48歳シングルマザー、貯金160万円。就職する息子に、生活費などの援助をしてもらいたいのです
世間の家庭では子どもはいくらぐらい生活費を入れているのでしょうか?
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、シングルマザーで息子を育て上げ、社会人になった息子に生活費を入れてもらいたいと考えている48歳の派遣社員の女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
ぷっちゃんママさん(仮名)女性/派遣社員/48歳
東北/借家
家族構成
息子(18歳)相談内容
息子が2歳のときに離婚をして、そこからシングルマザーとして息子を育ててきました。息子は就職することになり、生活費などの援助をしてもらいたいと考えています。高卒での就職ですと初任給はとても少ないとは思うのですが、世間のご家庭では家にどのくらいの生活費を入れていらっしゃるのか知りたいと思います。
また、これから老後に向けて老後資金を貯蓄しなければならない時期になりました。1人で老後の生活をした場合、どのくらいの金額が必要でしょうか? 月にどのくらい貯蓄をすればいいのか、知りたいです。
家計収支データ
ぷっちゃんママさんの家計収支データは図表のとおりです。家計収支データ補足
(1)収支について(相談者コメント)収支の差額分約2万円は、予備費として年間に使う費用(車検代、車の税金、車の保険、車の維持費、被服費、突発的な出費)に使っています。ただ、何も出費する月がなければ貯蓄に回しています。
(2)車について
1年後に買い替え予定、中古軽自動車で予算は50万円。
(3)加入保険について
・本人/県民共済(総合保障型病気死亡400万円)=月掛け金2000円+(医療特約入院一時金2万円)=月額1000円、合計3000円
・息子/県民共済(こども型)=月額1000円
・車の任意保険=予備費から捻出(ネット通販型)=年一括払い1万6000円
(4)通信費について(相談者コメント)
本人のスマホ6000円。息子のスマホ6000円、Wi-Fiルーター6000円、合計1万2000円は息子がアルバイト代から出してくれています。
(5)雑費について
内訳は、日用品3000円、化粧品1000円、美容室代(3カ月に1度程度)6000円。
(6)今後について(相談者コメント)
息子は、就職直後は現在の自宅からの通勤になりますが、2、3年後に勤務先の移動があるため、転勤と同時に自立します。息子が自立した後は、現在の家は部屋が無駄に広いため、ワンルームのアパートに引っ越しをして、住宅費用を下げようと検討しています。
私の職場は派遣社員のため退職金はありません。再雇用制度はありますが、工場での製造業のため体力が必要で、女性の高齢の方はあまり在籍していません。60歳以降も働くつもりです。そのときは現在の職場に在籍していられるかわからないのですが、職種などこだわらずにパートなどでもいいので働きたいです。
(7)年金について
65歳から年金額62万3000円
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:子どもの援助を期待せず、自力で老後資金を貯めることアドバイス2:生活費をコストダウンできる2~3年後からが最後の貯めどき
アドバイス3:公的年金の不足分をできるだけ抑えれば、90歳過ぎまで大丈夫
アドバイス1:子どもの援助をあてにせず、自力で老後資金を貯めること
ぷっちゃんママさん。これまで1人で子育てをし、息子さんの就職が決まり、ようやく一息つけますね。でも、息子さんからの生活費援助をあてにしてはいけません。老後資金に不安があるからといって、就職したばかりの息子さんを頼るのではなく、まず、家計支出を整理し、できるだけ自力で貯めるようにしてください。
アドバイスを読んでいただければ、息子さんからの援助がなくても、大丈夫なことがわかると思います。
もしも、息子さんが「1万円でも2万円でも家に入れたい」と言ってきても、それは使わずに、独立するときの資金として出してあげるぐらいの気持ちでいたほうがいいのではないでしょうか。
まず、現在の家計のなかで、通信費が重複して計上されています。息子さんが1万2000円負担してくれているのなら、実際は6000円ですね。通信費だけは、これからも息子さんに1万2000円は負担してもらうようにしてください。事実、息子さん自身が利用している分ですからね。
そうすると、現在の収支差は4万5000円ですが、プラス1万2000円で5万7000円が差額となります。このうち、毎月2万円を貯蓄、2万円を予備費とされていますが、毎月4万円の貯蓄はできるはずです。予備費を1万7000円とすれば、他の支出が現状のままでも大丈夫です。
予備費も使わない分は貯蓄とされているわけですから、年間でかかる車関連費などを再度チェックして、予算組みをしてみてください。
もうひとつ、見直しをするとしたら、息子さんの県民共済。現時点でも不要です。就職したら、お子さんはお子さんで保険加入すればよく、親が出す必要はありません。もっとも、息子さんも最低限の医療共済などに新規加入すれば十分です。
毎月4万円の貯蓄ができれば、60歳になるまでの12年間で576万円、これに今ある貯蓄160万円を加えて、合計736万円貯めることができます。この間、車の買い換えで50万円の出費があったとしても、686万円は残すことができます。
アドバイス2:生活費をコストダウンできる2~3年後からが最後の貯めどき
ぷっちゃんママさんが、あまり無駄遣いされていないのは、データからも文面からもわかります。さらに2~3年後に息子さんが転勤で独立されたら、引っ越しして、住居費をコストダウンされるとのこと。理に適っていると思います。2~3年後に、おひとりになってからが、最後の貯めどき、と言えるでしょう。住居費が下がり、食費や光熱費も今より下げることができるでしょう。
毎月2万円を追加で貯蓄できれば、9年間で216万円、月3万円追加できれば、324万円を上乗せできます。60歳時点で約1000万円残すことができるのです。
1人の生活は、いろいろと不安があるかもしれませんが、60歳時点で1000万円残せ、生活費をキープしていければ、問題ないのではありませんか?
最初から息子さんの援助をあてにするのではなく、60歳までの貯蓄プランを立て、今からコツコツと貯蓄額を積み上げていってほしいと思います。
アドバイス3:公的年金の不足分をできるだけ抑えれば、90歳過ぎまで大丈夫
60歳以降も、職場が変わったとしても働き続けたいと決意されていることも、立派です。公的年金の受給開始65歳までは、収支がトントンになるような働き方ができればいいと思います。貯蓄はできなくても、60歳までに貯めた資産をできるだけ取り崩さないようにすれば、その後の生活も不安なく過ごすことができるでしょう。
年金の見込み額が月換算で5万円強とのことですが、国民年金でも満額受給で月7万円程度です。厚生年金の加入期間があれば、さらに多くなります。派遣社員でも厚生年金加入ではありませんか?
いただいたデータは現時点での見込み額だと思いますが、65歳から受け取れる公的年金額を再度確認しておくようにしてください。
仮に、公的年金が8万円、毎月の支出が11万円とすると、不足分は月3万円、年間36万円。貯蓄から取り崩していくことになりますが、ゼロになるのは27年後で、92歳のときです。
70歳以降の生活がどうなるかは、現時点ではなんともいえませんが、働けるうちは働く。息子の自立を応援する。本当に介護が必要になったときに、息子さんにサポートをお願いする。そういうことでいいのではないでしょうか。
老後に必要なお金は、人それぞれです。1億円あっても足りないと言う人もいれば、500万円あればなんとかなる、と考える人もいます。ぷっちゃんママさんが派手な生活を望んでいないのであれば、老後はそれほど心配する必要はないと思いますよ。
相談者「ぷっちゃんママ」さんから寄せられた感想
自分の家計管理が果たして正解なのか? 誰にも聞くことなどなかったため、深野先生のアドバイスが『大丈夫だよ! 正解だよ!』と言われているように思えて安心しました。息子が家に入れてくれるお金は全て息子用の貯蓄にします。そして、息子が独立した後はおひとり様を満喫しようと、今から楽しみな気持ちでいっぱいでいます。このたびは、深野先生、マネープランクリニックスタッフの皆様、ありがとうございました。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文:伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)
10/27 22:20
All About(人気記事)