5億円超え! フェラーリ新型「F80」世界初公開 1200馬力の公道走行できる“特別なフェラーリ”は799台限定ですでに完売

フェラーリ新型「F80」が世界初公開されました。フェラーリ創立80周年を記念した799台限定のスペシャルなモデルですが、どんなパフォーマンスを発揮するのでしょうか。

フェラーリ創立80周年を記念した特別な限定モデル

 最高出力:1200ps、最高速度:350km/h、0-100km/h加速:2.15秒、0-200km/h加速:5.75秒……。

 フェラーリのチーフ・プロダクト・デベロップメント・オフィサーのジャンマリア・フルジェンツィが並べた立てた数字は、公道を走れる市販車としてどれも並外れたものばかりでした。

 いえ、たとえレーシングカーであっても、これほど高性能なものはなかなか見当たりません。

 けれどもフルジェンツィは「これらはクルマを理解するのに役立つ数字でしかありません」と続けました。「けれども、私たちが本当に作りたかったのは、乗る人に深い感動を与えるクルマです。そしてクルマのもたらすスリルによって、ドライバーやパッセンジャーが思わず微笑んでしまうようなクルマを作ることが目標でした」

 きっと、フェラーリのどのモデルに乗っても、多くのクルマ好きは笑みを浮かべることでしょう。言い換えれば、フルジェンツィがいう「ドライバーやパッセンジャーが思わず微笑んでしまうようなクルマ」とは、これまで数々のフェラーリを乗り継いできたマニアでさえ「思わず微笑んでしまう」くらいの、特別な1台を指しているといえます。

世界初公開されたフェラーリ新型「F80」

世界初公開されたフェラーリ新型「F80」

 それもそのはず、先ごろ発表された新型「F80」は、80年に迫るフェラーリの歴史のなかで、たった5台のみが名を連ねるスーパーカー・シリーズの最新作として誕生したニューモデルなのです。

 ちなみに、その5台とは、1984年発表の「288GTO」、1987年発表の「F40」、1995年発表の「F50」、2002年発表の「エンゾ・フェラーリ」、2013年発表の「ラ・フェラーリ」を指します。

 では、新たに発表されたF80がどんなクルマなのか、もう少し詳しく見ていきましょう。

 その心臓部であるエンジンには、排気量3リッターの120度V6ツインターボエンジンが選ばれました。そう聞いて「つまり、296GTB/296GTSと同じエンジンね」と気づいたアナタは、かなりのフェラーリ通といえます。

 たしかに、F80に搭載されているV6エンジンは、量産モデルの「296GTB/296GTS」と共通ですが、実は同じエンジンは、世界耐久選手権(WEC)のハイパーカー・クラスに参戦し、2023年と2024年にルマン24時間で2連覇を達成した純レーシングカーの「499P」にも用いられています。

 さらにいえば、F1世界選手権を戦うフェラーリの「SF-24」に搭載されているエンジンもV6です(排気量やVアングルなどのスペックは、296GTB/296GTSや499Pとはまったくの別物)。そう、いまやV6エンジンは、世界最高峰のモータースポーツで栄冠を勝ち取ることができるほど優れたポテンシャルを秘めているのです。

 F80では、このV6エンジンに電動ターボチャージャーを搭載。これは、排ガスで駆動されるタービンと、吸入気を圧縮するコンプレッサーの間に電気モーターを追加したもので、この電気モーターでコンプレッサーを駆動することにより、排ガスがまだ十分なエネルギーを持たない低回転域でも高い過給圧を得ることができるシステム。

 同様の構造は、現在のF1パワーユニットでも用いられているほど高度な技術です。ただし、F1パワーユニットでは、この電動ターボチャージャー内の電気モーターによってエネルギー回生を行うこともありますが、F80では電気モーターはコンプレッサーを駆動するだけでタービンの力で発電を行なうことはありません。

 このV6エンジンは、クランクシャフト、クランクピン、コンロッド、ピストンなどを専用品に置き換えるとともに、過給圧を高めるなどした結果、3リッターの排気量から900psという途方もないパワーを生み出すことに成功しています

車両価格は360万ユーロ(約5億8000万円)だがすでに完売

 さらに、F80には3モーター方式のハイブリッドシステムを搭載。

世界初公開されたフェラーリ新型「F80」のインテリア

世界初公開されたフェラーリ新型「F80」のインテリア

 これはエンジンと直結された1基のリアモーター、左右の前輪を個別に駆動する2基のフロントモーター、そして容量2.28kWhのリチウムイオン・バッテリーなどで構成されるもので、最高出力300psを発揮するとともに、左右の前輪を個別に駆動することでクルマが自然と曲がろうとする力を生み出すトルク・ベクタリング機能を実現。

 加速性能や最高速度などを高めるだけでなく、コーナリング性能を改善するうえでも大きな役割を発揮します。

 しかも、モーターにはリッツ線と呼ばれる特別な電線を使ったり、磁石のN極とS極を90度向きを変えて並べたハルバッハ配列といった技術を用いることにより軽量コンパクトに仕上げたほか、バッテリーセルにはF1由来の技術を投入。SF90用に比べて30kgもの軽量化を達成したといいます。

 こうしたパワーを受けとめるシャシは、カーボンモノコックを主体としたもの。

 そしてモノコックから前後に伸びたアルミ製サブフレームに、フロントアクスルとフロントサスペンション、さらにはエンジン/ギアボックス/リアサスペンション/リアアクスルなどが固定される構造をとります。

 そして前後のサスペンションには「プロサングエ」でデビューしたアクティブサスペンションを装備。クルマの姿勢を正確に制御して、このあとで述べる空力性能を最大限、引き出すことに貢献します。

 これだけのパフォーマンスを生み出すスーパースポーツカーなので、エアロダイナミクスに高度な技術が用いられたのは当然といえるでしょう。

 とりわけ、ボディー下側(アンダーフロアと呼ばれる)にはバージボードと呼ばれる整流板が数多く装備されているほか、ボディ後端に向けてアンダーフロアが徐々に高くなるリアディフューザーと呼ばれる構造を採用。ちなみに、リアディフューザーの長さはフェラーリ史上最長の1800mmに及ぶといいます。

 さらに、フロントのダウンフォースを増すSダクトといったテクノロジーや、リアウィングの高さや角度が可変するアクティブリアウィングなどを採用。250km/h走行時には1050kgという途方もないダウンフォースを発生します。

 エンジンと8速DCTのギアボックスは一部を他モデルと共用しているものの、ハイブリッドシステム、サスペンション、シャシー、ボディーなどを専用設計したF80は、特別なモデルばかりが揃うフェラーリのなかでもひときわ特別な存在です。

 このため、価格も360万ユーロ(約5億8000万円)とずば抜けて高い設定となっています。それでも、799台の限定生産分は完売しているというから驚きます。

 ちなみに、モデル名のF80はフェラーリの創立80周年を意味するもの。それだけに、特別力がこもった作品であることは間違いないでしょう。

ジャンルで探す