交通崩壊する郊外! 「自動車依存」の代償とその解決策を考える
進化する交通手段
交通機関の発達は人々の生活を大きく変えてきた。昔は徒歩や馬、船などの動物を使った交通手段が主流だったが、鉄道や自動車の登場により、交通機関は大きく変わった。
このような変化は、人々の暮らしをより便利にしてきた。今後はドローンや自動運転車の登場がさらなる変化をもたらすと考えられている。
しかし、人手不足の影響で、かつての便利さを享受できなくなる可能性も出てきている。人手不足時代の公共交通はどのようになるのか、今回はそのことについて考えてみたい。
郊外拡大と住宅不足
交通機関の発達は、人々の暮らしを大きく変えた。特に、自動車の影響は非常に大きい。以前は、海上では船舶が活躍していたものの、陸上では徒歩や馬、牛などの動物を使って移動するしかなかった。そのため、人々の移動距離は限られ、運ぶことのできる荷物も機械を使う場合に比べて少なかった。
しかし、蒸気機関や内燃機関の発明によって状況は一変する。鉄道が発展し、各地を結ぶことで陸上交通が大幅に改善された。さらに、自動車の登場が大きな変化をもたらした。鉄道は大量輸送に適しているが、個人が所有することは難しい。
一方、自動車は個人所有が可能であり、都市から離れた場所に生活圏を持つことができるようになった。2023年の時点で、日本の自動車保有台数は国土交通省のまとめによると約8270万台に達している。
鉄道や自動車の発展により、都市は郊外へと膨張を続けた。日本では、高度経済成長期を迎え、地方から都市部に人口が流入していった。既存の都市部では住宅が不足し、郊外にニュータウンが建設されることになった。中心部から郊外まで鉄道が結び、鉄道駅からさらに奥までバスが運行することで、日本の都市は拡大を続けていった。
都市が膨張する一方で、生産拠点も各地に分散していった。高度経済成長による経済発展は、公害という副作用を引き起こした。公害対策のために、工場はさまざまな場所に分散していく。インフラ整備や経済対策の一環として高速道路が整備され、貨物は鉄道ではなくトラックによって運ばれるようになった。国鉄の労使問題なども影響したが、トラックは目的地に直接運ぶことができるため、鉄道よりも便利な輸送手段となったのである。
高齢化社会の交通事情
都市の膨張は永遠に続くわけではなかった。日本は徐々に少子化と人口減少の社会に突入している。郊外のニュータウンのなかには山を切り開いて作られた場所もあり、そこで自動車は重要な役割を果たしている。しかし、加齢による認知能力の低下は、自動車での移動さえも難しくすることがある。そこで、高齢者の移動手段としてバスが利用されるようになった。
とはいえ、自宅から目的地まで自由に移動できる自動車に対して、バスはいったん停留所に行かなければならない。そのため、自動車を所有している人はバスよりも自動車を使うことが多く、高齢者ばかりがバスを利用する状況が生まれている。
最近では、バスドライバーやトラックドライバーの人手不足が問題になっており、各地のバス路線が本数を減らしたり、廃止されたりするケースも増えている。トラックドライバーの不足は運送業界にも影響を及ぼし、業界は対応を迫られている。
自動運転技術の未来
こうした状況のなかで、鉄道や船舶への輸送シフトを進めようという動きがある。しかし、実際にはうまくいっていない。自動車は出発地と目的地を直接結ぶ便利さがあり、鉄道や船舶は大量の物資を運べるものの、最終的には自動車に頼らざるを得ない。トラックの役割を全て代替することは難しいだろう。
そのなかで期待されているのが自動運転技術だ。日本は自動運転技術の開発が遅れているといわれているが、人手不足がバスやトラック輸送に影響を与えるようになり、自動運転が注目を集めるようになった。今後、自動運転技術は進歩することが予想されているが、技術が確立するまでには相当な時間がかかるため、すぐに実現するのは難しい。
人手不足は当面続くと考えられる。日本は少子化の時代に突入しており、人口を急激に増やすことは難しい。人手不足を補うために海外からの移民を受け入れる方法もあるが、外国人を新たに受け入れるためには研修やマニュアルが必要で、コストもかかる。大企業なら対応できるかもしれないが、採算ぎりぎりの企業にとっては困難だろう。
結局のところ、当面は人手不足のなかで公共交通について考えていかなければならない。バス路線の廃止が進むと、その地域では住宅価値が低下する可能性がある。郊外に住む人口が駅近など交通機関の便利さを求めて集まるかもしれない。かつて郊外に広がったのとは逆に、都市部に集約される可能性もある。公共交通と都市計画は密接に結びついているため、これらを考慮しながら公共交通の問題に取り組む必要がある。
11/01 14:30
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