なぜ外国車はウインカーが左手側にある? 「慣れないと使いづらい」との声も 右と左 日本車とは逆の理由とは

一部を除き、ほとんどの輸入車は、ウインカーレバーが左手側についています。なぜ、国産車と輸入車ではウィンカーレバーの位置が異なるのでしょうか?

ほとんどの輸入車が「左手ウインカー」を採用している理由

 国産車から輸入車へ乗り換えた時、あるいはその逆の時に、多くの人が戸惑うのがウインカーレバーの位置です。国産車のウインカーレバーはハンドルの右手側に配置されていることが一般的ですが、ほとんどの輸入車はハンドルの左手側に配置されています。

現在、新車で販売されている日本車のほとんどが右手側にウインカーレバーがついている。輸入車は左手側ウインカーが圧倒的多数だ

現在、新車で販売されている日本車のほとんどが右手側にウインカーレバーがついている。輸入車は左手側ウインカーが圧倒的多数だ

 多くのクルマでは、ウインカーレバーの反対にはワイパーを操作するレバーが備わっているため、「交差点で右折する時にウインカーを操作したつもりが、ワイパーが動いてしまった」というのは、はじめて輸入車に乗った人なら誰しもが経験することかもしれません。

 そもそも、なぜ国産車と輸入車でウインカーレバーの位置が異なるのでしょうか?

 結論から言えば、国産車と輸入車では準拠している規格が異なることが大きな理由です。

 国産車の場合、原則として「日本産業規格(JIS)」に準拠しており、そこではウインカーレバーをハンドルの右側に配置することが「標準」とされています。

 一方、輸入車のほとんどは「国際標準化機構(ISO)」を採用しています。ISOでは、ハンドルの位置にかかわらず、ウインカーレバーは左にあることが好ましいとされています。

 JISもISOも、あくまで「標準」を定めることで効率的な経済活動を図ることが目的であるため、法的拘束力があるわけではありません。

 日本の公道を走行することができる車両について定めた「道路運送車両法」では、ウインカーレバーの位置についての定めは特にありません。それどころか、そもそもレバー状である必要もありません。

 実際、フェラーリやランボルギーニの一部のクルマなどでは、ボタン式のウインカーが採用されています。ただ、そうした一部の例外をのぞけば、JISやISOに準拠しないメリットはほとんどありません。

 ウインカーレバーの位置がJISでは右、ISOでは左とされている理由は諸説ありますが、MT車が多かった時代に由来している可能性が高いようです。

 MT車でシフトチェンジをおこなう際、一時的に片手でハンドルを握ることになります。ウインカーレバーがシフトレバーと同じ方向にあると、両方を同時に操作することができないため、それぞれが対照の位置に配置されるようになったと考えられます。

 一方、日本で右ハンドルの輸入車が本格的に増えたころにはMT車が下火となっていたため、「右ハンドル×左ウインカー×MT」というクルマ自体がほとんど存在せず、大きな問題とはならなかったものと推測されます。

日本では「右ウインカー」の輸入車は売れない?

 日本は数少ない左側通行を採用している国であるため、かつては右側通行(左ハンドル)で開発された欧米向けのクルマを日本の法規に対応するようにチューニングするという考え方が主流でした。

ランボルギーニ「ウラカン・エボ」のインテリア。ステアリングホイールにある「←→」ボタンを左右にスライドさせることでウインカーを操作する

ランボルギーニ「ウラカン・エボ」のインテリア。ステアリングホイールにある「←→」ボタンを左右にスライドさせることでウインカーを操作する

 一方、近年ではクルマのグローバルモデル化が進んだことにより、日本のみならず、イギリスやオーストラリア、タイといった左側通行の国や地域で販売することを前提にクルマを開発することができるようになりました。

 その結果、現在では輸入車でもほとんどが右ハンドル仕様となっています。

 ただ、輸入車のほとんどがISOを採用しているため、右ハンドル仕様であってもウインカーレバーが左についていることが一般的です。逆に言えば、日本だけが採用しているJISに合わせてウインカーレバーの位置を変更するのは、メーカーにとっても負担が大きいのが実情です。

 しかし、国産車に乗り慣れた日本のユーザーにとっては、「右ハンドル×右ウインカー」の方が乗りやすいと感じるケースが多いのも事実です。

 そのため、過去にはあえて「右ハンドル×右ウインカー」を採用した輸入車もわずかに存在していました。

 2011年に登場したシボレー「ソニック」がそのひとつです。

 輸入車でありながらコンパクトかつ手頃な価格のソニックは、国産車からの乗り換えを意識して「右ハンドル×右ウインカー」を採用していました。

 ただ、その販売成績は決して好調とは言えず、2016年1月をもって販売終了となっています。

 ウインカーレバーの位置だけが理由ではありませんが、輸入車を選ぶユーザーが本質的に求めるのは「国産車と違うこと」であるということなのかもしれません。

※ ※ ※

 2022年に日本上陸を果たした中国の大手自動車メーカーBYDでは、日本で販売するクルマはすべて「右ハンドル×右ウインカー」としています。またヒョンデのモデルも同様になっています。

 日本では「右ハンドル×右ウインカー」の輸入車は好まれないという一種の「ジンクス」を、BYDやヒョンデが打ち壊すことができるのかに注目が集まります。

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