54歳シングルマザー、貯金390万円。あと1年半で養育費が終了し、これからの生活資金で悩んでいます
今から生活資金をどう確保したらよいものか悩んでいます
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、あと1年半ほどで子どもの養育費が終了するという54歳の派遣社員の方です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
相談者
おかぴさん女性/派遣社員/54歳
関西/借家
家族構成
子ども(19歳・専門学校1年)相談内容
54歳シングルマザーです。あと1年半ほどで養育費の受け取りが終了となり、今から生活資金をどう確保したらよいものか思案中です。現在は毎月20万円を養育費として受け取り、私は時短派遣社員として勤務。現在の職場であと3年間勤務可能。年齢的なものもあり、3年後はフルタイムで他のパート職に就く程度が精いっぱいかと思っています。
子どもには国の奨学支援金として年間約50万円が支給されますが、全額貯金するため、実際は学費として毎月約5万円の支出計上としました。
住宅に関しては、家賃をとにかく抑えたいので、公営住宅への応募を欠かさず行っていますが、いまだ当選せず。かつての実家は姉夫婦の名義となっており、親族が住んでいて、私が入居できる見込みはありません。
雑費には服飾や日用品の購入も含んでいます。わずかな投資がありますが、冒険もできないので、減らなければよい、というレベルでの預け入れ同様の運用です。今のままですと、2年後には経済的破綻が明確と思っています。アドバイスをよろしくお願いいたします。
家計収支データ
おかぴさんの家計収支データは図表のとおりです。家計収支データ補足
(1)貯蓄について相談者コメント「子の専門学校の教材道具費として19万円、洗濯機の買い換えに8万円、計27万円の支出が発生。現時点での残高は200万円です」
(2)家計収支について
通信費の内訳は、スマホ2台分で4000円、光回線で7000円。雑費の内訳は、日用品雑貨1万円、新聞4000円、理容・美容5000円、医療費7000円、服飾費8000円(私服通学になったこともあり、主に服飾に使う状況下)。
(3)収入、働き方について
相談者コメント「自身が、持病などで困難な部分があり、就業時間を優先して選んだ結果、1日4時間の派遣にヒットしました。派遣勤務は初めてです。大変神経を使うため、時間は短くとも疲労がひどく、家事と両立させるためにも現時点ではフルタイムにする意向はありません。問題がなければ更新をしながら、4年後まで勤務可能となります」
(4)加入保険について
[本人]
・生命保険(終身保険70歳払込完了、死亡保障200万円)=毎月の保険料2000円
・共済(死亡保障1000万円、入院日額5000円)=毎月の保険料2000円
・共済医療特約(入院一時金2万円・手術給付金など)=毎月の保険料1000円
[子ども]
・共済(死亡保障500万円、入院日額2500円)=毎月の保険料1000円
・医療保険(20歳年度末まで、日額5000円)=毎月の保険料700円
(5)お子さんについて
専門学校卒業後も、しばらくは同居の予定
(6)公的年金について
最新のねんきん定期便で、見込み額は104万4700円。離婚時の年金の分割に伴う「換算給料特例」3415万円
FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1:2年間は現状維持。子どもの卒業と同時に生活の見直しをアドバイス2:60歳まで、どのように生活を維持していくのかは収入次第
アドバイス3:年金の範囲内で収め、手元資金は可能な限り、残しておく
アドバイス1:2年間は現状維持。子どもの卒業と同時に生活の見直しを
現状の家計においても、家賃負担が重く貯蓄が増えない要因となっています。おそらく現在は養育費があり、公営住宅への入居の優先度が低いのではと思われます。本来なら、今すぐにでも家賃の安い郊外などへの引っ越しを考えていただきたいところですが、おかぴさんの勤務先、お子さんの通学を考えると、それも難しいのかもしれません。
ひとまず、専門学校を卒業するまでの2年間は現状維持することです。毎月3万円の貯蓄は必ず継続してください。2年間で72万円。今ある金融資産と合わせて462万円。これをできる限りキープしておくことが重要になってきます。
1年半後、お子さんが専門学校を卒業。養育費がなくなり、収入は10万円に。当然赤字になってしまいます。
そこで、生活費の削減はしなければなりません。また、体調を考慮すれば無理はできないのは承知の上で、酷なことを述べますが、収入が10万円より増える手立ても考えなければならないでしょう。
ここで公営住宅に入居できることが一番ですが、入居できない場合は、引っ越しもやむなしです。少し郊外であれば、5万~6万円の賃貸があるはずです。住居費の削減は必須です。さらに教育費がなくなり、水道光熱費、通信費を削減。これで毎月の支出を18万円程度に抑えることができます。
アドバイス2:60歳まで、どのように生活を維持していくのかは収入次第
しかし、収入が10万円のままであれば、不足分は貯蓄からの取り崩しになってしまいます。仮に毎月8万円の不足だとすると、年間で96万円。5年弱で貯蓄は底をついてしまいます。おかぴさんが60歳になるまで、持たないかもしれません。お子さんが卒業後、しばらくは同居とのことですから、生活費の一部を負担してもらうことも検討してみてください。
引っ越しして勤務先を変えたり、働き方を変えたりして、収入があと1万円でも2万円でも増えれば、お子さんの負担も少なくてすみます。60歳まで何とか乗り切ることが、現段階での大切なポイントとなります。
非常に心苦しいのですが、60歳になったら、老齢基礎年金の繰り上げ受給をしてください。1カ月につき0.4%の減額で、60歳で繰り上げ受給にすると65歳までの5年間で24%の減額になってしまい、その額は生涯変わりません。
しかしながら、そうするしか今のところ65歳までの生活のめどが立たないのです。公的年金の繰り上げ受給額で不足する分は、無理のない範囲でパート・アルバイト収入を得てください。
アドバイス3:年金の範囲内で収め、手元資金は可能な限り、残しておく
65歳からは離婚に伴う年金分割での年金受給が始まります。具体的な年額がわかりませんが、ご自身の老齢基礎年金と、年金分割分で生活費はまかなうようにしてください。支出をもう一段削減する必要がありますが、年金の範囲で生活するほかありません。具体的な年金受給額は、一度、年金事務所で確認してください。
65歳時点で、実際にどの程度、手元資金が残っているかは、今後の住居費など生活コストをどのくらい下げられるか、おかぴさんの収入が現状維持なのか、少しでも増やせる可能性があるのか、また、お子さんと同居の間は生活費を分け合うことができるのか、ということにかかっています。
この先2年の猶予期間に、お子さんとも話をしてみてほしいと思います。
最後に、マネープランの範疇からは外れますが、ご実家の相続については、気になります。
実家がお姉さま名義になった経緯はわかりませんが、おかぴさんが相続放棄をしていない限り、相続人としての遺留分があります。お姉さまが実家の不動産を相続したのであれば、それに見合った金銭を受け取る正当な権利があります。
自治体で行われる無料法律相談などで、一度、弁護士にご相談なさってはいかがでしょうか。
無理は禁物で、体をいたわることは大事です。アドバイスでは65歳まで働くことを前提としましたが、無理なようであれば、自治体の社会福祉協議会や区の福祉課へ躊躇することなく相談してください。
公営の住宅への入居の後押しになるかもしれませんし、補助金・助成金の活用、社会保障料の免除など、生活に必要なアドバイスを必ず受けるようにしてください。
相談者「おかぴ」さんから寄せられた感想
このたびは貴重なアドバイスをありがとうございました。深野先生の著書や新聞コラムも拝読しており、その先生にご指摘いただけたことで、より現実的に将来を考えるターニングポイントとなりました。家賃減が何よりですが、郊外への転居はやはりできません。公営住宅の応募は続けつつ、今後1年半の間に、さらに収入アップとなる職について、派遣先と相談しながら職探しをすることにいたします。家賃以外の家計費のやりくりが指摘されなかったのが意外で、その部分は安心いたしました。
近い将来のために気持ちを引き締め、子どもとも話し合いながら、今あるものを減らさずに生活していく所存です。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。
取材・文/伊藤加奈子
(文:あるじゃん 編集部)
11/09 22:20
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