伝説のチューナー“シェルビー”が手がけた25年前のアメリカン・マッスルカー「シリーズ1」を発見 現存1台のみのプロトタイプ

アメリカを代表するチューニングメーカーであるシェルビーの希少モデル「シリーズ1」が、オンラインカーオークション「バレット・ジャクソン」に出品されて注目を集めています。いったいどのような個体なのでしょうか。

アメリカンチューナーのシェルビーが本気で造ったコンプリートカーがオークションに登場

 アメリカのレース史上のなかでも欠かすことのできない人物が、キャロル・シェルビー氏です。

米国オークション「バネット-ジャクソン」に出品された1999年製シェルビー「シリーズ1」プロトタイプ

米国オークション「バネット-ジャクソン」に出品された1999年製シェルビー「シリーズ1」プロトタイプ

 キャロル・シェルビー氏はレーシングドライバーとして活躍し、ル・マン24時間レースでも優勝経験のある数少ないアメリカ人ドライバーです。

 さらにキャロル・シェルビー氏の活躍は、映画「フォードvsフェラーリ」でも描かれ、多くの人に知られる存在となりました。

 また、キャロル・シェルビー氏は引退後にチューニングメーカーである「シェルビーアメリカン」を設立し、伝説の名車を数多く誕生させます。

 そのなかでも有名なモデルが「ACコブラ」で、元祖マッスルカーを彷彿とさせるグラマラスなボディとフォード製4.2リッターV型8気筒エンジンから発生する怒涛のトルクは、欧州車にも引けをとらない性能でした。

 ほかにもフォード「マスタング」をベースにした「シェルビーGT500」など、アメリカンスポーツカー史上に残る名車を世に送り出してきました。

 そんなアメリカのマッスルカー市場を支えてきたシェルビーアメリカンのなかで、もっともホットなモデルといわれているのが、249台の限定モデルである「シリーズ1」です。

現存する唯一の「シリーズ1」プロトタイプ

 シリーズ1は2シーターのオープンクーペで、パワートレインには4リッターのV型8気筒が収められ、6速ミッションを介して後輪を駆動する仕組みとなっています。 

米国オークション「バネット-ジャクソン」に出品された1999年製シェルビー「シリーズ1」プロトタイプのエンジン

米国オークション「バネット-ジャクソン」に出品された1999年製シェルビー「シリーズ1」プロトタイプのエンジン

 また、エクステリアは同社ACコブラをオマージュしたもので、丸目ヘッドライトとオーバル状のグリル形状に面影を色濃く残しています。

 生産台数が少なく、シェルビーアメリカンのなかでも最高傑作といわれていたモデルだけあって、市街地で見かけることは稀ですが、今回オンラインオークションの「バレット・ジャクソン」に「シリーズ1」が出品されて注目を集めています。

 今回の個体は1999年式のモデルで、ボディカラーはシルバー、走行距離は1万2309マイル(約1万9809km)となっています。

 そして今回の出品車両は市販モデルではなく、1994年から2000年までシェルビーアメリカンの社長兼最高執行責任者を務めたドナルド J. レイガー氏が所有していたプロトタイプになります。

 このシリーズ1のシリアルナンバーは「CSX 50X2」で、シェルビーアメリカンが製造した2番目のプロトタイプで、現存する唯一のシリーズ1のプロトタイプです。

 もともとは1998年後半までに開発が完了したためプロトタイプを処分する予定でしたが、キャロル・シェルビーが長年の友人で当時の社長兼COOであったドナルド J. レイガー氏のボーナスのためにあえて寄贈しました。

 プロトタイプとはいえ、市販バージョンと変わりはなく、グレーのインサートが入ったブラック レザーのバケットシートやモンスーン CD/カセット ステレオ、マルチスピーカーサウンドシステムが搭載されています。

 唯一の市販バージョンとの違いは、ボンネットからトランクにかけて走る、2本のストライプが入れられていないぐらいです。
 
 また、このプロトタイプは結局一度も公道走行されることなく、レイガー氏によって大切に保管されていました。

※ ※ ※

 今回のオークションでは希望落札価格12万6500ドル(約1886万円)で出品されています。

 チューニングメーカーとして飽きたらず、シェルビーアメリカンの完全設計の最初で最後のモデルとして誕生したシリーズ1はマッスルカーマニアにはたまらないクルマといえるでしょう。

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