモーターアシストが加わることで、アクセルペダルをそこまで深く踏み込まなくても、7速のデュアルクラッチ式トランスミッション“DSG”の切れ味いい変速とともに、エンジンの力をリズミカルに引き出し、軽快に駆け出していくことができます。

 アウトバーンの本線に合流する際、アクセルペダルを深く踏み込んでフル加速を試してみると、エンジンは回転数を高めながら気持ちよく吹け上がってくれて実に爽快。環境性能を意識したハイブリッドカーでありながら、エンジンフィールを大事に磨き上げている点は「1.5 eTSI」ならではの魅力といえるでしょう。

 では「2.0 TDI」を搭載するモデルにはどんな特徴があるのでしょうか? 2リッター4気筒ディーゼルターボエンジンにも7速DSGが組み合わされていますが、こちらは“4モーション”と呼ばれる4WDとの組み合わせになります。

 ドイツでステアリングを握ったのは、255/40R20サイズのタイヤを装着する「Rライン」です。「1.5 eTSI」の前輪駆動モデルと比べると、適度な重量感が落ち着きをもたらし、加速時は瞬発力というよりもジワジワと車速を高めていくタイプ。

 ディーゼルならではのトルクは力強い上に、「Rライン」仕様ということもあって、ステアリングを握る手のひらにはしっかりとした手応えを与えてきます。150〜160km/hの速度域で巡航しているときも、安定した走りが安心感をつながっていました。

 また、日本とは異なるハイスピードな走行環境では緊張感が伴うものですが、15インチの大型タッチディスプレイはカーナビの情報などをひと目で把握しやすいと感じました。

 3代目となる新型「ディグアン」には“MQB evo”と呼ばれる進化した横置きエンジン用のプラットフォームが採用されています。これにより、走りの基本性能が熟成されているのはもちろんのこと、このクラスのモデルとしては贅沢ともいえる新次元の制御を採用したことで、かつてのモデルを超える快適性と操縦性を実現しています。

 さらに、「1.5 eTSI」、「2.0 TDI」のどちらのモデルにも共通して感じられた進化は、静粛性レベルが格段に高まっていたこと。ディーゼルの「2.0 TDI」は、時折、頼もしい音色を伝えてくる場面もありますが、「1.5 eTSI」はまるで2クラス上の車格のクルマに乗っているかのように静かで快適に過ごすことができました。

 また、優れた操縦安定性に貢献してくれる“アダプティブシャシーコントロール“DCC Pro”にも感心させられました。

 従来の“DCC”は1バルブ式でしたが、新型には2バルブ式が採用されていて、ダンパーの伸び側と縮み側の減衰力の制御を連続的におこなうものへと進化。快適な乗り心地を実現しておだやかなリズムとしなやかな走りを楽しんだり、少しペースアップしてレスポンスよく走らせたりと、状況に応じて走りのキャラクターを変えることができます。

 そのため、たくさんの荷物や同乗者を乗せて走るとき、スポーティな走りを満喫したいときなど、重心が高いSUVが苦手としがちな状況でも巧みな足さばきを披露してくれます。今回の試乗でも、一段上の操縦安定性とドライブする楽しさを満喫させてくれました。

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 よりスタイリッシュに生まれ変わったエクステリアデザイン、快適な室内空間と先進のデジタルデバイスの採用、さらに磨きがかかった走りなど、大きく進化を遂げた3代目「ティグアン」。

“先進機能の民主化”がVWのクルマづくりのテーマだとするならば、新型「ティグアン」は紛れもなく、このクラスのスタンダードを引き上げる1台といえるでしょう。

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