「古いV8フェラーリ」はどう進化した? 著名デザイナーが「人気スーパーカー」をリデザインしたレストモッド車両の完成度とは?

誕生から30年が経た今も、中古車市場などで人気の高いフェラーリのV8モデル「F355」。この貴重なモデルを、イギリスのエヴォリュート・アウトモビリ社がレストモッドしました。「355 by エヴォリュート」と名づけられたこのモデル、リデザインを担当したのは、かの著名デザイナーでした。

レストモッドのテーマとして掲げたのは“アナログの頂点”

 1994年に登場したフェラーリ「F355」を、大胆にもレストモッドの対象として選んだイギリスのブランド“エヴォリュート・アウトモビリ”が密かに注目を集めています。

イギリスの“エヴォリュート・アウトモビリ”が手がけるフェラーリ「F355」のレストモッド車両「355 by エヴォリュート」

イギリスの“エヴォリュート・アウトモビリ”が手がけるフェラーリ「F355」のレストモッド車両「355 by エヴォリュート」

 フェラーリ「F355」といえば、ホンダ「NSX」に触発されたフェラーリ渾身のV8モデルであったと記憶しています。

 1気筒当たりのバルブ数を5つに増やしてほか、「F355」からフェラーリでは本格採用されるようになったセミAT、さらに電子制御式ダンパーの採用など、当時のフェラーリが誇る技術力を見せつけるためのモデルに仕上がっていました。

 スーパーカー然としたワイド&ローのスタイル、クーペとタルガトップ仕様の“トンネルバック”スタイルは、「308」以降続いてきたフェラーリのデザインの頂点を極めた雰囲気でした。

 そんな「F355」もデビューから30年が経過。立派にネオクラシックの仲間入りを果たしています。

 中古車相場に目を向けてみれば、「F355」よりも後にデビューした「360モデナ」や「F430」の方が安く流通しているほどの人気ぶりです。

 走行距離が少なく、人気の6速MTを搭載した「F355」は、「458イタリア」と変わらない価格で取引されています。ネオクラシックカーとしてのポジションを確立している「F355」は、フルノーマルで維持していけば、今後、価値が下がる可能性は極めて低いといえるでしょう。

 イギリスで立ち上がった“エヴォリュート・アウトモビリ”は、そんな「F355」を大胆にもレストモッドした「355 by エヴォリュート」を展開するブランドです。

 彼らのレストモッドのテーマは“Peak Analogue”で、日本語に訳すなら“アナログの頂点”となります。

●内外装だけでなくボディやエンジンも強化

「355 by エヴォリュート」の内外装デザインを手がけたのは、フォード「RS200」、日産「R390」、アストンマーティン「ヴァンキッシュ」、ジャガー「Fタイプ」などを手がけたスコットランド出身の有名自動車デザイナー、イアン・カラム率いる“カラム・デザインズ”です。

 ベース車両はすべてバラされ、カーボンファイバー製のパーツで補強することにより、ボディ全体のねじり剛性を23%高めているそうです。

 外装は、オリジナルのデザインを尊重しながら、ワイドトレッド化ならびに冷却性能向上のための工夫が凝らされています。

 そして、軽量化のためにボディパネルはすべてカーボンファイバー製となっています。

 内装もオリジナルのデザインを尊重しつつ、30年前のアナログなコックピットの雰囲気を壊すことなく、モダンに仕上げられています。もちろん、内外装ともに顧客の幅広いオーダーに応えられる体制となっているそうです。

 エンジンは、200以上の新設計部品が組み込まれ、レスポンスとパワーをアップさせているとのこと。最高出力はオリジナルの380psから420psへ、最高回転数は8200rpmから8500rpmまで引き上げられています。

 CNC加工されたエンジンヘッドと大型インレットバルブは、空気流と燃焼効率を改善することでエンジン性能を向上させ、出力の増加と熱管理の改善を実現しているそうです。ワイヤーハーネスもすべて新設計され、新しいものに引き直されています。

「F355」は、歴代のV8フェラーリの中でも最高のサウンドを響かせる1台でした。「355 by エヴォリュート」でも新しい軽量チタン製スポーツエキゾーストシステムの音響性能と性能の両方に特別な注意を払っているそうです。

 等長ヘッダーは、各シリンダーからの排ガスが均等な間隔でコレクターに到達するようにすることで性能を向上させ、排気流を改善し、背圧を減少。これにより、一貫したシリンダー圧力、バランスの取れた出力、そしてエンジンの呼吸の改善が図られているといいます。

 そもそも“エヴォリュート・アウトモビリ”は、DRVNオートモーティブ・グループという新進気鋭の自動車関連企業集団の一員で、クルマにまつわる設計、コンサルティング業務、レストア(フェラーリ以外でも)などを手がけています。また、ロンドンにあるケーニグゼグの正規ディーラーも営んでいる面白い集団でもあります。

 ちなみに、「355 by エヴォリュート」のテクニカルディレクターを務めるのは、ポルシェのチューナーとして名を馳せているギュンターワークスでテクニカル・ディレクターを7年間務めたアムジャッド・アリ氏。ポルシェの名チューナーが手がける“アナログの頂点”、走りにも相当期待できそうです。

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